形式上の貸倒れと備忘価額

新型コロナウイルス感染症の影響による取引先の倒産や取引停止等が増えることが予想され、売掛金等の回収ができるか不安な企業も多いかと思います。
取引先が一定の状況に陥ったことで売掛金等が回収できなくなった場合に、税務上、貸倒損失を計上できる基準があります。
その一つに、形式上の貸倒れがあります。

 


形式上の貸倒れとは

貸付金等を除く売掛債権が対象で、下記のいずれかの条件に当てはまれば、形式上の貸倒れと認定されます。


・継続的な取引を行っていた取引先の資産状況等の悪化で取引が停止し、1年以上経過している
・支払いを求めたにもかかわらず弁済がなく、売掛金の総額が取り立て費用に満たない

 

形式上の貸倒れの場合、「備忘価額」を設定することで、貸倒損失を計上できます。
なお、この基準は、継続的に取引を行っていた場合にしか適用されません。単発取引の場合には使えないため、注意が必要です。

 


形式上の貸倒れの状況になったときの仕訳例

取引先Aに対する売掛金が10万円で備忘価額を1円に設定した場合

貸倒損失 99,999円 / 売掛金 99,999円

 

その後「事実上の貸倒れ」になったときの仕訳は下記のようになります

 

貸倒損失 1円 / 売掛金 1円
 
 

備忘価額を設定するのはなぜ?

形式上の貸倒れは、あくまで「形式上」であり、現実的に貸倒れる確率は極めて高いわけですが、回収できる確率が0%ではないという考え方もあります。
そこで、備忘価額を設定することで、売掛金等がまだ存在していることを示しておくためといわれています。
設定された備忘価額は、その後「事実上の貸倒れ」の状況となったときに消すことができます。

 

■事実上の貸倒れとは
取引先の破産、死亡などにより、売掛金の全額が回収できないことが明らかであるとき、事実上の貸倒れが認定され、全額が貸倒損失として計上できます。