公益認定とみなし寄附金制度について

公益法人等(公益財団法人・公益社団法人・学校法人・社会福祉法人・認定NPO 法人など)は、収益事業部門から公益目的事業部門へ金銭その他の資産を内部支出することで、「みなし寄付金」の適用を受け、支出した金額については寄付金とみなし、損金算入限度額の範囲内で損金算入が認められています。

 


みなし寄附金とは

同じ公益法人等の内部間の取引であっても、収益事業(法人税法上34業種)から公益目的事業(非収益事業)へ金銭等の支出をした場合に、その金額を収益事業に係る寄付金の額とみなし、一定の計算のもと、所得の額を圧縮することができます。

 

損金算入限度額は、所得金額の50%あるいは公益法人特別限度額(学校法人、社会福法人、認定NPO法人は年200万円)のどちらか多い方の金額と定められています。

 

みなし寄附金を適用できる公益法人は“公益認定”を受けた公益財団(社団)法人に限られ、税制上優遇される非営利型の一般財団(社団)法人であっても対象外です。

 


公益認定とは

公益認定とは、不特定多数の者の利益増進に資する公益目的事業を主として行うなどの一定の基準を満たすとして、内閣総理大臣又は都道府県知事から受ける認定のことで、一般社団・一般財団法人が公益認定を受けて公益社団・公益財団法人になることができます。

 

公益法人になるメリットは「税制上の優遇がある」「社会的な信用度が高い」などが挙げられます。

例えば、公益認定を受けると、法人税が非課税となる所得の範囲が拡大します。通常、物品販売業や不動産販売業など34の収益事業から生じた所得は課税対象となりますが、公益財団(社団)法人は、公益目的事業により生じた所得であれば、前述の34事業に該当する場合であっても非課税となります。

 

その一方、デメリットは「事業活動の範囲が制限される」「立ち入り検査など行政庁によるチェックを継続的に受けなければならない」などがあります。

 

なお、令和3年4月1日支出分からみなし寄附金の適用に制限が設けられました。収益事業による所得を非収益事業の所得として不正に経理した場合には、その金額がみなし寄附金から除外されます。

連結納税制度からグループ通算制度への移行

令和4年4月1日以後開始事業年度から、連結納税制度を廃止し、グループ通算制度へ移行されることになりました。

 


グループ通算制度への移行に伴う主な変更点

■申告・納税が個別に
連結納税制度では、親会社と子会社、孫会社などの100%の支配関係がある法人のグループを一つの法人とみなして、親法人が代表して申告・納税していたところ、グループ通算制度においてはグループ内の各法人の所得金額を通算しますが、対象法人ごとに個別に申告・納税します。

 

■修正・更生も個別に
税務調査が一社でも入り修正・更正があった際に行われていたグループ全体に対する修正手続き・再計算についても、移行後は原則個別に行うことになり、従来よりも事務負担は軽減されることが見込まれます。

 

■電子申告が義務化
連結親法人の資本金が1億円以下であれば電子申告は任意でしたが、グループ通算制度では、法人税等の申告について電子申告義務が課されます。

 


グループ通算制度へ移行しない場合

グループ通算制度適用開始時に連結納税制度を採用している連結グループは、自動的にグループ通算制度へ移行しますが、連結親法人が令和4年4月1日以後最初に開始する事業年度開始日の前日までにグループ通算制度へ移行しない旨の届出書を出せば、連結納税から単体納税に移行することが可能です。
連結納税制度は、一度開始したらやむを得ない事情がなければ取りやめることができませんでしたが、今回のグループ通算制度への移行時に限り、届出書を提出するだけで単体納税に戻ることができます。

 

この届出書を提出した場合は、令和4年4月1日以後最初に開始する事業年度から単体納税制度を適用して申告することになります。
そして、一旦適用を取りやめると、5年間は再適用の承認が受けられないことになっています。

 

また、連結納税から単体納税に戻った法人について,最後の連結事業年度の終了日の翌日から5年を経過していない法人は,“グループ通算制度を取りやめてから5年を経過していない法人”と『みなす』という経過措置があるため、今回のグループ通算制度への移行時に、グループ通算制度へ移行しない旨の届出書を提出した法人については、5年間はグループ通算制度適用の承認が受けられないことに注意が必要です。

社内提案報奨金と永年勤続表彰

新型コロナウイルスの影響による業績不振の企業が多い中、新商品販売などで業績を回復した企業もあるかと思います。
新商品の企画や、事務や作業などの業務改善、製品の品質改善、経費の節約等につながるアイデアに対し、報奨金を出す社内提案報奨制度の所得区分は、その功労者の「通常の職務」であるかどうかで異なってきます。

 


社内提案報奨金の所得区分

支払う会社側は、「福利厚生費」として損金算入にすることができますが、従業員側の税務上の取扱いは、その提案等が「通常の職務の範囲内か否か」に応じ、次のように分かれます。

※この取扱いは、提案された工夫、考案等が特許等を受けるまでに至らない程度のものの場合となります。


■通常の職務の範囲内である場合

給与所得となり、源泉徴収が必要


■通常の職務の範囲外である場合で、一時に支給されるもの

一時所得となり、源泉徴収が不要


■通常の職務の範囲外である場合で、継続的に支給されるもの

雑所得となり、源泉徴収が不要

※継続的に支給されるとは、例えば、1回の提案について何度も報奨金が貰える、1万個売り上げるごとに支給するなど、複数回に渡る継続的な支給のことをいいます。

 


永年勤続表彰

また、代表的な社内表彰制度である永年勤続表彰で支給する記念品等は、次の要件のいずれも満たす場合には、課税されないことになっています。


1.その人の勤続年数や地位などに照らして、社会一般的にみて相当な金額以内であること

2.勤続年数が、おおむね10年以上である人を対象としていること

3.同じ従業員を2回以上表彰する時は、以前に表彰した時から、おおむね5年以上の間隔が空いていること


しかし、もし現金支給すると、従業員への「給与手当」扱いとなり、課税されますので注意が必要です。
なお、換金性の高い商品券なども現金同様、給与手当として課税されます。

カーポートの耐用年数の短縮

店舗や事務所などの駐車場に設置されている屋根付きの「カーポート(簡易車庫)」。このカーポートを減価償却する際、耐用年数は何年になるのでしょうか。

カーポート等の減価償却資産が、利用可能な年数を耐用年数といいます。耐用年数は法令上で定められており、国税庁ホームページの耐用年数表で確認できます。

 


カーポートの耐用年数はどのくらい?

耐用年数表に「カーポート」という名称では、耐用年数は掲載されていません。
カーポートの場合、その構造等に基づき、「構築物」の「金属造のもの(前掲のものを除く。)」の「その他のもの」に該当し、45年の耐用年数を使用することになりますが、カーポートの耐用年数としては、長いのではないでしょうか。

 


耐用年数の短縮制度とは

減価償却資産の耐用年数は、標準的な資産を対象に、通常の使用条件で利用できる期間を基に定められていますが、その耐用年数で減価償却費を計算したのでは実態に合わないこともあります。


このため、資産の使用可能期間が法定耐用年数より著しく短いこと(おおむね10%以上短くなること)などの一定要件を満たせば、実際の使用可能期間に基づく年数で減価償却できる「耐用年数の短縮制度」があります。
税務署に「耐用年数の短縮の承認申請書」等を提出すれば、減価償却設備の耐用年数を短縮できますので、その分、年間の損金計上可能額が増えることになります。

 


耐用年数45年から15年に短縮

物理的にカーポートを使用できる期間は「45年」よりかなり短いことが考えられますので、耐用年数の短縮制度を利用することで、構造が近い「露天式立体駐車設備」と同じ「15年」の耐用年数に短縮が認められることもあります。


または、税務署長の確認を受け、類似の特掲されている耐用年数を採用する方式により「15年」の耐用年数を適用することも認められているようです。


耐用年数が短縮できると早期の償却が可能となります。
該当しそうな固定資産がある場合にはご検討ください。

助成金等の受領と消費税の返還

助成金等とは、一定の条件を満たすことで国や自治体から事業者へ支給される資金です。
融資とは異なり、返済の必要がないため、企業活動にはとても有益な制度です。
雇用関係の助成金や、研究開発型の補助金などがあり、条件を満たしていれば複数の助成金等を利用することも可能です。

 


助成金等には消費税分の返還が必要になることがあります

助成金等の支給額には消費税は課されませんが、その助成金等を受領して行う固定資産等の購入は「課税」取引となり、その消費税の返還が必要になることがあります。

助成金等の中には、消費税相当額を含めて支給されるものがあり、こうしたタイプの助成金等を受領した際は、消費税の確定申告後、その助成金等を支給してくれた自治体等へ消費税相当額の返還をしなければなりません。

 

例えば、
助成金110万円全額で機械を購入した場合、110万円のうち10万円は消費税に該当します。
この機械を購入する際に支払った消費税10万円は会社が税務署へ消費税を納める際に差し引いて納税となるため、実質会社としての消費税負担は生じないことになります。
対して助成金として受領した110万円については消費税が課されないため、消費税の納税を行う必要がありません。
これでは国や自治体などから、10万円分の消費税の還付を受けたことと同義になってしまいます。
よって、助成金として受領した110万円のうち、消費税分にあたる10万円を返還する必要があるのです。

 


返還する消費税の税務処理について

●仕入控除税額が確定するのが消費税の確定申告時である

●法人税の取扱いで、前期の取引に係る損失が当期に生じた場合、前期に遡っての修正は不要とされている(法基2-2-16)

上記により、仮に消費税の返還が必要な助成金等を受領した場合であっても、その助成金等を受領した事業年度での特段の処理は不要となっています。

 

先ほどの例でいうと、

①助成金等を受領した事業年度では、助成金110万円の全額を雑収入として収益計上する

②翌事業年度で消費税10万円を自治体等への返還し、雑損失として処理する

 

消費税の返還が必要な助成金等に該当するか否かは、その助成金等の交付要綱等で確認することが必要です。
また、返還時の手続について、例えば、医療法人向けの緊急包括支援交付金(医療分)の場合、返還する消費税額等を記入した報告書の提出を求める自治体もあります。