NISAとロールオーバーについて

2017年に一般NISA口座で購入した株式・投資信託等について、2021年12月末に5年間の非課税期間が満了となります。

NISA(少額投資非課税制度)では、最大5年間の非課税期間が定められており、この期間の売却益、配当金等が非課税となります。
NISA口座で保有されている商品が5年を超えるとき、6年目である翌年のNISA非課税投資枠を使用して商品を移し換えること(ロールオーバー)でNISA口座での非課税期間を延長するか、特定口座などの課税口座に払い出すかを選択することになります。

 


ロールオーバーとは

翌年の一般NISA非課税投資枠に移すことを「ロールオーバー」といいます。

  • 更に5年間、非課税で運用することができます
  • 翌年のNISA非課税投資枠(上限120万円)のうち、ロールオーバーで利用しなかった分だけ、新規で買付をすることができます
  • 非課税期間満了時(年末)の時価合計が120万円を超える場合も、すべてロールオーバーできますが、この場合、非課税投資枠を全て利用したことになるので、一般NISA口座での新規買付はできません

 


ロールオーバーの注意点

  • 一般NISA口座からつみたてNISA口座へのロールオーバーはできません
  • 一般NISA口座とは異なる証券会社等の一般NISA口座へのロールオーバーはできません。ロールオーバーは、買付時と同じ金融機関でのみ行うことができます。

  • ロールオーバー手続きをしない場合は、一般NISA口座での保有商品が課税口座(特定口座または一般口座)に移管され、払出後の売却益や配当金・分配金等は課税対象となります。
  • 課税口座への移管の際、課税口座における取得価額は、非課税期間満了時となる大納会の終値となります。NISA口座で買付した際の取得価額ではないので注意が必要です。
  • ロールオーバーをするには、一般NISA口座を開設している証券会社等に「非課税口座内上場株式等移管依頼書」を提出する必要があります。
    具体的な提出期限は各証券会社等により異なるため、口座を開設している証券会社等に確認しましょう。

使用人兼務役員の昇進と退職金

使用人から役員に昇格するときには、役員専任になる場合と、取締役営業部長というように使用人兼務役員というステップを踏んでから役員選任になる場合があり、それぞれの退職金の支給と損金算入の条件が異なります。

使用人が常務取締役等の役員専任になる場合、支払われる使用人部分の退職給与は、退職給与規程に基づくものであれば、原則、損金算入できます。

一方、使用人が使用人兼務役員に昇進後、さらに役員専任となり、使用人としての職務を有しなくなった場合、使用人部分に対する退職給与は一定の要件を満たさないと損金算入できないとされています。

 


使用人兼務役員とは

使用人兼務役員とは、法人の役員でありながら、部長や課長など、「法人の使用人としての身分」を持ち、常時使用人としての職務に従事している人のことです。
例えば営業部長や工場長が取締役になったが、実際の勤務は以前と変わらず、役職、勤務実態ともに使用人としての色合いが強いような場合は、使用人兼務役員となります。

 

なお、以下のような場合は対象外となります。

「取締役営業担当」や「取締役経理担当」

「〇〇担当」は役員の中での役割分担であり、職制上の役職ではないとされています。

非常勤の場合

使用人兼務役員は常時使用人としての職務に従事していなければならないため、使用人兼務役員に該当しません。

 


損金算入できる要件

①支給対象者が、過去に使用人から使用人兼務役員に昇進した者であること

②使用人兼務役員昇進時に使用人であった期間の退職金の支給をしていないこと

③支給額が、使用人の退職給与規程に基づき、使用人期間と使用人兼務役員期間を通算して、使用人の職務に対する退職給与として計算されていること

 

使用人であった期間に対する退職給与の支給時期は

・使用人兼務役員から役員専任になるときに支給
・退職時に役員部分とあわせて支給

が考えられます。
いずれの支給時期でも要件②を満たすものとして取り扱うことが可能です。

 

【例】
2010年6月に使用人として入社した者が、2020年6月に使用人兼務役員へ昇進後、2022年6月に取締役副社長に就任し、2023年6月に法人を退職(副社長を退任)した場合

 

 

入社時から使用人兼務役員として勤務した期間の12年間(2010年6月~2022年5月末)に対応する使用人部分の退職金を、取締役副社長就任時(2022年6月)又は退職時(2023年6月)に支給することで要件②を満たしています。

 

電子領収書の交付請求

民法改正により、本年9月1日から、紙の受取証書の請求に代えて、電子データ、いわゆる電子領収書の提供を請求することができるようになりました。

 


電子領収書の請求が可能になった背景

インターネット上での電子取引の増加や、ペーパーレス化の推奨、新型コロナの影響による在宅勤務の急増などにより、会社の経費精算で必要な領収書を電子データ(電子領収書)として交付してほしいというニーズがありました。
また、売手側も、新型コロナ感染拡大防止のため、非対面取引が増加する中で、領収書の印刷費や郵送費、交付のための設備や体制の整備等が過度な負担となる場面も出てきつつあるようです。

 

そこで、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」に基づき、民法上これまでは、買手は領収書を書面でしか交付請求できませんでしたが、書面または電子領収書の交付のいずれかを選択して売手に請求できるようになりました。
対個人消費者との取引だけでなく、企業間取引も対象となります。

 


電子領収書のメリット

電子領収書が普及することで、様々なメリットがあると考えられます。
 

買手側のメリット

・環境保護への貢献
・財布が膨らむことによる煩わしさの低減
・紛失の回避
・新しい生活ツールとしての活用(各種アプリとの連携により、家計簿や、購入した食品のカロリーの自動計算等が可能)
・経費精算や確定申告への活用
 

売手側のメリット

・環境保護への貢献
・紙代や印紙代等の経費削減
・レジの混雑緩和
・キャンペーンサイトへの誘導等、販促ツールとしての活用
・購買データ分析によるマーケティングや販売戦略策定への活用
・消費者とのコミュニケーションツールとしての活用(紙レシートのように紙面の大きさの制約がなく、双方向のコミュニケーションが可能)

 


電子領収書の請求ができない例

電子領収書の交付を請求された売手は、それに応じる義務がありますが、体制や設備が整備されていない環境においては、スマートフォンやパソコン等を用いての発行が困難な場合も少なくないと考えられます。
そこで、「売手側に電子領収書を交付するためのシステム等が整備されていない場合」などは、売手に“不相当な負担”があるとして、買手は電子領収書の交付を請求できません。

 


電子領収書を電子インボイスとして交付等も可能に

令和5年10月より消費税のインボイス制度が始まり、電子インボイスが導入されます。
電子領収書に売手の登録番号などインボイスの「記載事項」を記載していれば、売手は電子領収書を電子インボイスとして交付等することができ、買手はその電子領収書を保存することで仕入税額控除を適用できます。

 

■法務省:電子領収書の交付請求に係る「電子的な受取証書(新設された民法第486条第2項関係)についてのQ&A

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00269.html

電子取引制度とペーパーレスFAX

来年1月から開始される改正電子取引制度では、電子取引を行った際、その取引情報を電子データで保存することが義務付けられています。
電子取引制度において、FAXによる取引情報のやり取りが「電子取引」に該当するかどうかは、その機能や使用状況により異なります。

 


電子取引となる場合

電子データの取出し・保存もできる複合機等のファクシミリ機能(いわゆるペーパーレスFAX等を含む)を用いて送受信し、電子データの保存を行う場合には「電子取引」に該当します。


また、パソコンやインターネットの普及により増加した、IP 電話・LAN・インターネットなど、IP通信網を利用したインターネット FAX も、受信した情報を紙に印刷することなく電子データとして保存する場合、「電子取引」に該当します。


検索要件など、電子取引制度の要件を満たした形でその電子データを保存する必要があります。


■検索要件

指定のデータをすぐに確認できるように、以下のすべての機能が求められています。

・取引年月日や取引金額など書類等に応じた主要な記録項目を検索できること
・日付や金額にかかわる記録項目は範囲指定で条件の設定による検索ができること
・2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて条件検索できること

 


書面取引となる場合

書類などの原稿を読み取って相手の機器に送信し、相手側で受信して印刷される従来の一般的なFAXについては、「書面による取引があったものとして取り扱う」とされています。
送信者側も受信者側も、書面により確認及び保存することを前提としており、「書面取引」となります。
 

また、電子データの取出し・保存ができるファクシミリ機能を持った状況であっても、電子データでの保存を行わずに書面への出力が通常となっている場合には「書面取引」となります。電子取には該当しないので注意が必要です。

スキャナ保存制度改正について

令和3年度改正によりスキャナ保存制度の要件が抜本的に緩和され、来年1月から改正制度が開始されます。

 


スキャナ保存制度とは

取引先から受け取った請求書・契約書・領収書等及び、自己が作成したこれらの写し等の国税関係書類を、書面による保存に代わり、一定の要件の下でスキャン文書による保存を認めたものです。
スキャナ保存制度自体は2005年からありますが、これまでは要件が厳しく、導入のハードルが高いのが現状でした。
コロナ禍におけるテレワーク推進・ペーパーレス化を図る目的もあり、大幅な制度改正による要件緩和が行われ、多くの企業にとって、スキャナ保存制度を導入するハードルが大きく下がると思われます。

 


スキャナ保存制度改正のポイント

■税務署長の事前承認制度の廃止

現在はスキャナ保存制度を利用開始する日の3か月前までに作成した承認申請書を、必要書類とともに所轄税務署等に提出し、開始日までに申請の承認を受ける必要がありますが、その申請が不要となります。


■タイムスタンプ要件、検索要件等の緩和

スキャナ読み取りの際の受領者の署名が不要になり、タイムスタンプの付与期間が3日から最長2ヶ月以内になります。
また、検索機能の要件が簡素化され、検索項目が「年月日・金額・取引先」のみとなり、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じる場合には、範囲指定及び項目を組み合わせて条件を設定できる機能の確保が不要となります。

 

■適正事務処理要件の廃止

不正防止の観点から内部統制の一環として、紙段階で改ざんが行われていないかを確認するため、紙の原本とスキャンした画像を突き合せることにより同一性を確認する「相互けん制」が必要でしたが、今回の改正で不要となります。
これにより定期検査に必要だった原本(紙書類)は、スキャナ後にすぐに破棄が可能になります。

 

■不正があった場合の重加算税の加重措置の整備

要件が大幅に緩和されることで、多くの企業で電子データ保存の導入が進むことが想定されます。
適正な保存を担保するための措置として、スキャナ保存が行われた国税関係書類に係る電磁的記録に関して、隠蔽し、又は仮装された事実があった場合には、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が10%加重される措置が整備されます。
そのため、不正や不備を防ぐ対策や措置がこれまで以上に重要になります。