スキマバイトも賃上げ促進税制の対象に

空いた時間や隙間時間などの短時間で行える「スキマバイト」が、新しい働き方として注目を集めています。
人材不足を短期間で補えることから、アプリ経由でギグワーカー(スキマワーカー)を雇用している企業も増加しているようです。
短時間・短期的な仕事が多いイメージですが、賃金台帳に記載されているギグワーカーであれば、賃上げ促進税制における「国内雇用者」に該当するようです。

 


国内雇用者とは

企業や個人事業主に雇われており、国内の事業所で作成された賃金台帳に記載された労働者を指します。
役員は対象外となりますが、賃金台帳に記載されていれば、パートやアルバイト、日雇い労働者も国内雇用者となります。
 

■国内雇用者に含まれる範囲

・正社員
 フルタイムで勤務し、安定した雇用契約を結んでいる人。

・契約社員・派遣社員
 期限付きの契約で雇用されている人

・パート・アルバイト
 短時間勤務や特定の条件で働く人

・日雇い労働者
 日々雇用契約を結んで働く人

・外国人労働者
 日本国内で合法的に働いている外国人(技能実習生、特定技能労働者など)

 


賃上げ促進税制とは

賃上げ促進税制とは、事業主が従業員の給与を前年度より一定以上引き上げた場合に、引き上げた額の一部を法人税から控除できる仕組みです。
企業が積極的に賃金引き上げを行うことを促進し、労働者の所得向上と経済の活性化を図ることを目的としています。

【賃上げ促進税制のメリット】
この制度の活用により、企業は税負担を軽減しつつ、従業員のモチベーション向上や人材確保も期待できます。

・企業の税負担軽減
賃上げを実施し、一定の条件を満たせば、法人税の控除を受けられるため、人件費のコスト増加を抑えることができます。

・従業員のモチベーション向上
従業員の所得が増えることで、生活水準だけでなく、仕事に対するモチベーションや生産性の向上にもつながります。

・企業のイメージアップをはかる
賃上げを行うことで、「従業員を大切にする企業」として企業イメージが向上し、人材の確保や、優秀な人材の流出防止も期待できます。

・経済全体への効果
給与が増加すれば消費が活発となり、経済全体の成長が促進されます。

 


賃金台帳への記載でギグワーカーも賃上げ促進税制の対象に

賃金台帳とは、事業主が労働者に対して支払う賃金の詳細を記録した帳簿のことです。
日本では労働基準法に基づき、すべての事業主に対して賃金台帳の作成・保存が義務付けられています。
労働者の賃金額やその賃金額の計算の基礎となる事項などが記載等されていれば基本的に、法定の様式は決まっていません。


ギグワーカーをスキマバイトのアプリ経由で雇用した場合、その情報はアプリの運営会社から企業側に対して、賃金額等の所定の事項が記載された明細書が発行されます。
その明細書の内容を、自社の賃金台帳に記載することで、そのギグワーカーは国内雇用者に該当するとのことです。

スマホ用電子証明書

2016年1月にマイナンバーカードの交付が開始され、2024年11月末の時点で、保有枚数率は全国で75%を超えている一方で、保有している人の携行率は46%となっており、定着するに至っていないのが実情のようです。
マイナンバーカードは、住民票の写しなどの公的な証明書の取得や確定申告、健康保険証、身分証明書として利用できます。
通常は、これらのサービスを利用するには、マイナンバーが記載された顔写真付きのカードの持参が必要ですが、一部の行政サービスでは、マイナンバーカードの代わりに、スマホ用電子証明を利用することが可能になりました。


■総務省
マイナンバーカード交付状況について
https://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/kofujokyo.html

 


スマホ用電子証明とは

スマホ用電子証明書とは、2023年年5月から開始したスマートフォン向けの公的個人認証サービスです。
スマートフォンへ電子証明書機能を搭載することで、マイナンバーカードを持ち歩くことなくスマートフォンだけで様々なマイナンバーカード関連サービスの利用、申し込みが行えます。


先に書いた、低い携行率からも伺えるように、マイナンバーカードを自宅で貴重品として保管している人も、スマートフォンだけでマイナンバーのサービスを利用できるようになります。


スマホ用電子証明の気になる安全性ですが、機微な個人情報はスマートフォン内に記録されない、不正に情報を盗取しようとする各種手法に対し、自動的に記録情報を消去する機能等の対抗措置の実施など、暗号技術やさまざまなセキュリティ対策が施されているようです。

 


スマホ用電子証明書が利用可能なサービス

現在、スマホ用電子証明書が利用可能なサービスには下記のようなものがあります。


●子育て支援、引越しの手続き
●薬剤・健診情報、母子健康手帳の自己情報の閲覧
●銀行・証券の口座開設、携帯電話申込、キャッシュレス決済申し込みなど、民間のオンラインサービス
●住民票の写しをはじめとする市区町村の各種証明書のコンビニ交付


また、今後開始される予定のサービスには次のようなものがあります。


●e-Taxの確定申告(2025年1月より)
●健康保険証


■デジタル庁
スマホ用電子証明書搭載サービス
https://www.digital.go.jp/policies/mynumber/smartphone-certification
 


搭載方法

スマホ用電子証明書を搭載するには、マイナポータルアプリから申し込みます。
マイナンバーカード用署名用電子証明書のパスワードの入力、マイナンバーカードの読み取り、スマホ用電子証明書のパスワードの設定等を行い申請します。


2024年12月6日時点で、スマホ用電子証明書を搭載できる対象端末は、Androidのみで約350端末となっており、2025年以降も端末の種類は増えていくようです。
また、今後リリース予定のiPhoneにもマイナンバーカード機能が実装されるとのことです。

インボイス発行事業者の相続

インボイス発行事業者の方が亡くなり、インボイス登録を受けていない相続人が事業を承継した場合、インボイス発行事業者としての地位や登録番号は自動的に引き継がれるのでしょうか。
答えはNOです。
しかし、一定の期間を「みなし登録期間」とし、相続人をインボイス発行事業者とみなす措置が設けられており、この間、一時的に相続人は被相続人の登録番号でインボイスを発行することが可能となります。

 


インボイス発行事業者として事業を継続するために必要な手続き

相続人は、「登録申請書」および「適格請求書発行事業者の死亡届出書」を税務署に提出する必要があります。

 

■消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A
問 15
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf

 

 


インボイスみなし登録期間

相続人が一時的に、被相続人の登録番号でインボイスを発行することが可能となる、みなし登録期間が終了するのは、
・被相続人が亡くなった日の翌日から4ヶ月を経過した日
・相続人が登録申請をした日の翌日

のいずれか早い日となります。


つまり、この「みなし登録期間中」に、遅くとも相続開始から4か月以内に登録申請が必要となります。
みなし登録期間を経過すると、登録申請を行わない限りインボイスの発行が出来なくなるため、インボイス発行事業者として事業を継続する場合には、忘れないように注意が必要です。


なお、日本税理士会連合会は、令和7年度税制改正に関する建議書で、相続から4か月以内に承継人が決定することは少なく相続税の申告期限(10 カ月以内)を迎える頃に決定することが一般的であることを理由に、「被相続人のインボイスみなし登録期間を、相続税の法定申告期限までとすること」としています。


■令和7年度税制改正に関する建議書
24.被相続人のインボイスみなし登録期間を、相続税の法定申告期限までとすること。
https://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/whatsnew/doc/kengisyo-R7.pdf

出張旅費等特例

インボイス制度では、帳簿とインボイスの保存が仕入税額控除の要件ですが、会社が従業員に支給する出張旅費、宿泊費、日当などの経費において、通常必要であると認められる部分の金額については、帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能となる「出張旅費等特例」があります。
出張時の公共交通機関の利用など、インボイスの交付が難しい場面もあるかと思いますが、この特例によって、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。

 


出張旅費等特例とは

従業員等に支給する出張旅費、宿泊費、日当等(以下「出張旅費等」という。)のうち、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額については、帳簿のみの保存による仕入税額控除が可能となります。
また、出張費に関する社内規程や基準の有無、概算払いによるものか実費精算によるものかにかかわらず、通常必要と認められる部分であれば、出張旅費特例の対象となります。


■インボイス制度における特例②(出張旅費等特例)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0024003-138.pdf

 


特例を受けるための帳簿記載要件

出張旅費等特例の対象となる取引は、インボイスの保存は不要ですが、以下の事項を帳簿に記載する必要があります。

 

・相手方の氏名または名称
・取引年月日
・取引内容(軽減税率対象の場合、その旨)
・税率の異なるごとに区分した支払対価の額
・摘要欄に特例の適用がある旨の記載


摘要欄への記載以外は、通常通りの帳簿記載です。
特例の適用について、忘れないように摘要欄へ追記しましょう。

 


出張旅費等にかかる適用税率


社内規程に基づいて日当(標準税率10%)を支給した際に、その日当を飲食店等での食事(標準税率10%)ではなく、例えばコンビニで飲食料品を購入(軽減税率8%)した場合、適用税率の調整はどのように行えば良いでしょうか。

会社が支給した日当は、企業は飲食料品の譲渡の対象として支出するものではないため、軽減税率の適用対象となりません。
しかし、従業員が支払った実費については、受領した領収書に基づいて適用税率を判定することになり、軽減税率の対象となります。


■消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)
(日当等の取扱い)問37
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/03-01.pdf

 


出張旅費以外に、帳簿保存のみで仕入税額控除が認められる取引の例

出張旅費以外にも、次のような取引については一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められることとなっています。
 

・適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送

・適格請求書の記載事項(取引年月日を除く)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(上記の公共交通機関取引を除く)

・古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚卸資産に該当するものに限る)の購入

・質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限る)の取得

・宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限る)の購入

・適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当するものに限る)の購入

・適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等

・適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限る)

食事の現物支給と課税

最近の食料品や光熱費などの急激な物価上昇に対して、従業員の生活を支援するために、ランチ代を補助する企業が増加しているようです。
福利厚生として支給する昼食が、一定の要件を満たす「食事の現物支給」であれば、非課税となります。

 


現物支給とは

従業員への給与は金銭支給が原則ですが、他にも住居や食事など、次に掲げるような物または権利、その他の経済的利益として支給されることがあります。
 

①物品その他の資産を無償又は低い価額により譲渡したことによる経済的利益

②土地、家屋、金銭その他の資産を無償又は低い対価により貸し付けたことによる経済的利益

③福利厚生施設の利用など②以外の用役を無償又は低い対価により提供したことによる経済的利益

④個人的債務を免除又は負担したことによる経済的利益


【代表的な現物支給の例】

・通勤定期券
・記念品
・食事、食事代の補助
・家賃補助や社宅
・ユニフォーム
・商品券・カタログギフト
・人間ドックの会社負担
・社員旅行費用
・会社の商品・製品・値引き販売
・慶弔費用(見舞金や香典、ご祝儀)

など、様々なものが対象として考えられます。


現物支給には、
①業務遂行のため必要で支給されるもの
②換金性に欠けるもの
③その評価が困難なもの
④受給者側に物品などの選択肢が無いもの など
金銭による給与とは異なる性質があり、また、政策上特別の配慮を要するものなどもあるため、特定の現物給与は、課税上、金銭の給与とは異なった特別の取り扱いがあります。


■No.2508 給与所得となるもの
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2508.htm

 


現物支給の昼食が非課税になる要件

従業員に対して食事を支給する際に、以下の2点を満たした場合、非課税となります。


・従業員が食事代の半分以上を負担している
・会社の補助額が1か月あたり税抜3,500円以下である


気を付ける点として、この非課税が適用されるのは、弁当等を現物支給する場合に限られています。
従業員が飲食店で食事をし、実費精算した場合には金銭支給となるため、現物支給とはならず、課税対象となります。
※ただし、会社が特定の店と契約しており、従業員の食事代を店に支払う場合には、現物支給として認められ、非課税として良いとされています。


■使用者が使用人等に対し食事代として金銭を支給した場合
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/44.htm

 

 


その他の非課税になる現物支給の例

食事以外にも、非課税となる現物支給は下記のような例があります。


・1カ月150,000円までの通勤用定期乗車券(合理的な経路及び方法で住居と就業場所を往復するために使用する場合に限る)
・処分見込価額による評価額が10,000円以下の創業記念品や永年勤続表彰記念品
・会社の業務を行うために直接必要な研修旅行
・旅行期間が4泊5日(海外旅行の場合は現地滞在日数)以内で、かつ、社員の50%以上が参加している社員旅 など


なお、残業または宿日直を行う際に支給する食事は、無料(従業員の負担がゼロ)で支給しても、課税しなくても良いことになっています。