定額減税と子供の出生

令和6年6月からの、給与所得者における定額減税は、従業員本人と、その配偶者を含めた扶養家族1人につき3万円が減税されます。
扶養家族には、令和6年12月31日までに生まれた子供も含まれますが、扶養控除等異動申告書の提出時期によって対応が異なります。

 


定額減税とは

定額減税とは、令和6年6月1日以降に支給する給与・賞与に対して実施される住民税や所得税の減税です。
納税者本人と扶養家族を対象に、所得税3万円・住民税1万円が減税されます。
急激な物価上昇による家計負担軽減が狙いです。


令和6年分所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下の納税者本人と、同一生計配偶者または扶養親族が対象とり、減税額は1人につき下記の通りです。

・所得税減税:3万円
・住民税減税:1万円


所得税については、令和6年6月の給与等支給時の月次減税事務の際に控除されます。
減税しきれない場合には、減税しきれないと見込まれる差額について調整給付されます。


■国税庁 定額減税特設サイト
https://www.nta.go.jp/users/gensen/teigakugenzei/index.htm

■内閣官房 調整給付額の計算方法
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/benefit2023/FAQ/calculation.pdf

 


子供の出生と定額減税の月次減税事務の関係

定額減税の対象となる扶養家族とは、2024年12月31日の時点で、納税者と生計を一にしている合計所得金額が48万円以下の居住者で、年齢制限はありません。
月次減税事務の開始前までに、従業員から提出された扶養控除等(異動)申告書にて扶養家族を確認します。


よって、年の途中で子供が生まれた場合、給与支給日の前日までに扶養控除等(異動)申告書を提出する必要があります。


例えば、2024年6月30日の給与支給日から月次減税事務が始まる場合、扶養控除等(異動)申告書の提出タイミングによる処理の違いは下記の通りになります。
 

子供の出生日 申告書の提出日 処理
6月1日 6月15日 月次減税で処理
7月20日 7月30日 年末調整または確定申告で精算

 

6月1日に子供が生まれ、扶養控除等(異動)申告書が6月15日に提出された場合、6月30日の月次減税事務が始まる前なので、減税額が増額されます。


一方で、7月20日に子供が生まれた場合、6月30日に月次減税事務が始まった後なので、月次減税額の増額は行われません。
その代わり、その差額は年末調整または確定申告により精算されます。


■国税庁 令和6年分所得税の定額減税Q&A
6-12 扶養親族の人数が変更になった場合
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0024001-021.pdf

電子データ保存の検索機能の不要措置と書面整理

2024年1月1日より、電子取引を行った場合の請求書等の電子データについては、原則、取引年月日等の項目によりデータを検索できる検索要件等を満たす形で保存する必要があります。
ただし、令和5年度税制改正により、検索要件について大幅な緩和が行われ、一定の条件を満たす場合には検索要件を満たさなくとも、電子保存ができるようになりました。

 


電子データ保存の検索機能の要件とは

原則、保存した帳簿や書類の電子データは、必要なときにいつでも確認できるようにするため、以下の検索機能が必要とされています。


①取引年月日、取引金額、取引先で検索できる
②日付または金額の範囲指定で検索できる
③2つ以上の任意の検索項目を組み合わせて検索できる


なお、②③については、税務調査等でデータのダウンロードに応じることができるようにしている場合には不要となります。


また、検索機能の簡易的な方法として、

・表計算ソフト等で索引簿を作成し、表計算ソフト等の機能で検索する
・規則的なファイル名(日付・金額・取引先)を付け、特定のフォルダに保存し、フォルダの検索機能を活用する

等があります。
専用のソフトウエア等を購入しなくても、検索機能の確保が実現できます。


■国税庁
電子取引データの保存法をご確認ください
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0021011-068.pdf

 


検索機能の確保不要の対象者

令和5年度税制改正により、電子帳簿等保存制度の見直しが行われ、税務調査等で電子データのダウンロードに応じることを前提に、以下の対象者は検索機能が全て不要となりました。


・基準期間(2課税年度前)の売上高が5,000万円以下の保存義務者

・基準期間(2課税年度前)の売上高が5,000万円を超える場合でも、電子取引データをプリントアウトした書面を、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている保存義務者


■国税庁
電子帳簿保存法の内容が改正されました
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0023003-082.pdf

 


検索機能が不要でも、日頃から書面の整理を行うことをお勧めします

税務調査等で求められた際に、遅滞なく「ダウンロードの求め(調査担当者にデータのコピーを提供すること)」に応じることができるようにするには、下記のような整理方法が考えられます。
 

①課税期間ごとに、取引年月日その他の日付の順にまとめて、取引先ごとに整理する
②課税期間ごとに、取引先ごとにまとめて、取引年月日その他の日付の順に整理する
③書類の種類ごとに、①又は②と同様の方法で整理する

 

どの整理方法も規則性が必要な作業となりますので、日頃から整理しておくのが良いでしょう。


■国税庁
電子帳簿保存法一問一答 問46
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/00023006-044_03-5.pdf

電子申告義務と無申告加算税

平成30年度税制改正により、資本金1億円超の法人等は、法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税及び消費税等の確定申告書等の電子申告が義務化されています。
経済社会のICT化等が進展する中、税務手続きにおいても情報通信を活用することで、コスト削減と企業の生産性向上の実現が期待されています。
電子申告は、確定申告書、中間(予定)申告書、仮決算の中間申告書、修正申告書及び還付申告書の提出が対象となり、申告書に添付する書類などもe-Tax(地方税はeLTAX)で提出する必要があります。

 


電子申告の対象法人

法人税及び地方法人税の場合

内国法人のうち

・事業年度開始の時において、資本金または出資金の額が1億円を超える法人
・通算法人
・相互会社
・投資法人
・特定目的会社
 

消費税及び地方消費税の場合
・法人税及び地方法人税で義務化されている法人
・国・地方公共団体


■e-Taxホームページ
電子申告の義務化の対象法人を教えてください。
https://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/gimuka/02.htm

電子申告の義務化の対象法人一覧表(概要)
https://www.e-tax.nta.go.jp/hojin/gimuka/taisho_ichiran.pdf

 


電子申告が困難な場合

対象法人は、原則としてe-Taxで電子申告を行わなければなりませんが、自然災害、停電等により、企業内のインターネット環境に障害が発生した等の理由で、法定申告期限までに電子申告が困難な場合には、所轄税務署長の承認を得た上で、書面により提出することで、例外的に電子申告義務が履行されたものとみなされます。
※申告方法の誤りなど人為的ミスは例外事由に当てはまりませんので注意が必要です。


承認を得るためには、事前に「e-Taxによる申告が困難である場合の特例の申請書(取りやめの届出書)」及びe-Taxを使用することが困難であることを明らかにする書類を所轄税務署長に提出する必要があります。


■e-Taxホームページ
電子申告の義務化の対象法人ですが、インターネット回線の故障でe-Taxによる提出を行うことができません。どうすればよいですか。
https://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/gimuka/19.htm

 


申告が無効となった場合の無申告加算税

対象法人が期限内に申告書を提出しなかった場合、無申告加算税が課されることになります。
無申告加算税とは、期限内に申告書を提出しなかった場合に罰則的に課される税金で、原則として、納付すべき税額に対して、50万円までの部分は15%、50万円を超える部分は20%(R6.1.1以後に申告期限到来分で300万円超の部分は30%)の割合を乗じて計算した金額となります。


申告が無効となった場合、無申告加算税が課されるか否かは、書面による申告書の提出日ではなく、e-Taxによる申告書の再提出日が申告期限内か期限後かにより判定されます。

特定支出控除とジョブ・カードの活用

給与所得者が、自らのキャリアアップのために行う学び直し(リスキリング)が注目されています。
この学び直しのための資格取得費や研修参加費などの一定の費用について、特定支出控除を受けることができます。

 


特定支出控除とは

給与所得者には、原則として必要経費が認められていませんが、業務上必要な資格取得費などの費用が多い場合、特定支出として控除できる制度です。
特定支出の合計額が、給与所得控除額の1/2相当額を超える場合、給与所得の計算上、超える部分の金額を給与所得控除後の金額から控除できます。

 


特定支出となる費用

①通勤費
電車やバス、マイカーなど通勤のために通常必要な費用
※会社が通勤費を支給している場合は特定費用にはなりません。

 

②職務上の旅費
出張など、勤務地を離れて業務を行う為に通常必要な費用
 

③転居費
転勤に伴う転居のために通常必要な費用
 

④研修費
仕事に直接必要な技術や知識習得の目的で受ける研修費用
 

⑤資格取得費
仕事に直接必要な資格取得のための費用
 

⑥帰宅旅費
単身赴任などで、勤務地や居所から自宅に帰宅するための旅費
 

⑦勤務必要経費
図書費:仕事に関連する書籍、定期刊行物等の購入費用
衣服費:勤務場所で着用する制服、事務服、作業服等の購入費用
交際費:得意先や仕入先などの取引先に対する接待、贈答費用
 

■国税庁
No.1415 給与所得者の特定支出控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1415.htm

 


研修費・資格取得費は、キャリアコンサルタントによる証明が可能に

今までは、特定支出が業務に必要なものであるという証明を行うのは給与支払者でした。
令和5年度改正により、令和5年分の所得税から、研修費・資格取得費については、給与支払者だけでなく、キャリアコンサルタントが証明できることになりました。
キャリアコンサルタントに発行してもらう「特定支出に関する証明書」を、確定申告書に添付することで特定支出控除が受けられます。
「特定支出に関する証明書」をキャリアコンサルタントに発行してもらうには給与所得者が事前にジョブ・カードを作成しておく必要があります。

 


ジョブ・カードとは

ジョブ・カードとは「生涯を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力証明」の機能を担う、厚生労働省が様式を定めたツールです。
給与所得者のキャリア・プランニングや、免許・資格・職務経験・知識や技能などを記入して作成します。


ジョブ・カードとして定められている3つの様式のうち、特定支出に関する証明書で必要なのは以下の2点となります。
①キャリア・プランシート(様式1-1又は様式1-2)
②職務経歴シート
 

特定支出に関する証明書の発行をキャリアコンサルタントに依頼する際は、上記のジョブ・カードと、現在の職務や、受講講座の職務との関連性の疎明について記載した「特定支出に関する証明依頼書」などを、コンサルタントに提出します。

 

詳しくは下記URLでご確認ください。
■厚生労働省
特定支出控除制度におけるキャリアコンサルタントによる証明制度について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/tokuteishishutsukojo.html

老人ホーム入居でも対象 空き家譲渡特例

ニュースでも取り上げられている、全国に増加する空き家問題。
老朽化した空き家の増加により、倒壊の危険や治安の悪化など、周辺地域に悪影響を及ぼすとして、社会問題となっています。
この問題を解決するために、空き家譲渡特例があります。

 


空き家譲渡特例とは

いわゆる空き家譲渡特例とは、被相続人が一人暮らしをしていた不動産(空き家や敷地)を譲渡価額1億円以下で売却した際の譲渡所得の金額から、最大3,000万円を控除できる特例です。
対象となるには、空き家を譲渡する際に、一定の耐震基準を満たす必要がある等、いくつかの要件があります。

 


空き家譲渡特例の対象となる譲渡資産の要件

①昭和56年5月31日以前に建築された建物である

倒壊の危険を解決するために、建物の耐震基準を満たすリフォームを行った後に譲渡するか、建物を壊して土地のみを譲渡しなければなりません。
 

②相続開始直前まで、被相続人が一人暮らしをしていた
被相続人に同居人がいなかった場合に限り対象となります。
 

③相続から譲渡までの間、ずっと空き家のままである
相続した後に、事業用に使用、または賃貸等の貸し付けに利用せず、譲渡するまでずっと空き家である必要があります。


その他の要件・詳細については下記URLでご確認ください。
■国税庁
No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm

 

 


老人ホーム入居等の特定事由について

被相続人が相続開始直前に家屋に住んでいなくても特例の対象となる場合があります。

・要介護認定等を受けて老人ホームや介護医療院、サービス付き高齢者向け住宅等に入所した場合
・障害者支援区分の認定を受けて障害者支援施設等に入所した場合

なお、老人ホームなどの施設への入所ではなく、介護のために親族の家に住んでいた場合は、対象とはなりません。

 

また、被相続人が老人ホームなどの施設に入居している間の空き家については以下のような要件を満たす必要があります。
・相続開始直前まで被相続人の家財の保管等に使用されていた
・事業・貸付に使用されていない
・被相続人以外の者の居住の用に供されていない

 

申請時には、被相続人が要介護認定等を受けていたことを証明する書類や、老人ホーム等入所時の契約書、空き家の電気・水道・ガスの契約名義(支払人)及び使用中止日が確認できる書類等が必要となります。