事業承継税制の平成30年改正について

事業承継税制は、後継者である受贈者・相続人等が、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(円滑化法)の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です。

平成30年度税制改正では、この事業承継税制について、これまでの措置( 以下「一般措置」 )に加え、施行日以後5年以内に特例承認計画書を提出し、10年以内に実際に承継を行う者を対象とし、抜本的に拡充された特例措置( 以下「特例措置」 )が創設されました。

(参考)特例措置と一般措置の比較

特例措置

一般措置

 

事前の計画策定等

5年以内の特例承認計画の提出

平成30年(2018年) 4月1日から

平成35年(2023年) 3月31日迄

 

不要

 

適用期限

 

10年以内の贈与・相続等

平成30年(2018年) 1月1日から

平成39年(2023年) 12月31日迄

 

なし

対象株数

全株式

総株式数の最大3分の2迄

納税猶予割合

100%

贈与:100% 相続:80%

承継パターン

複数の株主から

最大3人の後継者

複数の株主から

1人の後継者

雇用確保要件

弾力化

承継後5年間

平均8割の雇用維持が必要

事業の継続が困難な事由が生じた場合の免除

あり

なし

 

相続時精算課税の適用

60歳以上の者から

20歳以上の者への贈与

60歳以上の者から

20歳以上の推定相続人・孫への贈与

 

・税制適用の入口要件を緩和し、事業承継に係る負担の最小化を図っています。

一般措置においては、納税猶予の対象になるのは、発行済議決権株式総数の3分の2までであり、相続税の納税猶予割合は80%とされているため、実際に猶予される額は全体の約53%(=2/3 ×80%)にとどまることになっていましたが、改正によって、対象株式数の上限を撤廃し、議決権株式の全てを猶予対象とし、また納税猶予割合も100%に拡大することで、承継時の税負担をゼロとすることが可能となりました。

承継パターンとして、親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継も対象となり、中小企業経営の実状に合わせた多様な事業承継を支援する制度となっています。

相続時精算課税の適用として、一般措置では、相続時精算課税制度は原則として直系卑属への贈与のみが対象となっているため、事業承継税制の適用を受ける場合には、相続時精算課税制度の適用範囲を拡大することにより、猶予取消時に過大な税負担が生じないような枠組みが設けられました。

・税制適用後のリスク軽減

雇用確保要件として、一般措置においては、事業承継後5年間平均で、雇用の8割を維持することが求められ、仮に雇用8割を維持できなかった場合には、猶予された贈与税・相続税の全額を納付する必要があります。そのため、制度利用を躊躇する要因となっていた雇用要件を実質的に撤廃することにより、雇用維持要件を満たせなかった場合でも納税猶予を継続可能にする方向への見直しが図られています。(5年平均8割を満たせなかった場合には理由報告が必要。経営悪化が原因である場合等には、認定支援機関による指導助言が必要です。)

又、一般措置においては、後継者が自主廃業や売却を行う際、経営環境の変化により株価が下落した場合でも、承継時の株価を基に贈与・相続税が課税されるため、過大な税負担が生じうる可能性がありましたが、特例措置においては、売却額や廃業時の評価額を基に納税額を再計算し、事業承継時の株価を基に計算された納税額との差額を減免する措置がとられ、経営環境の変化による将来の不安の軽減を図っています。

 

上記の点が主だった改正点ですが、拙速に結論を出すのではなく、この制度を使うか否かは、会社の事業承継等についての未来予想図を描きながら、対象となる非上場株式等の評価額の算出を含む、先代経営者等に係る総合的な相続税・贈与税の試算を踏まえてご判断頂きたいと思います。

税理士法人 村上事務所 河村

小規模企業共済制度の年間掛金最高額は161万円

小規模企業共済制度とは、小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための、積み立てによる退職金制度です。

今回は、この制度を最大限利用した節税方法をご紹介します。

 

● 掛金について

掛金は、個人の税金の計算をする際、課税対象となる所得から全額控除できます。

掛金月額は、1,000円~7万円です。

 

● 節税額について

一例としまして、課税対象となる所得が1,000万円で、月払い契約が月額7万円の方の場合

  • 年間控除額 7万円×12カ月=84万円
  • 節税額   84万円×(所得税率33.693%+住民税率10%)=367,000円

となります。

上記の方が、12月に年払い契約に変更した場合(※11月10日頃までに手続きが必要です)

  • 年間控除額 月払い契約 7万円×11カ月(1月分~11月分)=77万円                                                   

      年払い契約 7万円×12カ月(12月分~翌年11月分)=84万円

      合計161万円

  • 節税額 161万円×(所得税率33.693%+住民税率10%)=703,400円

となります。

 

資金に余裕がある方は、ご検討なさってはいかがでしょうか。

※但し、節税効果(161万円の控除)があるのは年払い契約に変更した年度のみとなります。次年度以降は、84万円の控除となります。

 

税金に関するご相談は、税理士法人村上事務所までお問い合わせください。

豊富な知識を持ったスタッフがお待ちしております。

 

税理士法人村上事務所 第二課 椿 政江

居住用財産に係る特例について

皆様、ブログを読んでいただき、ありがとうございます。

今回は、当法人においてもよくご質問のある居住用財産に係る特例について代表的なものをまとめました。

居住用財産については、その時点において下記の特例がございます。

(1)取得時

①住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除 

→住宅借入金等の合計額×1%、控除期間 10年
②住宅借入金等(認定住宅借入金等)を有する場合の所得税額の特別控除

→認定住宅借入金等の合計額×1%、控除期間 10年
③認定住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除

→標準的な費用の額×10%、控除期間 1年

(2)災害時

①雑損控除

②災害減免法

(3)譲渡時

①譲渡益が生じた場合

(イ)居住用財産の特別控除(3,000万円)

(ロ)居住用財産をの税額軽減(6,000万円まで10%)

(ハ)居住用財産の買換え(課税の繰延)

②譲渡損が生じた場合

(イ)居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

(ロ)特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

それぞれの規定については、細かい適用要件がございますので、特例の適用をする際は細心の注意が必要です。

また、1つの事案について2以上の特例の適用要件に当てはまる場合があり、選択適用なのか、それとも併用して適用することができるのかの判断をしなければなりません。

ここで、事例別に他規定との関係をまとめてみます。

A 住宅借入金により認定住宅の新築又は取得をした場合

(1)①                                (1)②                                (1)③       いずれかの選択

B 住宅借入金により住宅の買換えをした場合(譲渡益が生じた場合)

(1)①又は(1)②                               (3)①(ハ)     いずれかの選択 

(注)居住用財産の譲渡について、3,000万円特別控除又は税額軽減を適用した場合においても、(1)①又は(1)②とは選択適用となります。

C 住宅借入金により住宅の買換えをした場合(譲渡損が生じた場合)

(1)①又は(1)②

(3)②(イ)     併用可

B、Cにより、住宅借入金により住宅の買換えをした場合に、譲渡益が生じた場合は住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除は選択適用となりますが、譲渡損が生じた場合は併用が可能ですので注意が必要です。

もし、住宅を購入される際又は売却される際に、税務面についてご不明な点などがございましたら、是非とも当法人にご相談ください。

税理士法人村上事務所 大阪支社  武内  勝

株式、投資信託、公社債の税務面の違い

当事務所も年明けからの法定調書、確定申告、3月申告法人の申告が終わり、少しと段落、桜の季節になり、新学期、新事業年度も始まります。

今回確定申告をさせていただいて、株式等の申告についてもう一度簡単に整理します。

 

1.確定申告でよくでくる有価証券

①株式…株式会社が発行する株券(ここでは簡便的に上場株式等に絞ります)

②投資信託…投資信託運用会社が作った受益証券、受益証券から集めた資金を株や債券に投資して運用する(ここでは公社債投信を除きます)

③公社債…国や会社が発行する債券(借入金、特定公社債に絞ります)

 

2.上記については①~②利益分配、③は利息が付きます

①株式

配当金…年1回、年2回、無配の場合有

②投資信託

分配金…毎月型~年1回、無配の場合有、特別分配金は除く(元金戻り)

③公社債

利金…年1回、年2回

 

3.上記について所得税法上は各所得に分類されます

①株式

配当所得…受け取るときに15.315%所得税(復興税含む)、5%住民税が控除されます

②投資信託

配当所得…上記①と同様

③公社債

利子所得…上記①と同様

 

4.上記は確定申告することによって、株式等の譲渡損失との相殺、控除欠格による所得控除との相殺、税率が低いことによる源泉所得税等の控除に活用できます。

 

5.上記について確定申告する際には、その申告方法が異なります。

①株式の配当金

総合課税、分離課税のどちらか選択

②投資信託の分配金

①と同様

③公社債の利金

分離課税のみ

 

6.①、②を総合課税で申告した場合、配当控除が使えます

①株式の配当金

課税所得が1000万円以下の部分については、所得税は配当所得の10% 、住民税は2.8%

課税所得が1000万円を超える部分は、所得税は配当所得の5%、住民税は

1.4%

但し外国株式は配当控除できません

②投資信託の分配金

上記①の2分の1(外貨建資産割合と非株式割合が50%以下の場合)

上記①の4分の1(外貨建資産割合と非株式割合が50%超から75%以下の場合)

但し外貨建資産割合と非株式割合がいずれか75%超の場合と不動産投資(リ-ト)は配当控除できません

 

これらを確定申告した場合国民健康保険等に影響が出る場合もあり、今年度から明確になった住民税の申告不要の選択を行うべきか否かの判断などかなり複雑になっています。

 

株式等の配当や譲渡した方、これから譲渡しようとする方、是非税理士法人村上事務所にご相談ください。

 

税理士法人村上事務所 第一課 奥原伸貴

 

生命保険契約等に関わる支払調書の提出範囲の変更

新年明けましておめでとうございます。

本年も宜しくお願い致します。

年始の1月は、会計事務所では、法定調書の提出業務で忙しくなる時期でございます。

この法定調書に関連しまして、

保険会社から税務署へ提出される支払調書について、平成30年1月1日以後に支払の確定する生命保険金等より、その提出範囲が拡大されます。

従来は…

100万円を超える保険金(一時金や解約返戻金)が支払われた場合

或いは、年間20万円を超える年金タイプの保険金が支払われた場合に、

税務署へ支払調書が提出されていました。

そして、平成30年1月1日以後に支払の確定する生命保険金等より、生命保険契約の契約者変更(名義変更)があった場合も支払調書の提出をしなければならないこととされました。

この提出範囲の拡大については、2つのケースに分けられます。(平成27年度税制改正より)

① 保険会社等は、生命保険契約等について死亡による契約者変更があった場合には、死亡による契約者変更情報及び解約返戻金相当額等を記載した調書を、税務署長に提出しなければならないこととする。

→ 保険金が支払われないが相続税の課税対象になる生命保険契約に関する権利という相続財産が、税務署に全て把握されることになるといえます。

② 生命保険等の支払調書について、保険契約の契約者変更があった場合には、保険金等の支払時の契約者の払込保険料等を記載することとする。

→ 契約者変更があった後の保険金支払時に、契約者変更前と変更後の保険料負担額の内訳が明確になるといえます。

また、法人が契約した逓増定期保険の個人への名義変更についても、法人と個人の各々の保険料負担額が明確になります。この事については、平成27年度税制改正の解説でも言及されています。

平成30年1月1日以降に、契約者変更を行おうとする場合、課税関係がどのようになるのかを十分に検討し確認する必要が生じます。

保険商品が多様化し保険税務が複雑化する中で、

税理士法人村上事務所は、確かな知識と豊富な経験により、皆様の「未来の安心」をサポートしていきます。

税理士法人村上事務所  第三課  岡村 陽