使用人から役員に昇格するときには、役員専任になる場合と、取締役営業部長というように使用人兼務役員というステップを踏んでから役員選任になる場合があり、それぞれの退職金の支給と損金算入の条件が異なります。
使用人が常務取締役等の役員専任になる場合、支払われる使用人部分の退職給与は、退職給与規程に基づくものであれば、原則、損金算入できます。
一方、使用人が使用人兼務役員に昇進後、さらに役員専任となり、使用人としての職務を有しなくなった場合、使用人部分に対する退職給与は一定の要件を満たさないと損金算入できないとされています。
使用人兼務役員とは
使用人兼務役員とは、法人の役員でありながら、部長や課長など、「法人の使用人としての身分」を持ち、常時使用人としての職務に従事している人のことです。
例えば営業部長や工場長が取締役になったが、実際の勤務は以前と変わらず、役職、勤務実態ともに使用人としての色合いが強いような場合は、使用人兼務役員となります。
なお、以下のような場合は対象外となります。
「取締役営業担当」や「取締役経理担当」
「〇〇担当」は役員の中での役割分担であり、職制上の役職ではないとされています。
非常勤の場合
使用人兼務役員は常時使用人としての職務に従事していなければならないため、使用人兼務役員に該当しません。
損金算入できる要件
①支給対象者が、過去に使用人から使用人兼務役員に昇進した者であること
②使用人兼務役員昇進時に使用人であった期間の退職金の支給をしていないこと
③支給額が、使用人の退職給与規程に基づき、使用人期間と使用人兼務役員期間を通算して、使用人の職務に対する退職給与として計算されていること
使用人であった期間に対する退職給与の支給時期は
・使用人兼務役員から役員専任になるときに支給
・退職時に役員部分とあわせて支給
が考えられます。
いずれの支給時期でも要件②を満たすものとして取り扱うことが可能です。
【例】
2010年6月に使用人として入社した者が、2020年6月に使用人兼務役員へ昇進後、2022年6月に取締役副社長に就任し、2023年6月に法人を退職(副社長を退任)した場合
入社時から使用人兼務役員として勤務した期間の12年間(2010年6月~2022年5月末)に対応する使用人部分の退職金を、取締役副社長就任時(2022年6月)又は退職時(2023年6月)に支給することで要件②を満たしています。