電子領収書の交付請求

民法改正により、本年9月1日から、紙の受取証書の請求に代えて、電子データ、いわゆる電子領収書の提供を請求することができるようになりました。

 


電子領収書の請求が可能になった背景

インターネット上での電子取引の増加や、ペーパーレス化の推奨、新型コロナの影響による在宅勤務の急増などにより、会社の経費精算で必要な領収書を電子データ(電子領収書)として交付してほしいというニーズがありました。
また、売手側も、新型コロナ感染拡大防止のため、非対面取引が増加する中で、領収書の印刷費や郵送費、交付のための設備や体制の整備等が過度な負担となる場面も出てきつつあるようです。

 

そこで、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」に基づき、民法上これまでは、買手は領収書を書面でしか交付請求できませんでしたが、書面または電子領収書の交付のいずれかを選択して売手に請求できるようになりました。
対個人消費者との取引だけでなく、企業間取引も対象となります。

 


電子領収書のメリット

電子領収書が普及することで、様々なメリットがあると考えられます。
 

買手側のメリット

・環境保護への貢献
・財布が膨らむことによる煩わしさの低減
・紛失の回避
・新しい生活ツールとしての活用(各種アプリとの連携により、家計簿や、購入した食品のカロリーの自動計算等が可能)
・経費精算や確定申告への活用
 

売手側のメリット

・環境保護への貢献
・紙代や印紙代等の経費削減
・レジの混雑緩和
・キャンペーンサイトへの誘導等、販促ツールとしての活用
・購買データ分析によるマーケティングや販売戦略策定への活用
・消費者とのコミュニケーションツールとしての活用(紙レシートのように紙面の大きさの制約がなく、双方向のコミュニケーションが可能)

 


電子領収書の請求ができない例

電子領収書の交付を請求された売手は、それに応じる義務がありますが、体制や設備が整備されていない環境においては、スマートフォンやパソコン等を用いての発行が困難な場合も少なくないと考えられます。
そこで、「売手側に電子領収書を交付するためのシステム等が整備されていない場合」などは、売手に“不相当な負担”があるとして、買手は電子領収書の交付を請求できません。

 


電子領収書を電子インボイスとして交付等も可能に

令和5年10月より消費税のインボイス制度が始まり、電子インボイスが導入されます。
電子領収書に売手の登録番号などインボイスの「記載事項」を記載していれば、売手は電子領収書を電子インボイスとして交付等することができ、買手はその電子領収書を保存することで仕入税額控除を適用できます。

 

■法務省:電子領収書の交付請求に係る「電子的な受取証書(新設された民法第486条第2項関係)についてのQ&A

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00269.html

電子取引制度とペーパーレスFAX

来年1月から開始される改正電子取引制度では、電子取引を行った際、その取引情報を電子データで保存することが義務付けられています。
電子取引制度において、FAXによる取引情報のやり取りが「電子取引」に該当するかどうかは、その機能や使用状況により異なります。

 


電子取引となる場合

電子データの取出し・保存もできる複合機等のファクシミリ機能(いわゆるペーパーレスFAX等を含む)を用いて送受信し、電子データの保存を行う場合には「電子取引」に該当します。


また、パソコンやインターネットの普及により増加した、IP 電話・LAN・インターネットなど、IP通信網を利用したインターネット FAX も、受信した情報を紙に印刷することなく電子データとして保存する場合、「電子取引」に該当します。


検索要件など、電子取引制度の要件を満たした形でその電子データを保存する必要があります。


■検索要件

指定のデータをすぐに確認できるように、以下のすべての機能が求められています。

・取引年月日や取引金額など書類等に応じた主要な記録項目を検索できること
・日付や金額にかかわる記録項目は範囲指定で条件の設定による検索ができること
・2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて条件検索できること

 


書面取引となる場合

書類などの原稿を読み取って相手の機器に送信し、相手側で受信して印刷される従来の一般的なFAXについては、「書面による取引があったものとして取り扱う」とされています。
送信者側も受信者側も、書面により確認及び保存することを前提としており、「書面取引」となります。
 

また、電子データの取出し・保存ができるファクシミリ機能を持った状況であっても、電子データでの保存を行わずに書面への出力が通常となっている場合には「書面取引」となります。電子取には該当しないので注意が必要です。

スキャナ保存制度改正について

令和3年度改正によりスキャナ保存制度の要件が抜本的に緩和され、来年1月から改正制度が開始されます。

 


スキャナ保存制度とは

取引先から受け取った請求書・契約書・領収書等及び、自己が作成したこれらの写し等の国税関係書類を、書面による保存に代わり、一定の要件の下でスキャン文書による保存を認めたものです。
スキャナ保存制度自体は2005年からありますが、これまでは要件が厳しく、導入のハードルが高いのが現状でした。
コロナ禍におけるテレワーク推進・ペーパーレス化を図る目的もあり、大幅な制度改正による要件緩和が行われ、多くの企業にとって、スキャナ保存制度を導入するハードルが大きく下がると思われます。

 


スキャナ保存制度改正のポイント

■税務署長の事前承認制度の廃止

現在はスキャナ保存制度を利用開始する日の3か月前までに作成した承認申請書を、必要書類とともに所轄税務署等に提出し、開始日までに申請の承認を受ける必要がありますが、その申請が不要となります。


■タイムスタンプ要件、検索要件等の緩和

スキャナ読み取りの際の受領者の署名が不要になり、タイムスタンプの付与期間が3日から最長2ヶ月以内になります。
また、検索機能の要件が簡素化され、検索項目が「年月日・金額・取引先」のみとなり、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じる場合には、範囲指定及び項目を組み合わせて条件を設定できる機能の確保が不要となります。

 

■適正事務処理要件の廃止

不正防止の観点から内部統制の一環として、紙段階で改ざんが行われていないかを確認するため、紙の原本とスキャンした画像を突き合せることにより同一性を確認する「相互けん制」が必要でしたが、今回の改正で不要となります。
これにより定期検査に必要だった原本(紙書類)は、スキャナ後にすぐに破棄が可能になります。

 

■不正があった場合の重加算税の加重措置の整備

要件が大幅に緩和されることで、多くの企業で電子データ保存の導入が進むことが想定されます。
適正な保存を担保するための措置として、スキャナ保存が行われた国税関係書類に係る電磁的記録に関して、隠蔽し、又は仮装された事実があった場合には、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が10%加重される措置が整備されます。
そのため、不正や不備を防ぐ対策や措置がこれまで以上に重要になります。

法人設立ワンストップサービスについて

法人を設立するためには、さまざまな手続きが必要です。
これまで法人を設立する際、届出の提出などの各種手続きを、所轄税務署と自治体の行政機関毎に個別に行う必要がありましたが、「法人設立ワンストップサービス」を利用することで、一括して書類を提出することが可能となり、手続きがより簡単になります。

 


法人設立ワンストップサービスとは

法人設立ワンストップサービスとは、法人を設立する際、各省庁に提出等が必要な各種手続きを一度にまとめてオンラインで申請できるサービスのことです。
手続きごとの来庁が不要になり、オンラインでできるので、24時間365日、自宅等からいつでも手続きが可能となります。

 

■国税庁「法人設立ワンストップサービスの対象が全ての手続に拡大されました」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/OSS.htm

 


法人設立ワンストップサービス利用を利用するための事前準備

利用にあたっては、事前に以下の準備を行ってください。
 

●法人代表者のマイナンバーカード

マイナンバーカードについては、交付の申し込みをしてから交付されるまでに時間がかかることがあります。提出期限が定められている手続きもありますので、スケジュールに注意して準備を行ってください。


●インターネットアクセス端末

スマートフォン、パソコン、タブレット等


●ICカードリーダライタ

カード読取可能なスマートフォンであれば不要です。


●マイナポータルAPのインストール

マイナポータルは、国が運営するオンラインサービスで、行政手続の検索やオンライン申請がワンストップでできたり、行政機関からのお知らせを受け取れたりする、自分専用のサイトです。

 


従来の手続きで必要な添付書類について

法人設立ワンストップサービスではなく、従来通り書面やe-Tax・eLTAXで提出すると

①定款等の写し
②登記事項証明書等
などの書類を添付することが求められます。
 

②登記事項証明書等については、平成29年度税制改正により、法務省と国税庁との間で登記事項情報を共有できる環境が整備されたことを踏まえ、税務署への届出の際は添付が省略できるようになりましたが、各自治体への届出の際は省略できません。

固定資産税減免特例と宥恕規定

新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置として、売上が減少している中小企業者等に対して、「固定資産税・都市計画税の減免措置」が設けられています。
原則として、申告期限までに必要書類を提出する必要がありますが、期限経過後の扱いとして宥恕規定も置かれています。

 


固定資産税・都市計画税の減免措置とは

新型コロナウイルス感染症の影響で事業収入が減少している中小企業・小規模事業者の税負担を軽減するため、事業者の保有する建物や設備の2021年度の固定資産税及び都市計画税を、事業収入の減少幅に応じ、ゼロまたは1/2とします。

【減免対象】

※いずれも市町村税(東京都23区においては都税)
■事業用家屋及び設備等の償却資産に対する固定資産税(通常、取得額または評価額の1.4%)
■事業用家屋に対する都市計画税(通常、評価額の0.3%)

2020年2月~10月までの任意の連続する3ヶ月間の事業収入の対前年同期比減少率 減免率
50%以上減少 全額
30%以上50%未満 1/2
【申告期限】

2021年1月31日までとされていますが、同日は日曜日に当たるため、翌日の2021年2月1日が申告期限となっています。

 


宥恕規定について

申告期限経過後の申告について、必要書類の提出先となる各自治体の市町村長が、「やむを得ない理由がある」と認めたときは、例外的に、期限経過後の提出であっても特例を適用することができるとしています。

 

「やむを得ない理由」とは、例えば
・必要書類の手続をしている人が新型コロナウイルス感染症に罹患してしまった
・新型コロナウイルス感染症の影響で会社が休業状態になってしまった
等のケースが想定されます。

 

ただし、このようなケースの認否については、各自治体の市町村長の判断に委ねられます。
大前提として、申告期限の遵守が基本であることを忘れずに、申告期限に間に合うように計画的に手続きを行いましょう。