居住用財産に係る特例について

皆様、ブログを読んでいただき、ありがとうございます。

今回は、当法人においてもよくご質問のある居住用財産に係る特例について代表的なものをまとめました。

居住用財産については、その時点において下記の特例がございます。

(1)取得時

①住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除 

→住宅借入金等の合計額×1%、控除期間 10年
②住宅借入金等(認定住宅借入金等)を有する場合の所得税額の特別控除

→認定住宅借入金等の合計額×1%、控除期間 10年
③認定住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除

→標準的な費用の額×10%、控除期間 1年

(2)災害時

①雑損控除

②災害減免法

(3)譲渡時

①譲渡益が生じた場合

(イ)居住用財産の特別控除(3,000万円)

(ロ)居住用財産をの税額軽減(6,000万円まで10%)

(ハ)居住用財産の買換え(課税の繰延)

②譲渡損が生じた場合

(イ)居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

(ロ)特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

それぞれの規定については、細かい適用要件がございますので、特例の適用をする際は細心の注意が必要です。

また、1つの事案について2以上の特例の適用要件に当てはまる場合があり、選択適用なのか、それとも併用して適用することができるのかの判断をしなければなりません。

ここで、事例別に他規定との関係をまとめてみます。

A 住宅借入金により認定住宅の新築又は取得をした場合

(1)①                                (1)②                                (1)③       いずれかの選択

B 住宅借入金により住宅の買換えをした場合(譲渡益が生じた場合)

(1)①又は(1)②                               (3)①(ハ)     いずれかの選択 

(注)居住用財産の譲渡について、3,000万円特別控除又は税額軽減を適用した場合においても、(1)①又は(1)②とは選択適用となります。

C 住宅借入金により住宅の買換えをした場合(譲渡損が生じた場合)

(1)①又は(1)②

(3)②(イ)     併用可

B、Cにより、住宅借入金により住宅の買換えをした場合に、譲渡益が生じた場合は住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除は選択適用となりますが、譲渡損が生じた場合は併用が可能ですので注意が必要です。

もし、住宅を購入される際又は売却される際に、税務面についてご不明な点などがございましたら、是非とも当法人にご相談ください。

税理士法人村上事務所 大阪支社  武内  勝

加入するなら、組合の国保?普通の国保?

さまざまなところで耳にすることのある国民健康保険、みなさんは国民健康保険と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。

色々なことが思い浮かんだと思いますが、国民健康保険の制度には2つの制度があることをご存知でしょうか。

● 各市町村の運営する国民健康保険

● 各組合が運営する国民健康保険

一般的に良く耳にするのは、前者の方だと思いますが、後者についてはあまりご存じない方が多いのではないかと思います。

では、後者は一体どんなものなのでしょうか。簡単に言うと、同種同業による組合員で組織されている組合が運営しているものです。現在、この組合は全国で164も存在しています。では、どのような組合があるのか、一例を挙げてみます。

大阪文化芸能国民健康保険組合、大阪建設国民健康保険組合、大阪府整容国民健康保険組合、大阪府食品国民健康保険組合、近畿税理士国民健康保険組合‥‥

一概には言えませんが、所得金額によっては、各市町村の運営する国民健康保険の金額よりも負担額が減ることあります。

例えば、大阪市に住所を有する方(年齢35歳)で年収500万円、その配偶者(年齢35歳)年収103万円の場合ではどうなるでしょうか。

 

市町村が運営する国民健康保険の場合

➡ 概算440,675円

大阪文化芸能国民健康保険組合が運営する国民健康保険の場合

➡ 概算432,000円

大阪建設国民健康保険組合が運営する国民健康保険の場合

➡ 概算330,000円

大阪府整容国民健康保険組合が運営する国民健康保険の場合

➡ 概算240,000円

大阪府食品国民健康保険組合が運営する国民健康保険の場合

➡ 概算394,800円

 

なぜ加入している組合によって、このように国民健康保険料の負担が変わってくるのでしょうか?

それは、組合によっては、所得に関係なく保険料を定額としている等のためです。

いかがでしょうか。

加入する組合によっては、国民健康保険料の負担が少なくなる可能性も生じるということです。個人事業主の方で市町村が運営する国民健康保険に加入されている場合、一度ご自身の業種+保険組合というキーワードでインターネット検索してみるのも良いかもしれません。

組合によって、保険料の計算はもちろんですが、加入資格・加入要件その他加入の際の必要事項が違いますので、組合への加入をお考えの方は一旦シミュレーションすることをおすすめいたします。

余談となりますが、市町村の運営する国民健康保険に加入されている方について、不動産を譲渡して所得が多く生じた場合には、その譲渡した年の翌年の国民健康保険料の負担が大きくなりますのでお気を付けください。大阪市で平成30年度の場合ですと、賦課限度額は890,000円になります。

 

税理士法人村上事務所 檜垣

株式、投資信託、公社債の税務面の違い

当事務所も年明けからの法定調書、確定申告、3月申告法人の申告が終わり、少しと段落、桜の季節になり、新学期、新事業年度も始まります。

今回確定申告をさせていただいて、株式等の申告についてもう一度簡単に整理します。

 

1.確定申告でよくでくる有価証券

①株式…株式会社が発行する株券(ここでは簡便的に上場株式等に絞ります)

②投資信託…投資信託運用会社が作った受益証券、受益証券から集めた資金を株や債券に投資して運用する(ここでは公社債投信を除きます)

③公社債…国や会社が発行する債券(借入金、特定公社債に絞ります)

 

2.上記については①~②利益分配、③は利息が付きます

①株式

配当金…年1回、年2回、無配の場合有

②投資信託

分配金…毎月型~年1回、無配の場合有、特別分配金は除く(元金戻り)

③公社債

利金…年1回、年2回

 

3.上記について所得税法上は各所得に分類されます

①株式

配当所得…受け取るときに15.315%所得税(復興税含む)、5%住民税が控除されます

②投資信託

配当所得…上記①と同様

③公社債

利子所得…上記①と同様

 

4.上記は確定申告することによって、株式等の譲渡損失との相殺、控除欠格による所得控除との相殺、税率が低いことによる源泉所得税等の控除に活用できます。

 

5.上記について確定申告する際には、その申告方法が異なります。

①株式の配当金

総合課税、分離課税のどちらか選択

②投資信託の分配金

①と同様

③公社債の利金

分離課税のみ

 

6.①、②を総合課税で申告した場合、配当控除が使えます

①株式の配当金

課税所得が1000万円以下の部分については、所得税は配当所得の10% 、住民税は2.8%

課税所得が1000万円を超える部分は、所得税は配当所得の5%、住民税は

1.4%

但し外国株式は配当控除できません

②投資信託の分配金

上記①の2分の1(外貨建資産割合と非株式割合が50%以下の場合)

上記①の4分の1(外貨建資産割合と非株式割合が50%超から75%以下の場合)

但し外貨建資産割合と非株式割合がいずれか75%超の場合と不動産投資(リ-ト)は配当控除できません

 

これらを確定申告した場合国民健康保険等に影響が出る場合もあり、今年度から明確になった住民税の申告不要の選択を行うべきか否かの判断などかなり複雑になっています。

 

株式等の配当や譲渡した方、これから譲渡しようとする方、是非税理士法人村上事務所にご相談ください。

 

税理士法人村上事務所 第一課 奥原伸貴

 

生命保険契約等に関わる支払調書の提出範囲の変更

新年明けましておめでとうございます。

本年も宜しくお願い致します。

年始の1月は、会計事務所では、法定調書の提出業務で忙しくなる時期でございます。

この法定調書に関連しまして、

保険会社から税務署へ提出される支払調書について、平成30年1月1日以後に支払の確定する生命保険金等より、その提出範囲が拡大されます。

従来は…

100万円を超える保険金(一時金や解約返戻金)が支払われた場合

或いは、年間20万円を超える年金タイプの保険金が支払われた場合に、

税務署へ支払調書が提出されていました。

そして、平成30年1月1日以後に支払の確定する生命保険金等より、生命保険契約の契約者変更(名義変更)があった場合も支払調書の提出をしなければならないこととされました。

この提出範囲の拡大については、2つのケースに分けられます。(平成27年度税制改正より)

① 保険会社等は、生命保険契約等について死亡による契約者変更があった場合には、死亡による契約者変更情報及び解約返戻金相当額等を記載した調書を、税務署長に提出しなければならないこととする。

→ 保険金が支払われないが相続税の課税対象になる生命保険契約に関する権利という相続財産が、税務署に全て把握されることになるといえます。

② 生命保険等の支払調書について、保険契約の契約者変更があった場合には、保険金等の支払時の契約者の払込保険料等を記載することとする。

→ 契約者変更があった後の保険金支払時に、契約者変更前と変更後の保険料負担額の内訳が明確になるといえます。

また、法人が契約した逓増定期保険の個人への名義変更についても、法人と個人の各々の保険料負担額が明確になります。この事については、平成27年度税制改正の解説でも言及されています。

平成30年1月1日以降に、契約者変更を行おうとする場合、課税関係がどのようになるのかを十分に検討し確認する必要が生じます。

保険商品が多様化し保険税務が複雑化する中で、

税理士法人村上事務所は、確かな知識と豊富な経験により、皆様の「未来の安心」をサポートしていきます。

税理士法人村上事務所  第三課  岡村 陽

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相続税における土地の評価で財産評価基本通達によらず、鑑定評価が認められ評価額を下げることが出来たケース

皆様、いつも当ブログをご覧いただきありがとうございます。

さて早速本題ですが・・・

○相続税の計算において、土地の評価は通常の場合「財産評価基本通達」というものに書かれている内容に基づいて行います。

○しかし、「評価通達によっては適正な時価を算定することができない特別の事情がある」ときには、評価通達によらない方法(鑑定評価など)で評価することが可能となっています。

○ではこの「評価通達によっては適正な時価を算定することが出来ない特別の事情」とは、はたしてどんな「事情」が考えられるでしょうか?

 

◎一例として「2017.06.15大阪地裁判決、平成24年(行ウ)第259号」があります。要約すると、

・道路に接していない「無道路地」である雑種地が本件土地。

(無道路地の評価では、通路開設費用相当額を控除することが出来る

-無道路地減額補正)

・本件土地への通路開設費用相当額が912万円であり、

・本件土地を評価通達で評価した価額549万円(無道路地減額補正前)を上回っている

・無道路地減額補正率は最大40%だが、通路開設費用相当額はこれを超えている。(549万円×40%=約220万円しか無道路地の減額が出来ない)

・よって本件土地は、「評価通達では接道義務を満たしていないことを十分に反映することができず、これは評価通達によっては適正な時価を算定することができない特別の事情ということができる。

・したがって本件土地の評価は、不動産鑑定評価による価格(本件の場合は220万円の鑑定評価を納税者側が提出していた)と認めるのが相当である。

 

・・・いかがでしょうか?

本件における通路開設費用相当額や鑑定評価額の根拠はハッキリしませんが、この裁判例では、

・無道路地に通路を開設する費用を適切に見積もり、

・それが土地の評価をも上回る状態であり、

・相続人が提出した鑑定評価額が、裁判所に妥当と認められた、

・・・という状況がそろったため鑑定評価額が認められたものと考えられます。

 

※今回この裁判例を紹介したのは、「土地の評価は評価通達に沿ってだけ行えば良いものでは無い!

・・・ことを書いておきたかったからです。

本ブログをご覧になられた方の中にも、相続(これから相続を迎える方も含めて)において、評価通達に書いてある通りの評価方法だと実勢価格よりもはるかに高い評価となってしまう不動産をお持ちの方がおられると思います。

当事務所では、豊富な経験提携士業との連携により不動産の「適正な時価」を探るべく日々業務を行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

(税理士法人村上事務所 片山洋)