事業復活支援金の収益計上時期の取扱いについて

新型コロナウイルス感染症の影響で売上高が一定割合減少する中小法人・個人事業者向けに、中小企業庁が申請を受け付けている「事業復活支援金」の期限は、2022年5月31日までとなっています。
最大250万円が支給される「事業復活支援金」ですが、その収益計上時期は、支給決定日の属する事業年度となっています。

 


収益計上時期の基本的な考え方

原則として、国や地方公共団体から交付される補助金や助成金等はその交付が決定された日に、収入すべき権利が確定すると考えられますので、その補助金や助成金等の交付決定がされた日の属する事業年度の収益として計上することとなります。
ただし、その補助金や助成金等に経費補填の性質がある場合、取り扱いが異なってきます。

経費補填の性質について
あらかじめ所定の手続きを経て経費が支出される場合(例:雇用調整助成金など)は、その経費が発生した事業年度中に助成金等の交付決定がされていないとしても、その経費と助成金等の収益が対応するように、その助成金等の収益計上時期はその経費が発生した日の属する事業年度として取り扱うこととしています。

「事業復活支援金」の利益計上時期は、経費補填の性質がないため、原則通り、支給決定日の属する事業年度となっています。

 


支給決定日について

事業復活支援金では、交付の際に送付される給付通知書に“支給決定日”の記載がないため、“支給決定日”は、状況に合わせて合理的に判断していくことになります。
 

■入金前に給付通知書が届いた場合
入金前に給付通知書が申請事業者に到着した場合、少なくとも到着日前までに事務局による支給決定は行われたと考えられることから、通知書の到着日を支給決定日として扱うことになるようです。
 

■入金後に給付通知書が届いた場合
給付通知書の到着より先に入金があった場合、少なくとも入金日前までには支給決定が行われたと考えられることから、入金日を支給決定日として扱ってよいとのことです。
 

なお、事業復活支援金は、個人事業者も申請できます。
所得区分は事業所得等とされ、収入計上時期は法人税と同様に“支給決定日”の属する年となっています。

電子取引の交付側の保存義務について

令和4年1月1日から改正電子帳簿保存法がスタートしましたが、メール等の電子取引に係る取引情報の電子データは、令和4年度改正の宥恕措置により、令和5年12月31日までの2年間は、申請せずに書面での保存も認められます。
令和6年1月1日からは書面保存が認められないため、事業者はそれまでに電子取引の電子データ保存の対応を準備しておく必要があります。
また、受領側だけでなく、交付側にもその保存義務が課されます。
たとえ押印した請求書等の紙を自社の控え用として保存していても、それをPDF等データに変換して、取引先に送信している場合には、そのPDF等データを保存する必要があります。

 


電子取引における取引情報とは

電子取引とは、「取引情報の授受を電磁的方式により行う取引」とされており、「取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書…その他これらに準ずる書類に通常記載される事項」とされています。
よって、受領した書類だけでなく、交付する書類に記載される事項も取引情報に含まれますので、電子取引で取引情報に係る電子データを受け取る側(受領した電子データ)だけでなく、交付する側(交付した電子データ)にも保存の義務が課せられています。

 


取引情報に係る電子データとは

保存対象となる取引情報に係る電子データとは、簡単にいうと、「紙でやりとりしていた際に保存が必要な情報が含まれる電子データ」とされています。
具体的には、請求書、領収書、契約書などの電子データが該当します。
また、メール本文に請求書等の記載事項が記されている場合は、メール自体が保存対象となります。
 

ExcelやWordなどのソフトで作成した請求書、領収書、契約書等を印刷し押印した後に、PDF等にして取引先にメール送信することもあるかと思います。
この場合、メール等で取引情報をデータ送信しているため、「電子取引」に該当し、PDF等の保存が必要となりますが、PDF化前の印刷した紙については、保存義務はありません。

コロナ禍により一時帰国した海外赴任者の給与の取扱いについて

新型コロナウイルスの世界的な蔓延の影響で、日本に一時帰国している海外子会社社員の非居住者が、赴任地国へ戻れず、日本滞在日数が183日、さらには1年を超えてしまう事態もあるのではないでしょうか。

日本滞在日数が183日を超え「短期滞在者免税」の対象外になると、給与のうち日本勤務分が日本での課税対象になります。
また、日本滞在日数が1年を超えると「非居住者」から「日本の居住者」となり、国内源泉所得だけでなく国外源泉所得についても課税対象となり、確定申告義務が生じます。

 


居住者・非居住者とは

居住者

・日本国内に住所があるか又は現在まで引き続いて1年以上居所がある個人
・国内源泉所得だけでなく国外源泉所得についても課税対象
・税率は累進税率

 

非居住者
・居住者以外の個人
・国内源泉所得のみが課税対象
・税率は20.42%

■国税庁:非居住者等に対する源泉徴収のしくみ

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2885.htm

 

非居住者である個人の方であっても、日本国内において行う勤務で得た給与については、原則として日本で課税対象とされます。

ただし、日本との間で租税条約を締結している国の居住者が、日本で短期間の勤務を行なう場合は、一定の要件を満たすことにより、原則的に日本での課税が免除されます。

これを一般に短期滞在者免税といいます。

 


短期滞在者免税とは

例えば、アメリカ法人に勤務する個人(米国税法上の居住者)が来日して業務を行う場合に、以下の3要件を満たせば、日米租税条約上の短期滞在者免税の適用が可能です。

 

1.いずれの12カ月の期間においても日本国内に滞在する期間が合計183日を超えないこと

2.給与が日本の居住者でない雇用者等から支払われる

3.給与がアメリカ法人の日本支店等の恒久的施設によって負担されていない

 

つまり、日本の滞在期間が183日以内で、給与がアメリカ法人から直接支払われ、さらにその給与がアメリカ法人の日本支店等(支店等がある場合)に負担されないのであれば、短期滞在者免税が適用されます。

 

今までは、出張等で来日する機会が多い非居住者であっても、この183日ルールがあることにより日本勤務分について日本で課税されるケースは多くありませんでした。

 

間もなく確定申告期の時期となりますが、一時帰国者については居住者・非居住者の判定、短期滞在者免税の判定と様々な点で注意が必要です。

NISAとロールオーバーについて

2017年に一般NISA口座で購入した株式・投資信託等について、2021年12月末に5年間の非課税期間が満了となります。

NISA(少額投資非課税制度)では、最大5年間の非課税期間が定められており、この期間の売却益、配当金等が非課税となります。
NISA口座で保有されている商品が5年を超えるとき、6年目である翌年のNISA非課税投資枠を使用して商品を移し換えること(ロールオーバー)でNISA口座での非課税期間を延長するか、特定口座などの課税口座に払い出すかを選択することになります。

 


ロールオーバーとは

翌年の一般NISA非課税投資枠に移すことを「ロールオーバー」といいます。

  • 更に5年間、非課税で運用することができます
  • 翌年のNISA非課税投資枠(上限120万円)のうち、ロールオーバーで利用しなかった分だけ、新規で買付をすることができます
  • 非課税期間満了時(年末)の時価合計が120万円を超える場合も、すべてロールオーバーできますが、この場合、非課税投資枠を全て利用したことになるので、一般NISA口座での新規買付はできません

 


ロールオーバーの注意点

  • 一般NISA口座からつみたてNISA口座へのロールオーバーはできません
  • 一般NISA口座とは異なる証券会社等の一般NISA口座へのロールオーバーはできません。ロールオーバーは、買付時と同じ金融機関でのみ行うことができます。

  • ロールオーバー手続きをしない場合は、一般NISA口座での保有商品が課税口座(特定口座または一般口座)に移管され、払出後の売却益や配当金・分配金等は課税対象となります。
  • 課税口座への移管の際、課税口座における取得価額は、非課税期間満了時となる大納会の終値となります。NISA口座で買付した際の取得価額ではないので注意が必要です。
  • ロールオーバーをするには、一般NISA口座を開設している証券会社等に「非課税口座内上場株式等移管依頼書」を提出する必要があります。
    具体的な提出期限は各証券会社等により異なるため、口座を開設している証券会社等に確認しましょう。

使用人兼務役員の昇進と退職金

使用人から役員に昇格するときには、役員専任になる場合と、取締役営業部長というように使用人兼務役員というステップを踏んでから役員選任になる場合があり、それぞれの退職金の支給と損金算入の条件が異なります。

使用人が常務取締役等の役員専任になる場合、支払われる使用人部分の退職給与は、退職給与規程に基づくものであれば、原則、損金算入できます。

一方、使用人が使用人兼務役員に昇進後、さらに役員専任となり、使用人としての職務を有しなくなった場合、使用人部分に対する退職給与は一定の要件を満たさないと損金算入できないとされています。

 


使用人兼務役員とは

使用人兼務役員とは、法人の役員でありながら、部長や課長など、「法人の使用人としての身分」を持ち、常時使用人としての職務に従事している人のことです。
例えば営業部長や工場長が取締役になったが、実際の勤務は以前と変わらず、役職、勤務実態ともに使用人としての色合いが強いような場合は、使用人兼務役員となります。

 

なお、以下のような場合は対象外となります。

「取締役営業担当」や「取締役経理担当」

「〇〇担当」は役員の中での役割分担であり、職制上の役職ではないとされています。

非常勤の場合

使用人兼務役員は常時使用人としての職務に従事していなければならないため、使用人兼務役員に該当しません。

 


損金算入できる要件

①支給対象者が、過去に使用人から使用人兼務役員に昇進した者であること

②使用人兼務役員昇進時に使用人であった期間の退職金の支給をしていないこと

③支給額が、使用人の退職給与規程に基づき、使用人期間と使用人兼務役員期間を通算して、使用人の職務に対する退職給与として計算されていること

 

使用人であった期間に対する退職給与の支給時期は

・使用人兼務役員から役員専任になるときに支給
・退職時に役員部分とあわせて支給

が考えられます。
いずれの支給時期でも要件②を満たすものとして取り扱うことが可能です。

 

【例】
2010年6月に使用人として入社した者が、2020年6月に使用人兼務役員へ昇進後、2022年6月に取締役副社長に就任し、2023年6月に法人を退職(副社長を退任)した場合

 

 

入社時から使用人兼務役員として勤務した期間の12年間(2010年6月~2022年5月末)に対応する使用人部分の退職金を、取締役副社長就任時(2022年6月)又は退職時(2023年6月)に支給することで要件②を満たしています。