出張旅費等特例

インボイス制度では、帳簿とインボイスの保存が仕入税額控除の要件ですが、会社が従業員に支給する出張旅費、宿泊費、日当などの経費において、通常必要であると認められる部分の金額については、帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能となる「出張旅費等特例」があります。
出張時の公共交通機関の利用など、インボイスの交付が難しい場面もあるかと思いますが、この特例によって、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。

 


出張旅費等特例とは

従業員等に支給する出張旅費、宿泊費、日当等(以下「出張旅費等」という。)のうち、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額については、帳簿のみの保存による仕入税額控除が可能となります。
また、出張費に関する社内規程や基準の有無、概算払いによるものか実費精算によるものかにかかわらず、通常必要と認められる部分であれば、出張旅費特例の対象となります。


■インボイス制度における特例②(出張旅費等特例)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0024003-138.pdf

 


特例を受けるための帳簿記載要件

出張旅費等特例の対象となる取引は、インボイスの保存は不要ですが、以下の事項を帳簿に記載する必要があります。

 

・相手方の氏名または名称
・取引年月日
・取引内容(軽減税率対象の場合、その旨)
・税率の異なるごとに区分した支払対価の額
・摘要欄に特例の適用がある旨の記載


摘要欄への記載以外は、通常通りの帳簿記載です。
特例の適用について、忘れないように摘要欄へ追記しましょう。

 


出張旅費等にかかる適用税率


社内規程に基づいて日当(標準税率10%)を支給した際に、その日当を飲食店等での食事(標準税率10%)ではなく、例えばコンビニで飲食料品を購入(軽減税率8%)した場合、適用税率の調整はどのように行えば良いでしょうか。

会社が支給した日当は、企業は飲食料品の譲渡の対象として支出するものではないため、軽減税率の適用対象となりません。
しかし、従業員が支払った実費については、受領した領収書に基づいて適用税率を判定することになり、軽減税率の対象となります。


■消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)
(日当等の取扱い)問37
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/03-01.pdf

 


出張旅費以外に、帳簿保存のみで仕入税額控除が認められる取引の例

出張旅費以外にも、次のような取引については一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められることとなっています。
 

・適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送

・適格請求書の記載事項(取引年月日を除く)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(上記の公共交通機関取引を除く)

・古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚卸資産に該当するものに限る)の購入

・質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限る)の取得

・宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限る)の購入

・適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当するものに限る)の購入

・適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等

・適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限る)