立退料を受け取った場合の所得税の取扱いは?

居住または事業に供している建物等が賃借物件である場合、賃貸人の都合により立退かなければならなくなった時に、立退きに際して賃貸人から立退料を受け取り、退去することがあります。この立退料を受領した場合、受け取った側の税務上の処理はどのような取扱いになるのでしょうか?

この場合、受け取った立退料がどのような目的で支払われているかにより、取扱いが違います。

1.賃借人の借家権が消滅することによる補償部分
この部分は、借家権の譲渡となりますので、譲渡所得として確定申告しなければなりません。

2.引越費用に充当する部分
この部分は、実際に引越費用に充当した部分は課税されませんが、受け取った金額より実際に支払った金額の方が少なかった場合には、その差額部分については一時所得として確定申告しなければなりません。

3.事業の用に供していた場合における営業補償金部分
この部分は、その事業を営んでいた個人の収入金額の減少に対する補償や、休業などにより従業員に支払う給与等の費用を負担する部分については、事業所得として申告しなければなりません。

ここで一つ注意しなければならないのが、借家権が消滅することに対する補償部分の譲渡所得については、土地建物等の譲渡による所得ではないので、分離課税ではなく、総合課税となりますのでご注意ください。

=参考=

(借家人が受ける立退料)
所得税法基本通達33-6

(一時所得の例示)
所得税法基本通達34-1

税理士法人村上事務所
谷田 哲章

 

空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例(3000万控除)の創設!!!

相続にて生じた空き家の譲渡について特例ができました。

平成28年の税制改正により、相続にて取得した居住用財産が空き家になった場合、その物件の譲渡について要件を満たせば、譲渡所得の特別控除が出来るようになりました。

【概要】

相続により生じた空き家もしくは、その空き家が建っていた敷地を平成28年4月1日から平成31年12月31日までに譲渡した場合、譲渡所得より3,000万円の控除ができます。

 

 【主な適用要件】

  • 昭和56年5月31日以前に建築されていること
  • 区分所有の建物ではないこと
  • 相続開始の直前において被相続人以外に居住をしていた者がいないこと
  • 相続開始の時から譲渡の時まで事業の用、貸付の用、居住の用に使用されていないこと
  • その譲渡が相続の開始があった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に行われていること
  • 更地にせず空き家を譲渡する場合には耐震リフォームを行うこと(耐震基準を満たしている場合はリフォーム不要)
  • 譲渡価額が一億円を超えないこと【他の特例との関連】

この特例は「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例」等との選択適用となります。
また、居住用財産についての課税所得の他の特例(居住用財産の買換特例など)とは重複して適用することができます。

 

【必要書類】

この特例は確定申告書に、市区町村長の相続開始の直前において被相続人居住用家屋に被相続人が居住していたこと、かつ、被相続人居住用家屋にその被相続人以外に居住をしていた者がいなかったこと等一定の要件を満たす旨の確認書、売買契約書の写し等の書類の添付がある場合に適用することができます。

ご関心がありましたら一度ご相談下さい。

安居 孝良

参考資料 平成28年度 個人の方が土地・建物や株式等を譲渡した場合の税制改正のあらまし

 

 

確定申告をして、医療費控除の制度を活用しよう!

年末年始、確定申告が近づいてくると医療費控除というワードを巷で耳にすることが増えてくる様な気がするのは、職業柄でしょうか。

前々回のブログでも少し取り上げていましたが、私もその医療費控除について少々お話しさせて頂きます。

サラリーマンでも出来る節税としてよく聞く医療費控除でありますが、この制度を利用するための前提として、2つポイントがあります。

それは、

確定申告を行うこと

支払った証拠である領収書を保管しておくこと、です。

① 確定申告と聞くと難しそうに思えますが、大丈夫です。
源泉徴収票と医療費の領収書があれば出来てしまいます。

② 領収書の保管については、日々の生活の中で意識して保管するほかないと思いますので結果として控除が受けられなかったとしても年始から保管を始めておくことをお勧めします。

さて、必要な資料が手許にそろったら、医療費の領収書を集計してみましょう。

 支払った医療費の金額が年間10万円

 その年の所得金額(*1)が200万円未満の人はその所得金額の5%

 のいずれか少ない金額を超える部分が控除の対象(*2)となります

 (*1) その年の所得金額については源泉徴収票の給与所得控除後の金額をチェックしてみてください。

 (*2) 控除額が最大で200万円というのも忘れてはいけないポイントでした。

例えば、年間18万円の医療費の支払があったとしましょう。

この場合、18万円▲10万円=8万円なので、8万円も税金が還ってくる!!というわけではありません。

実際に還ってくる金額は、8万円にその人の課税所得金額に応じて課される税率を乗じた金額となります。

計算してみて、「あ、なんだ、これだけか・・・」と思われた方もいらっしゃるでしょう。

でも、確定申告で医療費控除を行えば住民税の負担も少なくなるというメリットもあります

では、どんなものが医療費控除の対象となるか、どんなことに気をつけておきたいか、についても少しお話したいと思います。

医療費控除の対象となる範囲については、ほんの一例ですが以下のようなものがあります。

  • 医師に支払った診療費、治療費
  • 家庭用常備薬、風邪薬などの医薬品、市販薬
  • 虫歯の治療、親知らずの抜歯、歯の矯正代・インプラント代(共に美容目的を除きます)
  • 視力回復のためのレーシック手術、
  • 通院のために使った公共交通機関の費用(いくらかかったか記録を残しておきましょう)
  • 妊娠と診断されてからの健診検査・出産分娩のために要する費用など

また、以下のようなものは、よく勘違いしてしまいがちですが、医療費控除の対象となりませんので気をつけて下さい。

  • インフルエンザなどの予防接種のための費用
  • 異常が見つからなかった場合の健康診断の費用
  • 入院に際し、自己都合で希望する差額ベッド代など

気をつけておきたいことについて、

一点目は、生命保険契約で受け取った入院給付金、健康保険から給付になった高額医療費等などはその目的となった医療費等から差引かねばならないこと(保険給付金等のほうが多い場合は他の医療費等から差引きません)。

二点目は、医療費控除の対象となるのは、自分の医療費だけではないということ。

税務上の扶養かどうかに限らず、生計を一にしていれば対象となります。

例えば、共働きの世帯では夫婦が税務上の扶養から外れていることもあると思いますが、その人が配偶者の医療費を負担していれば、その負担した金額は医療費控除の対象となります。

 

最後に最近の動向ですが、平成28年度税制改正大綱において、医療費控除の特例の創設が見込まれています(適用対象期間は平成29年1月1日~)。

この特例は、市販薬のうち一定のスイッチOTC医薬品を医療費控除の対象として一定の取扱により所得控除が受けられるといった内容になっています。

ただし、従来の医療費控除との選択適用となりますので注意が必要です。

  • 特例の創設のイメージ

(一定のスイッチOTC医薬品の購入の支払額▲保険金等により補填される額)▲12,000円=所得控除 ※限度額88,000円

一定のスイッチOTC医薬品とは、要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品(類似の医療用医薬品が医療保険給付の対象外のものを除く)、

簡単に言いますと、一旦、医者にしか使えない医療用医薬品として使われた後(安全が確認された後)、一般人でも買えるようになったものを言うようです。

具体例としましては、ロキソニンS、アレグラZなどがあるようです。

実際にこの制度が創設されるかは、国の最終的な決定を待ちましょう。

今回のお話が確定申告で医療費控除の制度を受けてみようという方々何かしらのお役に立てばと思います。

ありがとうございました。

 

税理士法人 村上事務所

檜垣寛明