インボイス登録申請の延長

インボイス制度が始まる令和5年10月1日から登録を受けるには、原則として同年3月31日までの申請が必要でした。
しかし令和5年度改正により、令和5年9月30日までに納税地を所轄する税務署長に登録申請書を提出すれば登録を受けることが可能です。
これまでは、4月以降に申請する場合、インボイス制度が開始する令和5年 10 月1日に登録を受けたものとみなす宥恕規定の適用を受けるためには、申請書に「期限までの申請が困難な事情」の記載が必要でしたが、この「困難な事情」の記載は不要となりました。

 


インボイス制度が開始する10月1日までに登録の通知が来なかったら?


制度開始日である令和5年10月1日までに登録通知が届かなかった場合であっても、同日から登録を受けたものとみなされます。


通知を受けるまでは以下のような対応が考えられます。
・暫定的な請求書を交付し、通知後にインボイスとしての不足事項を書面で交付し補完する
・事前にインボイスの交付が遅れる旨を取引先に伝え、通知後にインボイスを交付する
・取引先に対して通知を受けるまでは暫定的な請求書を交付し、通知後に改めてインボイスを交付しなおす


登録申請書の処理期間は、e-Tax提出なら約3週間、書面提出なら約2か月かかるため(4月10日現在)、登録を決めた場合は早めに申請するのがおすすめです。


■適格請求書発行事業者の登録件数及び登録申請書の処理期間について
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/kensu_kikan.pdf

 


期限の特例

ちなみに、最終日となる令和5年9月30日は土曜日です。
申告書等の提出等に係る期限が土日等に当たるときは、その翌日を期限とみなす「期限の特例」が設けられています。
しかし、インボイス登録に係る経過措置に関しては上記の「期限の特例」の対象にはなりません。
「期限の特例」の対象となるには、条文上に期限の定めがあることが前提です。
インボイスの登録申請に関する条文には「(制度開始日にインボイス発行事業者の)登録を受けようとする事業者は、5年施行日の 6月前の日=3月31日まで に、登録申請書を 提出しなければならない 」とありますので、3月31日が土日であれば「期限の特例」の対象でしたが、経過措置にはこのような期限の定めがないため、最終日は翌月曜日にならないので注意が必要です。

 


インボイス制度開始後の10月以降に登録はできるのか?

免税事業者が令和5年10月1日後から令和11年9月30日までの間に登録を受ける場合には、適格請求書発行事業者の登録申請書に、提出日から 15 日以後の日を「登録希望日」として記載すれば、その登録希望日から登録を受けることができます。

配偶者居住権の賃料収入と経費算入

令和2年4月1日に始まった配偶者住居権に基づき、自宅の所有者の許可を得れば、配偶者は使用収益が可能となり、第三者に賃貸し、賃料収入を得ることもできます。
その場合の賃料は、配偶者の不動産所得と考えられ、配偶者が負担すべき自宅に係る固定資産税等は必要経費に算入できます。

 


配偶者居住権とは

配偶者居住権とは、夫婦の一方が亡くなった際に、残された配偶者が亡くなった人が所有していた建物に、賃料の負担がなく、引き続き住み続けることができる権利です。
残された配偶者の居住権を保護するため、令和2年4月1日以降に亡くなられた方の相続から新たに認められました。
建物の価値を「所有権」と「居住権」に分けて考え、残された配偶者は建物の所有権を持っていなくても、一定の要件の下、居住権を取得することで、亡くなった人が所有していた建物に引き続き住めるようにするものです。

 

残された配偶者は、亡くなった人の遺言や、相続人間の話合い(遺産分割協議)等によって、配偶者居住権を取得することができます。
配偶者居住権を設定することで、自宅の所有権を子に相続させても、配偶者は自宅に居住し続けることが権利上可能なうえ、自宅の所有権を取得しない代わりに、配偶者は自宅以外の、預貯金等の財産をより多く相続できることになり、今後の生活費を確保しやすくなる等のメリットがあります。
また、所有権を持つ子の許可を得れば、第三者に賃貸し、賃料収入を得ることもできます。

 

 


固定資産税と減価償却費

配偶者はその建物の通常の必要費を負担するものとされており、固定資産税は配偶者が負担すべき費用に当たるようです。
そのため、配偶者居住権に基づき、配偶者が自宅を賃貸する場合、配偶者が負担すべき固定資産税は自宅の賃貸に係る必要経費として、配偶者の賃料収入から差し引くことができます。
一方で、不動産所得計算上、減価償却費は必要経費に算入できません。
減価償却費は建物の所有者である子の必要経費に算入されます。

 

しかし、建物の所有者である子が、同居し、日常の生活の資を共にしている生計一の場合、本来は子の必要経費に算入されるべき自宅の減価償却費を配偶者の必要経費に算入できます。

圧縮記帳の適用と償却資産税

国や地方公共団体から交付された補助金を使って固定資産を取得した場合、圧縮記帳の制度が使えます。
さらに、固定資産の圧縮記帳後の金額が30万円未満であれば、全額損金算入することも可能です。

 


圧縮記帳とは

圧縮記帳は、補助金を受取った事業年度の大幅な課税を避けるための方法です。

 

例:国からの補助金を使って機械を購入した場合

補助金収入には税金がかかるため、せっかく補助金を受給しても、初年度の税金が大きくなり、補助金の効果が薄れてしまいます。
そこで、補助金と同額の損金(固定資産圧縮損)を計上することで、結果として相殺が可能となります。
これにより、補助金を受給した事業年度に、補助金の効果を十分に受けられることになります。

 

ただし、圧縮記帳を適用すると、固定資産の取得価額も減額されるため、2年目以降は減価償却費が少ない分、計上できる減価償却費も小さくなり、課税所得は大きくなりますので、トータルで考えると、税負担を軽減しているわけではなく税を繰り延べていることになります。

 


償却資産税の申告は圧縮記帳前の金額で行う

地方税法上、償却資産は、土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産等とされ、少額の償却資産は除かれています。
少額の償却資産の範囲に、圧縮記帳制度を適用した資産は含まれないため、償却資産税では、圧縮記帳前の金額、つまり、取得価額をベースに申告する必要があります。

 

例:50万円の機械を購入し、圧縮記帳後の金額が20万円となった場合
中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入特例を適用して全額損金算入することができます。
一方、償却資産税は、圧縮記帳は認められませんので、圧縮記帳前の50万円をベースに申告します。

 

なお、地方税法における少額の償却資産は、「少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度」と「一括償却資産の損金算入制度」の適用がある資産等に限られます。
そのため、圧縮記帳を行わず「中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入特例」のみで全額損金算入した固定資産についても、少額の償却資産には該当しません。

簡易インボイスとインターネット通販

令和5年10月1日に始まるインボイス制度では、適格請求書発行事業者が、インターネット上で日本国内にある商品の販売等を行う場合、原則、買手からの求めに応じてインボイスを交付する義務があります。
適格請求書発行事業者が、不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う事業を行う場合、適格請求書(インボイス)の代わりに、「適格簡易請求書=簡易インボイス」を交付することが認められています。

 


インボイスと簡易インボイスの違い

インボイス制度は、売手が買手に対して正確な消費税率や消費税額などを伝えるための制度で、インボイスに記載すべき内容は、以下のようになっています。
 

①インボイス発行事業者の氏名または名称および登録番号
②取引年月日
③取引内容(軽減税率の対象品目である旨も記載)
④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
⑤税率ごとに区分した消費税額等
⑥書類の交付を受ける事業者の氏名または名称


簡易インボイスは、インボイスより内容を簡易にしたものです。
■「書類の交付を受ける事業者の氏名または名称」の記載が不要
■「消費税額等」「適用税率」いずれかを記載 ※両方記載も可能


また、インボイスというと、一般的には請求書や納品書をイメージする方も多いと思いますが、条件を満たせばレシートや領収書もインボイスとして認められます。

 


簡易インボイスを交付できる事業者

不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う次の事業を行う下記の業種は、インボイス(適格請求書)ではなく、簡易インボイス(適格簡易請求書)を交付することができます。


・小売業
・飲食店業
・タクシー業
・写真業
・旅行業
・不特定多数に対して行う駐車場業
・上記に準ずるそのほかの不特定多数の者を対象にする一定の営業

 


会員登録をした者のみが商品を購入できるネット通販は簡易インボイスを交付できるのか?

会員登録によって取引相手が特定されるため、簡易インボイスの交付に求められる不特定多数の者への資産の譲渡等といえないのではないかとの見方があるようですが、事業自体が不特定多数の者を対象とする小売業に該当すれば簡易インボイスを交付することができます。


【不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業の判断について】

個々の事業の性質により判断しますが、例えば、資産の譲渡等を行う者が資産の譲渡等を行う際に相手方の氏名又は名称等を確認せず、取引条件等をあらかじめ提示して相手方を問わず広く資産の譲渡等を行うことが常態である事業などについては、これに該当します。
 

■消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf#page=40

持続化給付金の自主返還にかかわる税金

昨今、持続化給付金の不正受給問題のニュースが多く流れ、世間を騒がせました。
給付要件を満たさないにも関わらず誤って申請し、自主返還された返納額は、7/21時点で約170億円以上になっているようです。
不正受給は、犯罪とみなされ、罰則として氏名等の公表、加算金や延滞金の支払義務が生じますが、自主返還した場合には、これらの罰則は課せられないとのことです。

 


自主返還に伴う税金について

コロナ禍に減収した事業者支援のための持続化給付金は、課税対象です。
持続化給付金は収入金額として、、該当する所得区分(事業所得・一時所得・雑所得)で、確定申告します。
そして、申請誤りにより、持続化給付金を自主返還した場合、「事業所得」「一時所得・雑所得」それぞれの区分によって税金の取り扱いが異なります。

 

それぞれの取り扱いについて、令和3年分(受給年)と令和4年分(返還年)で考えてみます。

 

■一時所得、雑所得として申告した場合

例:

令和3年に受給した給付金を100万円全額、自主返還した場合、令和3年分の所得金額(100万円)はなかったものとみなし、これに対応する納税額分は「更正の請求」という手続きにより、還付を受けることができます。

 

 

■事業所得として申告した場合

例:
本来80万円しか受給できないところ、申請誤りにより100万円を受給し、差額の20万円を自主返還した場合、返還した金額は令和4年分の必要経費にすることができます。
なお、令和3年分と令和4年分の収支で帳尻が合うことから、「更正の請求」を行う必要はないとのことです。

【更正の請求】

更正の請求とは、税金を間違って多く納めてしまった場合に、税務署へ還付金の請求を行う手続きのことです。税務署が内容を検討し、納め過ぎの税金がある等と認めた場合には、税金が還付されます。 更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内となっています。