企業版ふるさと納税(人材派遣型)について

国が認定した地方公共団体の地方創生事業に対し企業が寄附を行った場合に、最大で寄附額の9割が軽減される「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)」。
軽減される税額には、一定の人件費相当額を含めることもできます。

 

企業版ふるさと納税とは

企業版ふるさと納税とは、「地方創生応援税制」といい、国が認定した地方公共団体の地方創生の取り組みに対し、企業が寄附を行った場合に、法人税等から税額控除する制度です。
2016年に創設され、2020年4月の税制改正により、寄附額の最大約6割であった税額軽減が、約9割に増加し、企業の実質負担が1割まで圧縮されました。

 

そして、同年10月には、地方創生のさらなる充実・強化を図る目的で、企業版ふるさと納税の“人材派遣型”が創設されました。

なお、税額控除の特例措置の適用期間は、令和6年度末までとなっています。

 


企業版ふるさと納税(人材派遣型)とは

企業版ふるさと納税(人材派遣型)は、専門的知識・ノウハウを有する企業の人材を地方公共団体等へ派遣することで活用できます。

地方公共団体の職員として任用される場合か、地域活性化事業を行う団体等であって、寄附活用事業に関与するものにおいて採用される場合に適用されます。

人材派遣型の対象となる人材については、年齢やキャリアなどの要件は法令等で規定されておらず、企業と地方公共団体との間で、地方公共団体等の職員等として地方創生プロジェクトに従事することが合意されれば、企業が負担する人件費相当額を寄附とみなすことができます。

 

例えば、企業が事業費として1,000万円を地方公共団体のプロジェクトに寄附し、その実施を支援するために従業員(年収500万円)を派遣した場合、人件費相当額を含む事業費への寄附が計1,500万円となることから、最大で約9割に当たる約1,350万円の税額控除等が可能となります。

企業版ふるさと納税(人材派遣型)のメリット
・寄附による金銭的な支援のみならず、事業の企画・実施に派遣人材が参画し、企業のノウハウの活用による地域貢献がしやすくなる

・人材育成の機会として活用することができる

インボイス事業者公表サイトでの個人事業者の公表事項について

令和5年10月のインボイス制度導入まで1年半を切りました。
インボイスを発行できる適格請求書発行事業者(登録事業者)の登録件数は未だ多くないようですが、適格請求書発行事業者公表サイトでは、登録された事業者を検索することができます。

 


適格請求書発行事業者公表サイトとは

インボイス制度が開始される令和5年10月1日以後に取引先から受領した請求書等に記載されている番号が「登録番号」であるか、また、その記載された「登録番号」が取引時点において有効なものか(適格請求書発行事業者が登録の取消等を受けていないか)を確認するためのサイトです。

https://www.invoice-kohyo.nta.go.jp/

 


適格請求書発行事業者公表サイトでの公表事項について

適格請求書発行事業者公表サイトでは、適格請求書発行事業者登録を行っている事業者の情報を公表しています。
公表内容は、法人と個人事業者で異なります。
 

■法人
・登録番号
・登録年月日
・法人名
・本店又は主たる事務所の所在地
 

■個人事業者
・登録番号
・登録年月日
・氏名
 

上記のように、個人事業者の公表事項には、主たる屋号や主たる事務所の所在地は含まれていません。
氏名、登録年月日、登録番号のみとなりますが、例えば同姓同名の個人事業主がいた場合、混乱する可能性もあります。
また、取引先と屋号で取引している場合、屋号を公表している方が確認しやすいということもあります。


そこで、個人事業者が屋号や主たる事務所の所在地の追加公表を希望する場合、「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」を提出する必要があります。
インボイスの登録申請書と同時に提出した場合は、最初から追加された状態で公表されます。

 


買手側の帳簿記載名は公表サイト上に合わせる必要はなし

インボイスの交付を受けた者(買手)が、仕入税額控除の適用を受けるため、保存すべき帳簿に記載する「売手の氏名又は主たる屋号」は、売手が個人事業者の場合、公表サイト上の記載に合わせる必要はないとのことです。
 

例えば、公表サイトでは、売手の氏名のみの公表(主たる屋号が公表されていない)のみで、交付されたインボイスには主たる屋号のみが記載されていた場合、帳簿には氏名又は主たる屋号のいずれか一方を記載すればよいとされています。

事業復活支援金の収益計上時期の取扱いについて

新型コロナウイルス感染症の影響で売上高が一定割合減少する中小法人・個人事業者向けに、中小企業庁が申請を受け付けている「事業復活支援金」の期限は、2022年5月31日までとなっています。
最大250万円が支給される「事業復活支援金」ですが、その収益計上時期は、支給決定日の属する事業年度となっています。

 


収益計上時期の基本的な考え方

原則として、国や地方公共団体から交付される補助金や助成金等はその交付が決定された日に、収入すべき権利が確定すると考えられますので、その補助金や助成金等の交付決定がされた日の属する事業年度の収益として計上することとなります。
ただし、その補助金や助成金等に経費補填の性質がある場合、取り扱いが異なってきます。

経費補填の性質について
あらかじめ所定の手続きを経て経費が支出される場合(例:雇用調整助成金など)は、その経費が発生した事業年度中に助成金等の交付決定がされていないとしても、その経費と助成金等の収益が対応するように、その助成金等の収益計上時期はその経費が発生した日の属する事業年度として取り扱うこととしています。

「事業復活支援金」の利益計上時期は、経費補填の性質がないため、原則通り、支給決定日の属する事業年度となっています。

 


支給決定日について

事業復活支援金では、交付の際に送付される給付通知書に“支給決定日”の記載がないため、“支給決定日”は、状況に合わせて合理的に判断していくことになります。
 

■入金前に給付通知書が届いた場合
入金前に給付通知書が申請事業者に到着した場合、少なくとも到着日前までに事務局による支給決定は行われたと考えられることから、通知書の到着日を支給決定日として扱うことになるようです。
 

■入金後に給付通知書が届いた場合
給付通知書の到着より先に入金があった場合、少なくとも入金日前までには支給決定が行われたと考えられることから、入金日を支給決定日として扱ってよいとのことです。
 

なお、事業復活支援金は、個人事業者も申請できます。
所得区分は事業所得等とされ、収入計上時期は法人税と同様に“支給決定日”の属する年となっています。

電子取引の交付側の保存義務について

令和4年1月1日から改正電子帳簿保存法がスタートしましたが、メール等の電子取引に係る取引情報の電子データは、令和4年度改正の宥恕措置により、令和5年12月31日までの2年間は、申請せずに書面での保存も認められます。
令和6年1月1日からは書面保存が認められないため、事業者はそれまでに電子取引の電子データ保存の対応を準備しておく必要があります。
また、受領側だけでなく、交付側にもその保存義務が課されます。
たとえ押印した請求書等の紙を自社の控え用として保存していても、それをPDF等データに変換して、取引先に送信している場合には、そのPDF等データを保存する必要があります。

 


電子取引における取引情報とは

電子取引とは、「取引情報の授受を電磁的方式により行う取引」とされており、「取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書…その他これらに準ずる書類に通常記載される事項」とされています。
よって、受領した書類だけでなく、交付する書類に記載される事項も取引情報に含まれますので、電子取引で取引情報に係る電子データを受け取る側(受領した電子データ)だけでなく、交付する側(交付した電子データ)にも保存の義務が課せられています。

 


取引情報に係る電子データとは

保存対象となる取引情報に係る電子データとは、簡単にいうと、「紙でやりとりしていた際に保存が必要な情報が含まれる電子データ」とされています。
具体的には、請求書、領収書、契約書などの電子データが該当します。
また、メール本文に請求書等の記載事項が記されている場合は、メール自体が保存対象となります。
 

ExcelやWordなどのソフトで作成した請求書、領収書、契約書等を印刷し押印した後に、PDF等にして取引先にメール送信することもあるかと思います。
この場合、メール等で取引情報をデータ送信しているため、「電子取引」に該当し、PDF等の保存が必要となりますが、PDF化前の印刷した紙については、保存義務はありません。

コロナ禍により一時帰国した海外赴任者の給与の取扱いについて

新型コロナウイルスの世界的な蔓延の影響で、日本に一時帰国している海外子会社社員の非居住者が、赴任地国へ戻れず、日本滞在日数が183日、さらには1年を超えてしまう事態もあるのではないでしょうか。

日本滞在日数が183日を超え「短期滞在者免税」の対象外になると、給与のうち日本勤務分が日本での課税対象になります。
また、日本滞在日数が1年を超えると「非居住者」から「日本の居住者」となり、国内源泉所得だけでなく国外源泉所得についても課税対象となり、確定申告義務が生じます。

 


居住者・非居住者とは

居住者

・日本国内に住所があるか又は現在まで引き続いて1年以上居所がある個人
・国内源泉所得だけでなく国外源泉所得についても課税対象
・税率は累進税率

 

非居住者
・居住者以外の個人
・国内源泉所得のみが課税対象
・税率は20.42%

■国税庁:非居住者等に対する源泉徴収のしくみ

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2885.htm

 

非居住者である個人の方であっても、日本国内において行う勤務で得た給与については、原則として日本で課税対象とされます。

ただし、日本との間で租税条約を締結している国の居住者が、日本で短期間の勤務を行なう場合は、一定の要件を満たすことにより、原則的に日本での課税が免除されます。

これを一般に短期滞在者免税といいます。

 


短期滞在者免税とは

例えば、アメリカ法人に勤務する個人(米国税法上の居住者)が来日して業務を行う場合に、以下の3要件を満たせば、日米租税条約上の短期滞在者免税の適用が可能です。

 

1.いずれの12カ月の期間においても日本国内に滞在する期間が合計183日を超えないこと

2.給与が日本の居住者でない雇用者等から支払われる

3.給与がアメリカ法人の日本支店等の恒久的施設によって負担されていない

 

つまり、日本の滞在期間が183日以内で、給与がアメリカ法人から直接支払われ、さらにその給与がアメリカ法人の日本支店等(支店等がある場合)に負担されないのであれば、短期滞在者免税が適用されます。

 

今までは、出張等で来日する機会が多い非居住者であっても、この183日ルールがあることにより日本勤務分について日本で課税されるケースは多くありませんでした。

 

間もなく確定申告期の時期となりますが、一時帰国者については居住者・非居住者の判定、短期滞在者免税の判定と様々な点で注意が必要です。