100億宣言が可能な売上高要件

中小企業庁の100億企業成長ポータルでは、「100億宣言」の宣言を行った企業等が公表されています。
6月9日時点で1,500件を超える申請があり、このうち事務局の確認が完了した各社の宣言が順次掲載されています。今後も随時公表される予定です。


100億企業成長ポータルでは、「100億宣言」を行った企業の宣言内容を紹介するほか、「中小企業成長加速化補助金」「経営者ネットワーク」など、100億企業への飛躍的成長をサポートする施策情報や事例が掲載されています。


・100億企業成長ポータル
https://growth-100-oku.smrj.go.jp/


 


100億宣言とは

「100億宣言」とは、中小企業庁と独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)が共同で推進する、「売上高100億円」を目指す中小企業に向けた成長支援プロジェクトです。
経営者にとって「売上高100億円」という野心的な目標を掲げ、実現に向けた取組を行っていくことを宣言するものです。

令和7年度改正で創設された中小企業経営強化税制の経営規模拡大設備等(E類型)の適用を受ける場合や、中小企業成長加速化補助金の申請を行う場合に、宣言を行うことが必要になります。


■宣言に盛り込む内容

①企業概要
企業名や業種、本社所在地、事業内容、従業員数など企業の基本情報を記載


②企業理念・経営者の意気込み(100億宣言に向けた経営者メッセージ)
企業理念・ミッションや、100億円への成長を通じて実現したい内容を記載


③売上高100億円実現の目標と課題
100億円を実現する達成年度や成長率を示す実現目標と、実現に向けた課題を記載


④売上高100億円に向けた具体的措置(取組)
具体的な成長手段や事業の成長性・先進性と、実施するための社内外の協力体制を記載


■宣言できる企業

売上高10億円~100億円未満の中小企業
※中小企業とは、原則として、中小企業基本法に基づく中小企業者又は法人税法に基づく中小法人
 

・「100億宣言」とは
https://growth-100-oku.smrj.go.jp/documents/about.pdf


 


100億宣言のメリット

宣言を行うことで、以下のような支援を受けられます。


・成長加速化補助金の活用
・経営者ネットワークへの参加
・宣言の公式ロゴマーク活用による自社PR


宣言に盛り込まれた実現のための課題や具体的措置などの経営戦略が明確になることで、組織や経営の成長を促すと共に、企業ブランディングの強化にもなり、人材確保や信頼構築にも繋がります。


 


既に売上高100億円を達成している中小企業は対象外となるのか?

2期前や3期前の売上高が10億円未満又は100億円以上であっても、直近の事業年度(前期)の売上高が10億円以上100億円未満であれば原則として申請可能です。
※直近3期分の決算書類を事務局に提出する必要があります。


■例
令和5年3月期:売上120億円
令和6年3月期:売上110億円
令和7年3月期:売上90億円 → 前期が10億円以上100億円未満なので申請OK


なお、直近3期分のうち、前期のみの売上高が10億円未満又は100億円以上の場合等は、申請前に電話にて相談してほしいとのことです。
専用ダイヤル:0570-00-0835


・100億宣⾔ よくあるご質問
https://growth-100-oku.smrj.go.jp/documents/faq_growth100oku.pdf

地方税のダイレクト納付に二段階認証導入

国税・地方税の納付に、口座振替で便利なダイレクト納付を利用する人も多いのではないでしょうか。
2025年3月24日の、eLTAX対応ソフトウェアのPCdeskのシステム更新に伴い、地方税のダイレクト納付の利用手続等に一部変更が行われました。

 


国税・地方税の納付に便利なダイレクト納付とは

ダイレクト納付とは、事前に税務署や地方自治体に口座振替の登録を行うことで、インターネットを通じて納税者が指定した口座から直接税金を引き落とす仕組みで、国税と地方税のどちらにも対応しています。


【国税】
所得税
法人税
消費税
源泉所得税
相続税 など
 

【地方税】
法人道府県民税・法人事業税・特別法人事業税
法人市町村民税
住民税(特別徴収)
事業所税


■ダイレクト納付のメリットとデメリット


【メリット】
・納付手続きが簡単
  銀行やコンビニに行く必要がなく、オンラインで完結
  申告データをもとに、そのまま納付できる
 

・納付漏れを防げる
  期日を指定して振替できるため、納付漏れのリスクを軽減
 

・手数料がかからない
  クレジットカード納付とは異なり、決済手数料が不要
 

・複数の税目を一括管理できる
  まとめて手続きを行えるため、税目の多い事業者や企業に便利

・金融機関の窓口営業時間に縛られない
  オンラインなので24時間いつでも手続き可能
 


【デメリット・注意点】
・事前に金融機関口座の登録が必要
・引き落とし日に口座残高が不足していると未納扱いになる
・e-Tax/eLTAXの利用環境が必要


事前にダイレクト納税の利用環境整備を行っておけば、納税手続きの手間を減らし、利便性を向上させる制度です。

 


2025年3月24日のシステム更新による変更点

2025年3月24日の地方税電子申告システム更新による変更点は以下となります。


■二段階認証の導入
セキュリティ強化のため、下記についてワンタイムパスワードを用いた二段階認証が導入されました。
・ダイレクト納付手続き
・利用者IDに紐づくメールアドレスの変更・追加時


■期日指定ダイレクト納付のキャンセル機能
ダイレクト納付で納付日を指定した後、他の方法で納付が確認された場合、指定日の前日までであれば、PCdesk上で納付予約をキャンセルできるようになりました。


これらの変更により、納税手続きの安全性と柔軟性が向上します。
詳細な操作方法については、eLTAXの公式ウェブサイトで公開されたマニュアルを参照してください。


■eLTAX マニュアルコーナー
https://www.eltax.lta.go.jp/support/manual/

 


ダイレクト納付の二段階認証対応に関する注意点

二段階認証の導入にあたっては、下記のような実務上の懸念点も挙げられており、注意が必要です。


二段階認証では、登録済みのメールアドレスにワンタイムパスワードが送信され、送信されたワンタイムパスワードを入力して手続き完了となります。
顧問の会計事務所等のメールアドレスのみが登録されているなど、ダイレクト納付の操作を行う納税者本人(企業の担当者等)のメールアドレスが登録されていない場合、ワンタイムパスワードが納税者本人に届かないため納付手続きを進めることができません。
必要に応じてメールアドレスの追加や変更の対応を行い、トラブルを防ぐ対策を講じておきましょう。

 


システム更新後の流れ

システム更新後の地方税のダイレクト納付の流れは下記のようになります、


(1)納付方法選択画面でダイレクト方式を選択
(2)「今すぐ納付を行う」又は「納付日を指定して納付を行う」を選択
(3)ワンタイムパスワードの通知先メールアドレスを選択
(4)選択したメールアドレス宛てに送信されるワンタイムパスワードを確認
(5)PCdeskに表示されるワンタイムパスワード入力画面に入力
(6)納付手続き完了


二段階認証の導入により、不正アクセス・なりすましによる不正納付リスクが低減され、より安全に納税が行えます。
早めにメールアドレスを確認・更新することをおすすめします。

フリーランス法と取引条件明示義務

2024年11月1日に施行されたフリーランス法により、発注事業者は、業務委託時に、フリーランスとの取引内容を明確にし、書面または電子的記録(メール・PDF等)で契約内容を交付する義務があります。
口約束や不明確な契約条件によるトラブルを防ぐことが目的です。

 


フリーランス法とは

フリーランス法は、フリーランスとして働く個人を保護し、適正な取引環境を整備するために制定された法律です。
フリーランスと発注業事業者との取引において、以下のような点を改善・保護することを目的としています。


適正な取引の確保

・曖昧な契約や不当な取引条件の是正
・書面または電磁的記録による契約内容の明確化


報酬の適正化

・報酬の支払遅延防止(原則60日以内の支払い義務)
・報酬減額・不当な値引きの禁止


ハラスメント防止

・フリーランスに対するパワハラ・セクハラの防止義務
・苦情処理体制の整備


 

【発注事業者とフリーランスの定義】
■発注事業者
 業務委託事業者・・・・従業員なしの個人事業者・一人社長
 特定業務委託事業者・・従業員又は役員がいる個人事業者・法人


■フリーランス

 特定受託事業者・・・・従業員なしの個人事業者・一人社長

 

 


フリーランス法における義務と禁止行為

フリーランス法では、フリーランスと発注事業者の取引を公正にし、フリーランスが働きやすい環境を整備するために、以下のような義務と禁止行為が定められています。


【義務】

■取引条件の明示義務
発注事業者は、フリーランスとの取引内容を明確にし、書面または電子的記録(メール・PDF等)で契約内容を交付しなければなりません。

■報酬の支払い義務(60日以内の支払い)
フリーランスに対する報酬は、業務の完了日から原則60日以内に支払わなければなりません。

■ハラスメント防止義務
発注事業者は、フリーランスに対するハラスメントを防止する措置を講じる必要があり、相談窓口の設置などの具体策が求められます。


【禁止行為】

■報酬の減額
不当に報酬を減額することは禁止されています。

■不当な取引の禁止
フリーランスの立場を不当に弱めるような行為は禁止されています。
例:一方的な契約変更・業務追加の強要、契約解除時の一方的な不利益など


【その他(違反時の措置)】
発注事業者が上記の義務・禁止行為に違反した場合、公正取引委員会・厚生労働省などが調査を行い、指導・勧告・公表・命令を行う場合があります。


 


取引条件の明示

フリーランス法では、発注事業者がフリーランスとの取引内容(給付の内容・報酬額・支払期日など)を明確にし、書面または電子記録で契約内容を交付することを義務付けています。
口約束や不明確な契約条件によるトラブルを防ぐことが目的です。


契約内容の交付は、以下の方法で行うことが認められています。


・書面
・電子メール
・SNSのメッセージ
・チャットツール(LINEやSlackなど)


口頭のみでの契約はNGで、必ず記録に残る形式で交付しなければなりません。
なお、電磁的方法で明示した場合であっても、フリーランスから書面の交付を求められたときは、一定の場合を除き、書面を交付しなければなりません。


また、取引条件の明示義務は、フリーランス同士の取引も対象であるため、発注事業者がフリーランスである場合にも義務が課されます。


■中小企業庁
ここからはじめるフリーランス・事業者間取引適正化等法
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/download/freelance/law_05.pdf

スキマバイトも賃上げ促進税制の対象に

空いた時間や隙間時間などの短時間で行える「スキマバイト」が、新しい働き方として注目を集めています。
人材不足を短期間で補えることから、アプリ経由でギグワーカー(スキマワーカー)を雇用している企業も増加しているようです。
短時間・短期的な仕事が多いイメージですが、賃金台帳に記載されているギグワーカーであれば、賃上げ促進税制における「国内雇用者」に該当するようです。

 


国内雇用者とは

企業や個人事業主に雇われており、国内の事業所で作成された賃金台帳に記載された労働者を指します。
役員は対象外となりますが、賃金台帳に記載されていれば、パートやアルバイト、日雇い労働者も国内雇用者となります。
 

■国内雇用者に含まれる範囲

・正社員
 フルタイムで勤務し、安定した雇用契約を結んでいる人。

・契約社員・派遣社員
 期限付きの契約で雇用されている人

・パート・アルバイト
 短時間勤務や特定の条件で働く人

・日雇い労働者
 日々雇用契約を結んで働く人

・外国人労働者
 日本国内で合法的に働いている外国人(技能実習生、特定技能労働者など)

 


賃上げ促進税制とは

賃上げ促進税制とは、事業主が従業員の給与を前年度より一定以上引き上げた場合に、引き上げた額の一部を法人税から控除できる仕組みです。
企業が積極的に賃金引き上げを行うことを促進し、労働者の所得向上と経済の活性化を図ることを目的としています。

【賃上げ促進税制のメリット】
この制度の活用により、企業は税負担を軽減しつつ、従業員のモチベーション向上や人材確保も期待できます。

・企業の税負担軽減
賃上げを実施し、一定の条件を満たせば、法人税の控除を受けられるため、人件費のコスト増加を抑えることができます。

・従業員のモチベーション向上
従業員の所得が増えることで、生活水準だけでなく、仕事に対するモチベーションや生産性の向上にもつながります。

・企業のイメージアップをはかる
賃上げを行うことで、「従業員を大切にする企業」として企業イメージが向上し、人材の確保や、優秀な人材の流出防止も期待できます。

・経済全体への効果
給与が増加すれば消費が活発となり、経済全体の成長が促進されます。

 


賃金台帳への記載でギグワーカーも賃上げ促進税制の対象に

賃金台帳とは、事業主が労働者に対して支払う賃金の詳細を記録した帳簿のことです。
日本では労働基準法に基づき、すべての事業主に対して賃金台帳の作成・保存が義務付けられています。
労働者の賃金額やその賃金額の計算の基礎となる事項などが記載等されていれば基本的に、法定の様式は決まっていません。


ギグワーカーをスキマバイトのアプリ経由で雇用した場合、その情報はアプリの運営会社から企業側に対して、賃金額等の所定の事項が記載された明細書が発行されます。
その明細書の内容を、自社の賃金台帳に記載することで、そのギグワーカーは国内雇用者に該当するとのことです。

スマホ用電子証明書

2016年1月にマイナンバーカードの交付が開始され、2024年11月末の時点で、保有枚数率は全国で75%を超えている一方で、保有している人の携行率は46%となっており、定着するに至っていないのが実情のようです。
マイナンバーカードは、住民票の写しなどの公的な証明書の取得や確定申告、健康保険証、身分証明書として利用できます。
通常は、これらのサービスを利用するには、マイナンバーが記載された顔写真付きのカードの持参が必要ですが、一部の行政サービスでは、マイナンバーカードの代わりに、スマホ用電子証明を利用することが可能になりました。


■総務省
マイナンバーカード交付状況について
https://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/kofujokyo.html

 


スマホ用電子証明とは

スマホ用電子証明書とは、2023年年5月から開始したスマートフォン向けの公的個人認証サービスです。
スマートフォンへ電子証明書機能を搭載することで、マイナンバーカードを持ち歩くことなくスマートフォンだけで様々なマイナンバーカード関連サービスの利用、申し込みが行えます。


先に書いた、低い携行率からも伺えるように、マイナンバーカードを自宅で貴重品として保管している人も、スマートフォンだけでマイナンバーのサービスを利用できるようになります。


スマホ用電子証明の気になる安全性ですが、機微な個人情報はスマートフォン内に記録されない、不正に情報を盗取しようとする各種手法に対し、自動的に記録情報を消去する機能等の対抗措置の実施など、暗号技術やさまざまなセキュリティ対策が施されているようです。

 


スマホ用電子証明書が利用可能なサービス

現在、スマホ用電子証明書が利用可能なサービスには下記のようなものがあります。


●子育て支援、引越しの手続き
●薬剤・健診情報、母子健康手帳の自己情報の閲覧
●銀行・証券の口座開設、携帯電話申込、キャッシュレス決済申し込みなど、民間のオンラインサービス
●住民票の写しをはじめとする市区町村の各種証明書のコンビニ交付


また、今後開始される予定のサービスには次のようなものがあります。


●e-Taxの確定申告(2025年1月より)
●健康保険証


■デジタル庁
スマホ用電子証明書搭載サービス
https://www.digital.go.jp/policies/mynumber/smartphone-certification
 


搭載方法

スマホ用電子証明書を搭載するには、マイナポータルアプリから申し込みます。
マイナンバーカード用署名用電子証明書のパスワードの入力、マイナンバーカードの読み取り、スマホ用電子証明書のパスワードの設定等を行い申請します。


2024年12月6日時点で、スマホ用電子証明書を搭載できる対象端末は、Androidのみで約350端末となっており、2025年以降も端末の種類は増えていくようです。
また、今後リリース予定のiPhoneにもマイナンバーカード機能が実装されるとのことです。