電子取引制度とペーパーレスFAX

来年1月から開始される改正電子取引制度では、電子取引を行った際、その取引情報を電子データで保存することが義務付けられています。
電子取引制度において、FAXによる取引情報のやり取りが「電子取引」に該当するかどうかは、その機能や使用状況により異なります。

 


電子取引となる場合

電子データの取出し・保存もできる複合機等のファクシミリ機能(いわゆるペーパーレスFAX等を含む)を用いて送受信し、電子データの保存を行う場合には「電子取引」に該当します。


また、パソコンやインターネットの普及により増加した、IP 電話・LAN・インターネットなど、IP通信網を利用したインターネット FAX も、受信した情報を紙に印刷することなく電子データとして保存する場合、「電子取引」に該当します。


検索要件など、電子取引制度の要件を満たした形でその電子データを保存する必要があります。


■検索要件

指定のデータをすぐに確認できるように、以下のすべての機能が求められています。

・取引年月日や取引金額など書類等に応じた主要な記録項目を検索できること
・日付や金額にかかわる記録項目は範囲指定で条件の設定による検索ができること
・2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて条件検索できること

 


書面取引となる場合

書類などの原稿を読み取って相手の機器に送信し、相手側で受信して印刷される従来の一般的なFAXについては、「書面による取引があったものとして取り扱う」とされています。
送信者側も受信者側も、書面により確認及び保存することを前提としており、「書面取引」となります。
 

また、電子データの取出し・保存ができるファクシミリ機能を持った状況であっても、電子データでの保存を行わずに書面への出力が通常となっている場合には「書面取引」となります。電子取には該当しないので注意が必要です。

スキャナ保存制度改正について

令和3年度改正によりスキャナ保存制度の要件が抜本的に緩和され、来年1月から改正制度が開始されます。

 


スキャナ保存制度とは

取引先から受け取った請求書・契約書・領収書等及び、自己が作成したこれらの写し等の国税関係書類を、書面による保存に代わり、一定の要件の下でスキャン文書による保存を認めたものです。
スキャナ保存制度自体は2005年からありますが、これまでは要件が厳しく、導入のハードルが高いのが現状でした。
コロナ禍におけるテレワーク推進・ペーパーレス化を図る目的もあり、大幅な制度改正による要件緩和が行われ、多くの企業にとって、スキャナ保存制度を導入するハードルが大きく下がると思われます。

 


スキャナ保存制度改正のポイント

■税務署長の事前承認制度の廃止

現在はスキャナ保存制度を利用開始する日の3か月前までに作成した承認申請書を、必要書類とともに所轄税務署等に提出し、開始日までに申請の承認を受ける必要がありますが、その申請が不要となります。


■タイムスタンプ要件、検索要件等の緩和

スキャナ読み取りの際の受領者の署名が不要になり、タイムスタンプの付与期間が3日から最長2ヶ月以内になります。
また、検索機能の要件が簡素化され、検索項目が「年月日・金額・取引先」のみとなり、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じる場合には、範囲指定及び項目を組み合わせて条件を設定できる機能の確保が不要となります。

 

■適正事務処理要件の廃止

不正防止の観点から内部統制の一環として、紙段階で改ざんが行われていないかを確認するため、紙の原本とスキャンした画像を突き合せることにより同一性を確認する「相互けん制」が必要でしたが、今回の改正で不要となります。
これにより定期検査に必要だった原本(紙書類)は、スキャナ後にすぐに破棄が可能になります。

 

■不正があった場合の重加算税の加重措置の整備

要件が大幅に緩和されることで、多くの企業で電子データ保存の導入が進むことが想定されます。
適正な保存を担保するための措置として、スキャナ保存が行われた国税関係書類に係る電磁的記録に関して、隠蔽し、又は仮装された事実があった場合には、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が10%加重される措置が整備されます。
そのため、不正や不備を防ぐ対策や措置がこれまで以上に重要になります。

公益認定とみなし寄附金制度について

公益法人等(公益財団法人・公益社団法人・学校法人・社会福祉法人・認定NPO 法人など)は、収益事業部門から公益目的事業部門へ金銭その他の資産を内部支出することで、「みなし寄付金」の適用を受け、支出した金額については寄付金とみなし、損金算入限度額の範囲内で損金算入が認められています。

 


みなし寄附金とは

同じ公益法人等の内部間の取引であっても、収益事業(法人税法上34業種)から公益目的事業(非収益事業)へ金銭等の支出をした場合に、その金額を収益事業に係る寄付金の額とみなし、一定の計算のもと、所得の額を圧縮することができます。

 

損金算入限度額は、所得金額の50%あるいは公益法人特別限度額(学校法人、社会福法人、認定NPO法人は年200万円)のどちらか多い方の金額と定められています。

 

みなし寄附金を適用できる公益法人は“公益認定”を受けた公益財団(社団)法人に限られ、税制上優遇される非営利型の一般財団(社団)法人であっても対象外です。

 


公益認定とは

公益認定とは、不特定多数の者の利益増進に資する公益目的事業を主として行うなどの一定の基準を満たすとして、内閣総理大臣又は都道府県知事から受ける認定のことで、一般社団・一般財団法人が公益認定を受けて公益社団・公益財団法人になることができます。

 

公益法人になるメリットは「税制上の優遇がある」「社会的な信用度が高い」などが挙げられます。

例えば、公益認定を受けると、法人税が非課税となる所得の範囲が拡大します。通常、物品販売業や不動産販売業など34の収益事業から生じた所得は課税対象となりますが、公益財団(社団)法人は、公益目的事業により生じた所得であれば、前述の34事業に該当する場合であっても非課税となります。

 

その一方、デメリットは「事業活動の範囲が制限される」「立ち入り検査など行政庁によるチェックを継続的に受けなければならない」などがあります。

 

なお、令和3年4月1日支出分からみなし寄附金の適用に制限が設けられました。収益事業による所得を非収益事業の所得として不正に経理した場合には、その金額がみなし寄附金から除外されます。

連結納税制度からグループ通算制度への移行

令和4年4月1日以後開始事業年度から、連結納税制度を廃止し、グループ通算制度へ移行されることになりました。

 


グループ通算制度への移行に伴う主な変更点

■申告・納税が個別に
連結納税制度では、親会社と子会社、孫会社などの100%の支配関係がある法人のグループを一つの法人とみなして、親法人が代表して申告・納税していたところ、グループ通算制度においてはグループ内の各法人の所得金額を通算しますが、対象法人ごとに個別に申告・納税します。

 

■修正・更生も個別に
税務調査が一社でも入り修正・更正があった際に行われていたグループ全体に対する修正手続き・再計算についても、移行後は原則個別に行うことになり、従来よりも事務負担は軽減されることが見込まれます。

 

■電子申告が義務化
連結親法人の資本金が1億円以下であれば電子申告は任意でしたが、グループ通算制度では、法人税等の申告について電子申告義務が課されます。

 


グループ通算制度へ移行しない場合

グループ通算制度適用開始時に連結納税制度を採用している連結グループは、自動的にグループ通算制度へ移行しますが、連結親法人が令和4年4月1日以後最初に開始する事業年度開始日の前日までにグループ通算制度へ移行しない旨の届出書を出せば、連結納税から単体納税に移行することが可能です。
連結納税制度は、一度開始したらやむを得ない事情がなければ取りやめることができませんでしたが、今回のグループ通算制度への移行時に限り、届出書を提出するだけで単体納税に戻ることができます。

 

この届出書を提出した場合は、令和4年4月1日以後最初に開始する事業年度から単体納税制度を適用して申告することになります。
そして、一旦適用を取りやめると、5年間は再適用の承認が受けられないことになっています。

 

また、連結納税から単体納税に戻った法人について,最後の連結事業年度の終了日の翌日から5年を経過していない法人は,“グループ通算制度を取りやめてから5年を経過していない法人”と『みなす』という経過措置があるため、今回のグループ通算制度への移行時に、グループ通算制度へ移行しない旨の届出書を提出した法人については、5年間はグループ通算制度適用の承認が受けられないことに注意が必要です。

社内提案報奨金と永年勤続表彰

新型コロナウイルスの影響による業績不振の企業が多い中、新商品販売などで業績を回復した企業もあるかと思います。
新商品の企画や、事務や作業などの業務改善、製品の品質改善、経費の節約等につながるアイデアに対し、報奨金を出す社内提案報奨制度の所得区分は、その功労者の「通常の職務」であるかどうかで異なってきます。

 


社内提案報奨金の所得区分

支払う会社側は、「福利厚生費」として損金算入にすることができますが、従業員側の税務上の取扱いは、その提案等が「通常の職務の範囲内か否か」に応じ、次のように分かれます。

※この取扱いは、提案された工夫、考案等が特許等を受けるまでに至らない程度のものの場合となります。


■通常の職務の範囲内である場合

給与所得となり、源泉徴収が必要


■通常の職務の範囲外である場合で、一時に支給されるもの

一時所得となり、源泉徴収が不要


■通常の職務の範囲外である場合で、継続的に支給されるもの

雑所得となり、源泉徴収が不要

※継続的に支給されるとは、例えば、1回の提案について何度も報奨金が貰える、1万個売り上げるごとに支給するなど、複数回に渡る継続的な支給のことをいいます。

 


永年勤続表彰

また、代表的な社内表彰制度である永年勤続表彰で支給する記念品等は、次の要件のいずれも満たす場合には、課税されないことになっています。


1.その人の勤続年数や地位などに照らして、社会一般的にみて相当な金額以内であること

2.勤続年数が、おおむね10年以上である人を対象としていること

3.同じ従業員を2回以上表彰する時は、以前に表彰した時から、おおむね5年以上の間隔が空いていること


しかし、もし現金支給すると、従業員への「給与手当」扱いとなり、課税されますので注意が必要です。
なお、換金性の高い商品券なども現金同様、給与手当として課税されます。