女性役員の産休と定期同額給与の臨時改定事由

近年、上場企業では女性役員が増えていることから、役員が出産のために産休を取得するケースも考えられます。
その場合、産休中はこれまで通りの役員としての仕事ができなくなるため、役員報酬を減額したり、一時的に支給を停止したりする場合があるかもしれません。役員報酬を毎月同じ金額で支給することで経費(損金)として認められる定期同額給与とするためには、原則として事業年度の途中で金額を変更しないことが重要です。

 


定期同額給与とは

定期同額給与とは会社が役員(社長や取締役など)に支払う役員報酬のうち、一定の条件を満たせば法人税の計算上、経費(損金)として認められる給与のことです。
会社の従業員の給与は基本的に経費になりますが、役員は自分で自分の給与を決められる立場にあるため、自由に増減できてしまうと、利益操作が可能になってしまいます。
そのため、税法では役員給与を経費(損金)計上できる場合を厳しく制限しています。

 

■定期同額給与として認められる例
・毎月30万円を支給
・毎月50万円を支給
→支給時期と金額が毎回同じであれば、定期同額給与に該当します。


■定期同額給与として認められない例
・特段の理由なく、年度の中途で20万円から50万円に増額する
→年度の途中で自由に金額を変更すると、変更前後で同額を超える部分の給与は経費(損金)として認められません。


なぜ、途中で変更を行うと経費(損金)計上が認められない仕組みになっているのか?

例えば、会社の利益が予想より多く出そうになった場合、役員給与を増やすとします。
すると、その分会社の利益が減少し、支払う法人税を少なくすることが可能になります。
このような利益操作を防ぐため、役員報酬は原則として事業年度中に変更した場合は経費(損金)計上を認めない仕組みになっています。

 


例外として変更が認められるケース

ただし、次のような場合は例外として変更が認められています。

・事業年度開始から3か月を経過する日までに行う変更
・やむを得ない事情(臨時改定事由)による変更
・会社の経営状況が著しく悪化した場合の変更(減額のみ)

 

このうち「臨時改定事由」とは、役員の役職や仕事内容が大きく変わった場合や、それに準ずるやむを得ない事情が生じた場合をいいます。

国税庁のQ&Aでは、役員が病気で入院するなどして、当初予定していた仕事の一部または全部を行えなくなった場合は、この臨時改定事由に該当すると示されています。


■国税庁「役員給与に関するQ&A」Q5
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/qa.pdf


ここでいう「病気で入院したことその他の事由」とあるように、対象は病気だけではありません。
そのため、出産による産休で役員としての職務を十分に行えなくなった場合も、臨時改定事由に当たると考えられます。

例えば、役員が産休に入る際に、担当できる業務が減ることを理由に取締役会で役員報酬の減額を決議した場合や、産休から復帰して以前と同じように職務を行えるようになったため、報酬を元の金額に戻すことを決議した場合は、いずれも臨時改定事由による報酬改定として認められる可能性が高いと考えられます。


なお、役員報酬を変更する際は、株主総会や取締役会の議事録を適切に作成し、変更理由を明確に残しておくことも重要です。

 

インボイス登録日と設備投資のタイミング

消費税の還付は、課税事業者だけが受けられます。
そのため、これまで免税事業者だった人が高額な設備投資をして消費税の還付を受けたい場合は、原則として、その課税期間が始まる前に「課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者になる必要があります。
ただし、インボイス制度の開始に伴う特例として、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間にインボイス登録を行う場合は、「課税事業者選択届出書」を提出しなくても、登録希望日から自動的に課税事業者になることができます。
この場合、登録希望日は申請書を提出した日から15日以降の日を指定します。
実際の登録手続きがその日より後に完了したとしても、税務上は登録希望日に登録されたものとして扱われます。

 


課税事業者と消費税還付

消費税還付は、売上時に預かった消費税よりも、仕入れや経費で支払った消費税の方が多い場合に、その差額を税務署から受け取ることができる仕組みです。


■「原則課税」の適用が必須
消費税の計算方法には「原則課税」と「簡易課税」の2種類があります。還付を受けるためには必ず原則課税を選択していなければなりません。簡易課税が適用されていると多額の設備投資をしても還付は受けられません。


■インボイス制度と還付のタイミング
・課税事業者(インボイス登録前も課税事業者だった場合)
→設備投資を行う課税期間において、原則課税であれば還付を受けられます。

・免税事業者からインボイス登録した場合
→インボイス発行事業者に登録して課税事業者になった場合、登録希望日から課税事業者として扱われます。このため、その期間内に該当する設備投資を行えば、要件を満たすことで消費税の還付が可能です。

 


設備投資のタイミングに要注意

インボイス登録を利用して課税事業者になり、設備投資にかかった消費税の還付を受けようと考えている場合は、設備を購入した日がいつなのかが重要です。

たとえインボイス登録の申請書を提出した後であっても、登録希望日より前に設備を購入した場合、その設備にかかった消費税は還付の対象になりません。


■具体例
9月10日:インボイス登録申請書を提出
9月25日:設備を購入
10月1日:登録希望日(課税事業者になる日)

このケースでは、設備の購入日は9月25日で、課税事業者になる10月1日より前です。
そのため、申請書の提出は済んでいても、設備購入時点ではまだ免税事業者なので、設備購入にかかった消費税の還付は受けられません。
設備投資を予定している免税事業者は、「インボイス登録の申請日」ではなく、「いつ課税事業者になるのか」を確認したうえで購入時期を決めることが大切です。


■商品在庫については例外あり

一方で、商品や材料などの棚卸資産(在庫)については、免税事業者から課税事業者へ変わる際の特別な調整制度があります。
そのため、一定の要件を満たせば、課税事業者となる日の前日において所有する棚卸資産についても、消費税の仕入税額控除を受けることができます。

ただし、その場合は、
・在庫の内容
・数量
・取得時期
などを記載した棚卸表などの書類を保存しておく必要があります。

スマート変更登記

2026年4月1日から、住所や会社所在地が変わったら、不動産の登記も変更しなければならなくなりました。

住所変更などをしてから2年以内に、正当な理由なく変更登記をしなかった場合は、5万円以下の過料(ペナルティ)が科される可能性があります。

そこで利用できるのが、「スマート変更登記」という仕組みです。

 


スマート変更登記とは

スマート変更登記は、あらかじめ簡単な手続きをしておけば、住所変更のたびに自分で登記申請をしなくても、法務局が自動で変更登記をしてくれるサービスです。

これまでは、引っ越しや会社移転のたびに、自分で法務局へ「住所変更登記」を申請する必要がありました。
しかし現在は変更登記が義務化されているため、うっかり放置してしまった場合、ペナルティ対象になる可能性があります。
しかし、スマート変更登記を利用すれば、変更登記のし忘れによる義務違反を防ぐことができます。

 

■制度導入の背景

この制度が導入された背景には、所有者不明土地問題があります。
従来の制度では、引っ越しや結婚などで住所・氏名が変わっても変更登記は任意だったため、多くの人が更新せず放置していました。

・相続したのに登記変更していない
・引っ越したのに住所変更登記していない
・連絡先がわからない

このようなケースが増加したため、災害復旧、空き家対策、道路工事などの公共事業の妨げになる問題が発生しました。


この問題を解決するために、2026年4月1日より住所や氏名の変更から2年以内に変更登記をすることが義務化されたのです。
不動産所有者は、住所や氏名が変わったら2年以内に変更登記をしなければなりません。
対象は、マイホーム、投資用不動産、相続した土地、駐車場、空き地など、登記されている不動産全般です。

 


個人と法人の具体的な利用方法

■個人の場合
①まず、「検索用情報の申出」という手続きを行います。
②すると法務局が、住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)を使って、少なくとも2年に1回、住所変更がないか確認します。
③住所変更が確認されると、法務局から「変更登記をしてよいですか」という確認メールや通知が届き、本人が了承すると、法務局が自動で登記を変更してくれます。


■法人の場合
①法人は、会社法人等番号を不動産登記に登録しておく必要があります。
②すると、会社の本店所在地などが変更された際に、商業登記の情報が不動産登記システムにも連携され、法務局が自動で住所変更登記を行います。
たとえば、
・会社法人等番号を登録した後に、本店所在地が変わった場合
・すでに本店所在地が変わっていて、その後に会社法人等番号を登録した場合
などが対象になります。


【注意点】
海外在住の個人や、会社法人等番号がない法人については、法務局側で住所変更を確認できません。
そのため、住所や所在地が変わった場合は、これまで通り自分で変更登記を申請する必要があります。

GSS(ガバメントソリューションサービス)

国税庁は、税務調査などの仕事でオンラインツールを使う「オンライン調査」を進めています。
すでに一部の国税局では始まっており、今年4月からは全国の国税局などでも順次導入される予定です。
このオンライン調査で使われるのが、政府共通システム「GSS(ガバメントソリューションサービス)」です。
これは、各省庁の職員が共通して使えるパソコン、ネットワーク、セキュリティ環境などをまとめて提供する仕組みです。


■国税庁
税務行政におけるオンラインツールの利用について
https://www.nta.go.jp/about/introduction/torikumi/onlinetool/index.htm

 


GSS(ガバメントソリューションサービス)とは

GSSは、端的に言うと「日本の中央省庁向け共通ITインフラ」 です。
昔は、各省庁がそれぞれ別々にパソコン・メール・ネットワーク・セキュリティを整備しており、様々な問題が発生していました。


・省庁ごとにシステムがバラバラ
・古い環境が残りやすい
・維持費が高い
・テレワークしにくい
・セキュリティレベルに差がある


このような問題解決のため、GSS=共通基盤化が進められ、下記のような仕事環境の改善が期待されています。

■職員が使うPCや設定を標準化
「省庁ごとに別物」ではなく、共通仕様に近づけます


■安全で高速な政府共通ネットワーク
各省庁をまたいだ連携もしやすくなります


■オンライン会議、チャット、ファイル共有など
場所やデバイスにとらわれない働き方とコミュニケーションの最大化が期待できます


■セキュリティ強化
不正アクセス防止、認証管理、監視体制などを共通化

 


GSS(ガバメントソリューションサービス)の目的

GSSが作られた目的は、大きく2つあります。

①テレワークやオンライン会議など、柔軟な働き方をしやすくする

②情報漏えいやサイバー攻撃を防ぐため、セキュリティを強化する


①コロナ禍では、役所の弱点が明白となった

コロナ禍でオンライン会議の需要が急増し、安全で高速な政府共通ネットワークの整備が急務になったことが背景にあります。
民間ではZoomやTeamsで進んだ働き方が、行政では遅れが目立ちました。
・出勤しないと仕事しにくい
・オンライン会議が弱い
・書類文化が強い
・省庁間のデータ連携が遅い


②高度なセキュリティ環境を実現する「ゼロトラストセキュリティ」

昔は、役所の中のネットワークなら安全という前提で環境構築されていましたが、ゼロトラストセキュリティは、「内部だから安全」「外部だから危険」と決めつけず、すべてのアクセスを毎回チェックする仕組みです。
例えば、
・職員がシステムに入るたびに本人確認を行う
・必要最低限の範囲だけアクセスを認める
・利用状況を継続的に監視する

これにより、不正アクセスや内部での情報拡散を防ぎやすくなります。

 


GSS(ガバメントソリューションサービス)で何が変わる?

■例えば、税務調査であれば
昔 :訪問して訪問して資料確認する、対面中心の調査
今後:オンラインで説明、資料はデータ送信する、遠隔での打合せ
など、税務行政のデジタル化が進みます。

■国民にとってのメリットも
・省庁内部の処理効率UPにより、行政手続きが速くなる可能性
・共通システムを共有することで税金の無駄削減
・セキュリティ向上で個人情報が守られる
・働き方改革により、公務員も柔軟に働ける

GSSは見えにくい地味な改革ですが、完成すると生活が少しずつ変わります。

 


GSS(ガバメントソリューションサービス)の課題

各府省庁間の垣根を超え、質の高い行政サービスの提供が実現可能なGSSですが、導入を拡大していくためには、様々な課題をクリアしていく必要があります。

■デジタル人材不足
運用できる人材の確保と育成が重要

■脱・紙文化の難しさ
押印重視・紙=安全であるという固定観念・前例主義との戦い

■大規模システム特有の遅れ
政府ITは調整相手が多く、多数の関係者間での合意形成に至るまでに時間がかかる


また、GSSが導入されたからといって、省庁同士で自由にデータ共有できるわけではありません。
実際にどの情報を共有できるかは、それぞれのルールや方針に基づいて管理されます。

在職老齢年金の基準額の引き上げ

2025年6月に成立した年金制度改革法により、2026年4月から在職老齢年金のルールが変わります。
会社などで働きながら年金を受け取る人について、年金が減らされ始める基準額が「月51万円」から「月65万円」に引き上げられます。

 


在職老齢年金制度とは

65歳以上になると、原則として次の2つの年金を受け取れるようになります。


・老齢基礎年金(国民年金)
・老齢厚生年金(厚生年金)


このうち、働いて給料をもらっている人は、「給料など+老齢厚生年金」の合計額が一定額を超えると、老齢厚生年金の一部が減額される仕組みがあります。
これを在職老齢年金制度といいます。
※減額の対象になるのは老齢厚生年金だけで、老齢基礎年金は減額されません。


■2026年3月までの基準
「給料など+老齢厚生年金」の合計額が月51万円を超えると、超えた分の半分相当の老齢厚生年金が減額(支給停止)されます。

■2026年4月からの新しい基準
2026年4月からは、この基準が月65万円まで引き上げられます。
つまり、これまでより多く働いても、年金が減らされにくくなるということです。

 

【例】
給料:月46万円
老齢厚生年金:月10万円
合計:月56万円

 

 

■2026年3月まで:基準額51万円
56万円-51万円=5万円のオーバー
→オーバーした5万円の半額2万5000円分の老齢厚生年金が減額


■2026年4月から:基準額65万円
合計56万で基準額はオーバーしない
→老齢厚生年金の減額は行われず、満額の10万円を受け取れる


・税制も見直される予定
この制度変更に合わせて、2027年分の所得税から次の見直しが予定されています。
給与所得控除と公的年金等控除を合わせた金額の上限を280万円とする案です。
これは、給与と年金の両方を受け取る人の税負担を調整するための改正とされています。

 


在職老齢年金制度はなぜ作られたのか

在職老齢年金が作られた頃(高度成長期)の社会背景は以下のようなものでした。
・定年:55~60歳
・平均寿命:今より短い
・定年後は基本的に働かない


このように、1965年の導入時の社会背景として、年金は定年後に働けなくなった人の生活費、という考えでした。
よって、高い給与を得ている高齢者に満額の年金を支給することは、保険料を負担している現役世代とのバランス等から不公平であるとされ、所得に応じた調整が導入されました。
これが在職老齢年金制度です。
当時は、「働きながら年金をもらう人」は少数派だったため、そもそもこの制度は少数派の調整のための仕組みだったと言えます。

 


制度見直しの背景

ところが、近年では少子高齢化による人手不足のため、導入時とは逆に、定年後の高齢者の就労が促進されています。
しかし現行の制度のままでは、働いて収入が増えたら年金が減らされてしまうので、働ける人が働かない問題が発生しました。
それを解消し、高齢者にもっと働いてもらうため、51万円から65万円に引き上げる制度の見直しが行われたのです。
これにより、より高い給与を得ながらでも年金を満額受け取りやすくなります。