電子データ保存の検索機能の不要措置と書面整理

2024年1月1日より、電子取引を行った場合の請求書等の電子データについては、原則、取引年月日等の項目によりデータを検索できる検索要件等を満たす形で保存する必要があります。
ただし、令和5年度税制改正により、検索要件について大幅な緩和が行われ、一定の条件を満たす場合には検索要件を満たさなくとも、電子保存ができるようになりました。

 


電子データ保存の検索機能の要件とは

原則、保存した帳簿や書類の電子データは、必要なときにいつでも確認できるようにするため、以下の検索機能が必要とされています。


①取引年月日、取引金額、取引先で検索できる
②日付または金額の範囲指定で検索できる
③2つ以上の任意の検索項目を組み合わせて検索できる


なお、②③については、税務調査等でデータのダウンロードに応じることができるようにしている場合には不要となります。


また、検索機能の簡易的な方法として、

・表計算ソフト等で索引簿を作成し、表計算ソフト等の機能で検索する
・規則的なファイル名(日付・金額・取引先)を付け、特定のフォルダに保存し、フォルダの検索機能を活用する

等があります。
専用のソフトウエア等を購入しなくても、検索機能の確保が実現できます。


■国税庁
電子取引データの保存法をご確認ください
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0021011-068.pdf

 


検索機能の確保不要の対象者

令和5年度税制改正により、電子帳簿等保存制度の見直しが行われ、税務調査等で電子データのダウンロードに応じることを前提に、以下の対象者は検索機能が全て不要となりました。


・基準期間(2課税年度前)の売上高が5,000万円以下の保存義務者

・基準期間(2課税年度前)の売上高が5,000万円を超える場合でも、電子取引データをプリントアウトした書面を、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている保存義務者


■国税庁
電子帳簿保存法の内容が改正されました
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0023003-082.pdf

 


検索機能が不要でも、日頃から書面の整理を行うことをお勧めします

税務調査等で求められた際に、遅滞なく「ダウンロードの求め(調査担当者にデータのコピーを提供すること)」に応じることができるようにするには、下記のような整理方法が考えられます。
 

①課税期間ごとに、取引年月日その他の日付の順にまとめて、取引先ごとに整理する
②課税期間ごとに、取引先ごとにまとめて、取引年月日その他の日付の順に整理する
③書類の種類ごとに、①又は②と同様の方法で整理する

 

どの整理方法も規則性が必要な作業となりますので、日頃から整理しておくのが良いでしょう。


■国税庁
電子帳簿保存法一問一答 問46
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/00023006-044_03-5.pdf

電子申告義務と無申告加算税

平成30年度税制改正により、資本金1億円超の法人等は、法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税及び消費税等の確定申告書等の電子申告が義務化されています。
経済社会のICT化等が進展する中、税務手続きにおいても情報通信を活用することで、コスト削減と企業の生産性向上の実現が期待されています。
電子申告は、確定申告書、中間(予定)申告書、仮決算の中間申告書、修正申告書及び還付申告書の提出が対象となり、申告書に添付する書類などもe-Tax(地方税はeLTAX)で提出する必要があります。

 


電子申告の対象法人

法人税及び地方法人税の場合

内国法人のうち

・事業年度開始の時において、資本金または出資金の額が1億円を超える法人
・通算法人
・相互会社
・投資法人
・特定目的会社
 

消費税及び地方消費税の場合
・法人税及び地方法人税で義務化されている法人
・国・地方公共団体


■e-Taxホームページ
電子申告の義務化の対象法人を教えてください。
https://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/gimuka/02.htm

電子申告の義務化の対象法人一覧表(概要)
https://www.e-tax.nta.go.jp/hojin/gimuka/taisho_ichiran.pdf

 


電子申告が困難な場合

対象法人は、原則としてe-Taxで電子申告を行わなければなりませんが、自然災害、停電等により、企業内のインターネット環境に障害が発生した等の理由で、法定申告期限までに電子申告が困難な場合には、所轄税務署長の承認を得た上で、書面により提出することで、例外的に電子申告義務が履行されたものとみなされます。
※申告方法の誤りなど人為的ミスは例外事由に当てはまりませんので注意が必要です。


承認を得るためには、事前に「e-Taxによる申告が困難である場合の特例の申請書(取りやめの届出書)」及びe-Taxを使用することが困難であることを明らかにする書類を所轄税務署長に提出する必要があります。


■e-Taxホームページ
電子申告の義務化の対象法人ですが、インターネット回線の故障でe-Taxによる提出を行うことができません。どうすればよいですか。
https://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/gimuka/19.htm

 


申告が無効となった場合の無申告加算税

対象法人が期限内に申告書を提出しなかった場合、無申告加算税が課されることになります。
無申告加算税とは、期限内に申告書を提出しなかった場合に罰則的に課される税金で、原則として、納付すべき税額に対して、50万円までの部分は15%、50万円を超える部分は20%(R6.1.1以後に申告期限到来分で300万円超の部分は30%)の割合を乗じて計算した金額となります。


申告が無効となった場合、無申告加算税が課されるか否かは、書面による申告書の提出日ではなく、e-Taxによる申告書の再提出日が申告期限内か期限後かにより判定されます。

特定支出控除とジョブ・カードの活用

給与所得者が、自らのキャリアアップのために行う学び直し(リスキリング)が注目されています。
この学び直しのための資格取得費や研修参加費などの一定の費用について、特定支出控除を受けることができます。

 


特定支出控除とは

給与所得者には、原則として必要経費が認められていませんが、業務上必要な資格取得費などの費用が多い場合、特定支出として控除できる制度です。
特定支出の合計額が、給与所得控除額の1/2相当額を超える場合、給与所得の計算上、超える部分の金額を給与所得控除後の金額から控除できます。

 


特定支出となる費用

①通勤費
電車やバス、マイカーなど通勤のために通常必要な費用
※会社が通勤費を支給している場合は特定費用にはなりません。

 

②職務上の旅費
出張など、勤務地を離れて業務を行う為に通常必要な費用
 

③転居費
転勤に伴う転居のために通常必要な費用
 

④研修費
仕事に直接必要な技術や知識習得の目的で受ける研修費用
 

⑤資格取得費
仕事に直接必要な資格取得のための費用
 

⑥帰宅旅費
単身赴任などで、勤務地や居所から自宅に帰宅するための旅費
 

⑦勤務必要経費
図書費:仕事に関連する書籍、定期刊行物等の購入費用
衣服費:勤務場所で着用する制服、事務服、作業服等の購入費用
交際費:得意先や仕入先などの取引先に対する接待、贈答費用
 

■国税庁
No.1415 給与所得者の特定支出控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1415.htm

 


研修費・資格取得費は、キャリアコンサルタントによる証明が可能に

今までは、特定支出が業務に必要なものであるという証明を行うのは給与支払者でした。
令和5年度改正により、令和5年分の所得税から、研修費・資格取得費については、給与支払者だけでなく、キャリアコンサルタントが証明できることになりました。
キャリアコンサルタントに発行してもらう「特定支出に関する証明書」を、確定申告書に添付することで特定支出控除が受けられます。
「特定支出に関する証明書」をキャリアコンサルタントに発行してもらうには給与所得者が事前にジョブ・カードを作成しておく必要があります。

 


ジョブ・カードとは

ジョブ・カードとは「生涯を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力証明」の機能を担う、厚生労働省が様式を定めたツールです。
給与所得者のキャリア・プランニングや、免許・資格・職務経験・知識や技能などを記入して作成します。


ジョブ・カードとして定められている3つの様式のうち、特定支出に関する証明書で必要なのは以下の2点となります。
①キャリア・プランシート(様式1-1又は様式1-2)
②職務経歴シート
 

特定支出に関する証明書の発行をキャリアコンサルタントに依頼する際は、上記のジョブ・カードと、現在の職務や、受講講座の職務との関連性の疎明について記載した「特定支出に関する証明依頼書」などを、コンサルタントに提出します。

 

詳しくは下記URLでご確認ください。
■厚生労働省
特定支出控除制度におけるキャリアコンサルタントによる証明制度について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/tokuteishishutsukojo.html

インボイス発行事業者の登録後、公表事項に変更があったときの手続き

インボイス発行事業者が法令で定められている公表事項(住所や名称、法人の本店所在地など)を変更する場合は、原則として「適格請求書発行事業者登録簿の登載事項変更届出書」を提出する必要があります。

 


法人は「異動届出書」を提出すれば変更届出書の提出を省略できます

法人については、変更内容が、名称や本店又は主たる事務所の所在地の場合であれば、異動届出書の「消費税」欄にチェックを入れて提出することで、変更届出書の提出は不要となります。
異動届出書が提出された後、情報がインボイス登録センターに共有され、国税庁インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイトの公表事項に反映されます。

 


個人事業者等の公表事項の変更手続きについて

個人事業者の変更は法人とは異なります。
個人事業者の公表事項には、公表を希望していない限り、主たる屋号や主たる事務所の所在地は含まれていません。
よって、屋号や主たる事務所の所在地の追加公表している場合のみ変更手続きが必要となります。

 

【関連記事】インボイス事業者公表サイトでの個人事業者の公表事項について

 

公表している情報に変更等があったとき、又は非公開にするときには、「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」の提出が必要です。
適格請求書発行事業者登録簿の登載事項変更届出書ではありませんので注意が必要です。

 

なお、個人事業者の異動届出書等は2022年で廃止されました。
2023年1月1日以降の納税地の変更及び異動については税務署への届け出不要となっており、異動後に初めて提出する確定申告書に異動後の情報を記載すれば良くなりました。

源泉徴収票の電子交付とみなし承諾

令和5年度税制改正により、「給与所得の源泉徴収票」と「給与等の支払明細書」について、電子交付する際に必要な承諾手続が簡略化されました。
改正前は、源泉徴収票等を電子交付するには、受給者である従業員等にあらかじめ電子交付方法の種類と内容を示し、電磁的方法又は書面による承諾を得ることが必要でした。
改正後は、「給与支払者が定める期限までに承諾に係る回答がない時は承諾があったものとみなす」という通知を、あらかじめ受給者に行い、上記期限までに受給者から回答がなかった場合には、承諾を得たものとみなされます。(みなし承諾)

 


受給者への通知の具体的な方法

通知方法は、法令上特に規定はないものの、電子メールの送信、書面の交付などの手段で、受給者へ「確実な通知」を行う必要がありあす。
「確実な通知」を行う注意点として、給与支払者が社内情報共有ツール等を利用して、対象の全従業員向けに発信した際に、一部の従業員等が閲覧できないことが起こらないように、あらかじめ閲覧権限の設定等の確認が必要です。


また、通知に対する承諾の回答期限についても特に定めはないので、受給者の勤務状況等を考慮し、回答に必要な期間を十分に見積もって設定しましょう。

 


従来通り、電子交付に承諾を得る必要がある事項

みなし承諾の対象となるのは「給与所得の源泉徴収票」と「給与等の支払明細書」のみとなり、それ以外の下記の事項については、従来通り従業員等から電磁的方法又は書面で承諾を得ることが必要です。
 

・退職所得の源泉徴収票、退職手当等の支払明細書
・公的年金等の源泉徴収票、公的年金等の支払明細書
・オープン型証券投資信託収益の分配の支払調書
・配当等とみなす金額に関する支払調書
・上場株式配当等の支払通知書
・特定口座年間取引報告書
・特定割引債の償還金の支払通知書
・未成年者口座年間取引報告書

 


電子交付の方法と要件

電子交付には、次の方法があります。


①電子メールで直接送付する
②源泉徴収票等のデータをネット上にアップロードし、社内ネットワークやインターネットにより受給者がアクセスして閲覧する
③CD等の媒体に記録して交付する


なお、電子交付の際には、下記の要件を満たす必要があります。
・受給者等ごとに作成されたファイルに記録されている記載事項について、パソコン等で表示や書面への出力ができること
・①および②の場合、電子交付したことを通知すること


源泉徴収票等を電子交付する場合、データを改変できないような措置は求められてはいませんが、真実性等を担保するためには、電子署名を付し電子証明書を添付するのが望ましいです。


■給与所得の源泉徴収票等の電磁的方法による提供(電子交付)に係るQ&A
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/denshikofu-qa/question.htm