近年、相続税の申告において、小規模宅地等の特例の細かい税制改正が毎年のように行われており、特例、控除等の適用要件が年々複雑化しているように思われます。今回は基本的な内容ですが、意外と注意が必要な項目を紹介させていただきます。
(1)相続税の障がい者控除
今回の内容は相続税の障がい者控除です。相続税の障がい者控除は、被相続人(亡くなられた人)が障がい者に該当するかどうかで適用するのではなく、相続人(相続等により財産を取得した人)が障がい者に該当するかどうかで適用します。この控除は税額の軽減になりますので算出税額から税額控除を行うため、場合によっては大きな税額の減額になることがあります。
(2)内容
相続人が85歳未満で障がい者に該当するときは、相続税の額から一定の金額( 詳細(4))を差し引きます。
(3)障がい者控除が受けられる人
次のすべてに該当する人です。
①相続や遺贈で財産を取得した時に日本国内に住所がある人(一時居住者で、かつ被相続人が一時居住者被相続人又は非居住者相続人である場合を除きます。)
②相続や遺贈で財産を取得した時に障がい者である人
③相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人であること
※ここで注意すべき点は
1.障がい者控除を受ける人が相続や遺贈により財産を取得していることです。財産を全く取得していなければ、障がい者控除を受けることができません。1円でも取得している場合は控除限度額に満たなくても、要件を満たす他の相続人から控除できます。
2.障がい者控除を受ける人が法定相続人であることです。法定相続人でない人が遺贈で財産を取得した場合や生命保険の受取人に指定されていて死亡保険金を受け取った場合等は適用できません。
(3)障がい者控除の額
控除額の計算方法は、下記の通りとなります。
(85歳-相続開始時の年齢)✕10万円(特別障がい者の場合は20万円)
仮に、相続開始時の年齢が40歳であれば、
(85歳-40歳)✕10万円(特別障がい者の場合は20万円)= 450万円の税額が相続税額から控除されます。
障がい者、特別障がい者どちらに該当するかについては、細かい内容なので、国税庁のホームペ-ジ等を参照してください。
また、障がい者控除額が、その障がい者本人の相続税額より大きいため控除額が引ききれないことがあります。この場合は、その引ききれない部分をその障がい者の扶養義務者の相続税額から控除します。扶養義務者とは、配偶者、直系血族(親、子等)及び兄弟姉妹の他、3親等内の親族のうち一定のもの(条件あり)となっています。 「相続税法基本通達1の2-1」より
(4)相続税申告においては、相続人が障がい者に該当すれば、障がい者控除の適用が あることを覚えていると、遺産分割を協議するときにも役立つと思われます。
また、障がい者控除については法定相続人すべての状況を確認する必要がありますので、相続人代表がまとめて申告する場合等は各相続人の状況を把握し該当する人がいないか注意する必要があります。
詳しい内容につきましては、税理士法人 村上事務所までご相談ください。
中森 徹