令和3年度改正によりスキャナ保存制度の要件が抜本的に緩和され、来年1月から改正制度が開始されます。
スキャナ保存制度とは
取引先から受け取った請求書・契約書・領収書等及び、自己が作成したこれらの写し等の国税関係書類を、書面による保存に代わり、一定の要件の下でスキャン文書による保存を認めたものです。
スキャナ保存制度自体は2005年からありますが、これまでは要件が厳しく、導入のハードルが高いのが現状でした。
コロナ禍におけるテレワーク推進・ペーパーレス化を図る目的もあり、大幅な制度改正による要件緩和が行われ、多くの企業にとって、スキャナ保存制度を導入するハードルが大きく下がると思われます。
スキャナ保存制度改正のポイント
■税務署長の事前承認制度の廃止
現在はスキャナ保存制度を利用開始する日の3か月前までに作成した承認申請書を、必要書類とともに所轄税務署等に提出し、開始日までに申請の承認を受ける必要がありますが、その申請が不要となります。
■タイムスタンプ要件、検索要件等の緩和
スキャナ読み取りの際の受領者の署名が不要になり、タイムスタンプの付与期間が3日から最長2ヶ月以内になります。
また、検索機能の要件が簡素化され、検索項目が「年月日・金額・取引先」のみとなり、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じる場合には、範囲指定及び項目を組み合わせて条件を設定できる機能の確保が不要となります。
■適正事務処理要件の廃止
不正防止の観点から内部統制の一環として、紙段階で改ざんが行われていないかを確認するため、紙の原本とスキャンした画像を突き合せることにより同一性を確認する「相互けん制」が必要でしたが、今回の改正で不要となります。
これにより定期検査に必要だった原本(紙書類)は、スキャナ後にすぐに破棄が可能になります。
■不正があった場合の重加算税の加重措置の整備
要件が大幅に緩和されることで、多くの企業で電子データ保存の導入が進むことが想定されます。
適正な保存を担保するための措置として、スキャナ保存が行われた国税関係書類に係る電磁的記録に関して、隠蔽し、又は仮装された事実があった場合には、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が10%加重される措置が整備されます。
そのため、不正や不備を防ぐ対策や措置がこれまで以上に重要になります。