テレワークにおける交通費の取り扱い

新型コロナウイルスの影響や、働き方の多様化を推進する観点から、テレワークを導入する企業も多いのではないでしょうか。
そして、テレワーク導入にあたり、これまで給与として支給していた通勤手当を廃止し、出社時にかかった交通費を実費精算に切り替えているケースもあるかと思います。


テレワークの従業員の交通費について、一時的に出社する際の電車代等が、社会保険料の算定基礎となる「報酬」に該当するか否かは、労働契約上の労務の提供地によって異なってきます。

 

 


社会保険の報酬について

社会保険料は、1か月に支給された「報酬」を一定の幅(等級)で区分された標準報酬月額によって決まります。


ここでの「報酬」とは、名称を問わず従業員が労働の対償として受け取るもので、原則出社の従業員に支給する定期代やガソリン代などの通勤手当は報酬に含まれます。


一方で、出張旅費などは、本来事業主が負担すべきものを従業員が立て替え、その実費弁償的なものであり、労働の対償ではないため、報酬には含まれません。
 

■標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.files/jireisyu.pdf

 


交通費の取り扱いは、労働契約上の労務の提供地によって異なる

原則テレワークをする従業員が、一時的な出社で支出した電車代等は、労働契約上の労務の提供地が、事業所か自宅かによって「報酬」の該当性が異なります。


【事業所の場合】
自宅から事業所に出社するためにかかった電車代などの費用は、原則として通勤手当として「報酬」に含まれます


【自宅の場合】
業務命令により事業所に一時的に出社し、その移動にかかった費用を会社が負担した場合、出張旅費と同様、原則として実費弁償と認められ、「報酬」には含まれません


テレワークを導入する企業が、社会保険料の算定において従業員の電車代等を報酬に含めずに取り扱うには、従業員の労働契約上の労務の提供地を見直すことが求められます。
また、テレワークの導入に伴い、支給されていた通勤手当が支払われなくなる等の固定的賃金に関する変動があった場合には、社会保険の随時改定の対象となります。