2割特例と「基準期間の課税売上高」の考え方

インボイス登録をしたことで消費税を納めることになった個人事業主の方は、2025年(令和7年)分の申告でも「2割特例」というお得な計算ルールを使える可能性があります。
ただし、「2年前(令和5年)の課税売上高が1,000万円以下であること」が条件です。
この判定方法に注意が必要です。

 


混在する免税事業者の期間と課税事業者の期間

個人事業主が、令和7年分の消費税で「2割特例」を使うには、基準期間である令和5年の売上(課税売上高)が1,000万円以下であることが条件です。


ここで注意したいのが、令和5年10月1日からインボイス発行事業者になった人の場合です。
この人は、令和5年の中で
・1月1日~9月30日:免税事業者だった期間
・10月1日~12月31日:課税事業者になった期間
という 2つの立場が混ざっています。


■免税期間の売上も「判定には含まれる」


免税事業者の期間中は、実際には消費税を納めません。
でも、「課税売上高がいくらあったか」を見るときは話が別です。


基準期間(令和5年)の課税売上高が1,000万円以下かどうかを判定するときは、
・免税事業者だった期間の課税売上高
・課税事業者になってからの課税売上高
この 両方を合計します。
つまり、この合計した結果が1,000万円以上になった場合、免税事業者だった期間があったとしても、と令和7年分で2割特例は適用できません。

 

【例】令和5年の課税売上高が以下のような場合

免税事業者の期間(1月~9月):700万円(税込)
課税事業者の期間(10月~12月):400万円(税抜)
この2つを合計すると、
700万円 + 400万円 = 1,100万円
となり、1,000万円を超えてしまいます。
この場合、令和7年分の消費税では2割特例は使えません。

 

 


そもそも2割特例とは

2割特例とは、インボイス制度をきっかけに、免税事業者から課税事業者になった人の負担を軽くするための制度です。

対  象  者: インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者になった個人事業主や法人
対象期間:令和5年10月1日~令和8年9月30日
内  容:納める消費税を「課税売上高にかかる消費税の2割」とすることができる
適用条件:基準期間の課税売上高が1,000万円以下など


■国税庁
2割特例特設ページ
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_2tokurei.htm


なお、2割特例は2026年(令和8年)分で終了する予定ですが、個人事業者に対し、その後2年間「3割特例(課税売上高にかかる消費税の3割を納める)」という新しいルールが設けられる方針です。

空き家特例と取壊し費用

「空き家特例(空き家に係る譲渡所得の特別控除)」は、一定の条件を満たせば、空き家やその土地を売ったときの利益から最大3,000万円まで税金の計算上差し引ける制度です。
この特例を使うための条件のひとつに、売買金額(譲渡の対価の額)が1億円以下であることがあります。


ここでいう「売買金額」は、単に契約書に書かれている金額だけではありません。
たとえば、空き家を売るときに「家の取り壊し費用を買主が負担する」という形にした場合でも、その取り壊し費用は、本来は売主が負担するものと考えられます。そのため、税金の計算では、その取り壊し費用も売買金額に含めて考えることになります。

 


空き家特例とその目的

空き家特例とは、相続によって取得した、一定の要件を満たす空き家を売却した際、利益から最大3,000万円を控除できる制度です。
特例を受けるためには、いくつかの厳しい要件がありますが、適用されれば大きな節税効果を得られます。


また、相続によって発生した空き家の売却を促すことで、全国で増加する空き家問題の解消と、それに伴う地域環境の保全を図ることも期待されています。


■空き家問題とは?
・経済成長によって建てられた家が、少子高齢化のために住む人がいなくなり次々と空き家となっている
・放置された空き家は、火災や倒壊の危険や、景観の悪化、公衆衛生上の問題などを引き起こし、周辺地域の不動産価値の低下を招いている


こうした問題の解決策のひとつとして、空き家特例が創設されました。

 


売買金額には買主による取り壊し費用も含まれるようになった

空き家特例は、相続などで取得した、昭和56年5月31日以前に建てられた住宅やその土地を、令和9年12月31日までに売却した場合などに使えます。
土地だけを売る場合は、原則として売主が家を取り壊してから売る必要がありましたが、令和6年1月1日以降は制度が変わり、買主が家を取り壊すケースでも特例の対象になりました。


ただし、この制度改正があっても、「売買金額に何を含めるか」という考え方自体は変わっていません。
つまり、買主が負担した取り壊し費用であっても、売買金額に含めて1億円以下かどうかを判断する必要があります。


なお、空き家特例を使って確定申告をする場合は、
・売買金額(取り壊し費用を含めて1億円以下であること)
がわかる資料として、売買契約書のコピーなどを申告書に添付して提出します。

不動産特定共同事業の契約形態の違いによる所得区分

少額から始められることで利用が広がっている「不動産特定共同事業(不特事業)」。
ここで個人投資家が受け取る利益がどんな“所得区分”になるかは、投資家と不特事業者の契約の種類によって変わってきます。

 


不動産特定共同事業とは

不動産特定共同事業とは、複数の投資家から集めた資金で不動産を取得・運用し、その収益を投資家に分配する事業です。


通常、不動産投資は、収益不動産を投資家一人で購入しなければなりませんが、不動産特定共同事業に出資する場合、一口数万円程度(※)から投資を始めることも可能です。
※「小規模不動産特定共同事業」として登録された事業者が提供する「不動産小口化商品」


■基本的な仕組み
不特事業者が投資家から出資を募り、そのお金で不動産を取得して運用します。
賃貸運用での家賃収入や、物件の売却による利益を、出資額に応じて投資家へ分配します。


このように、個人では購入が難しい不動産に間接的投資することが可能となります。

 


契約形態で変わる「所得区分」

不動産特定共同事業の主な契約形態には次の2種類があります。
契約によって、不動産の所有権や税務上の取り扱いが異なります。


1. 任意組合契約型
投資家同士が「組合」をつくり、事業を共同で行います。
実務は一部の組合員(または不特事業者)が担います。
取得した不動産は組合員(=投資家)に帰属し、そこから得られる賃料収入も組合員のものです。
そのため、投資家が受け取る利益は 「不動産所得」 として扱われます。
クラウドファンディングに多くみられる形態です。


2. 匿名組合契約型
投資家は不特事業者の事業に“出資者として参加”するだけです。
不動産の取得や運用はすべて不特事業者が行います。
不動産や賃貸収入は 不特事業者に帰属します。
投資家は不特事業者から利益の分配を受けるかたちで課税され、この利益は 「雑所得」 として扱われます。


それぞれ収益の分配方法や税制上の取り扱い、不動産の所有権の帰属先が異なるため、投資家は商品の特性を理解した上で選択することが重要です。

適格合併の要件

支配関係のない法人同士が合併を行う場合、その合併が「適格合併」にあたるかどうかを判断するために、いくつかの要件があります。
その1つが 事業関連性要件 です。
これは、合併前における合併法人の事業と被合併法人の事業が、どちらも実態を伴って存在しており、かつ相互に関連していることを求めるものです。
ここでいう「事業の実態」とは、見せかけではなく実際に継続して行われてきた事業を指し、合併直前まで過去から継続して行われていれば、実態ありと認められます。

 


適格合併とは

「適格合併」とは、組織再編税制において一定の要件を満たすことで、税務上の優遇措置が認められる合併のことです。
法人間の支配関係の有無によって判定基準が異なります。


支配関係がない法人同士の合併の場合に、
・金銭等不交付要件(合併の対価として原則金銭を交付しないこと)
・共同事業要件(合併後も両社の事業を継続し、共同で事業を営むこと)

の2つを満たす必要があります。


共同事業要件の1つである「事業関連性要件」では、合併法人側は主要でない事業、被合併法人側は主要な事業を対象とし、それらが相互に関連していることが求められます。
例えば、
・両社が同じ小売業を行っている場合(同種の事業)
・製薬会社において、一方が製造、もう一方が販売を担う場合(製品が同一で事業の役割が補完関係にあるもの)

といったケースが該当します。

 


適格合併のメリット

適格合併に該当すると、譲渡損益が繰り延べられる、繰越欠損金を引き継ぐことができる、という税務上のメリットがあります。


■譲渡損益が繰り延べられる
資産や負債を時価ではなく簿価で引き継ぐことが認められ、これにより法人税が課税されません。

■繰越欠損金を引き継ぐことができる
繰越欠損金を引き継ぐことで、課税対象となる所得を減らすことができます。


合併による税負担を抑え、資金繰りの不安が軽減されるので、組織再編がスムーズに進めやすくなります。

また、適格合併の枠組みを使うことで、会計・税務処理がシンプルになり、実務面においてのコスト削減も期待できます。

 


売上先が被合併法人のみであった場合の事業関連性

合併法人の売上先が被合併法人のみであった場合、「合併のために一時的に取引を作ったのではないか」と疑われ、事業の実態がないと判断されてしまう懸念があります。
しかし実際には、合併の有無に関わらず過去から継続的に取引を行ってきたのであれば、売上先が被合併法人だけであることを理由に事業実態を否定されるわけではない、とされています。


■国税庁
質疑応答事例「合併法人の売上先が被合併法人のみであった場合の事業関連性について」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/33/56.htm

旅行券を支給した際の給与課税

会社によっては、長く働いている役員や従業員に感謝の気持ちを込めて、旅行券や記念品を贈ることがあります。
これらは「お金を渡す」のとは異なるため、一定の条件を満たせば「給料」とはみなされず、課税されないことになっています。

 

■国税庁
No.2591 創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2591_qa.htm

 


給料扱いとは

所得税法では、会社から受け取る給料や賞与などの「金銭」だけでなく、「経済的に得をしたこと」も原則は給料として課税されます。
例えば、会社から無償で物品をもらったり、サービスを受けたりした場合も、経済的利益を得たこととなり、課税対象になるという考え方です。

 

一方で、以下の 2つの条件を満たす場合は課税されません。

 

①もらえる旅行や観劇、記念品の価値が、その人の勤続年数などに照らし、「社会的に見て妥当な範囲」であること
②おおむね10年以上勤続した人が対象で、2回目以降の表彰はおおむね 5年以上空けて行われること

 


旅行券を支給する場合の注意点

単なる旅行券だと「有効期限がない」「現金と同じように扱える(=換金性がある)」ため、実質的に金銭支給と同様になり、基本的には給料扱いになり課税されます。

 

しかし、上記の①②に加え、以下の追加条件を満たせば、旅行券でも課税されない特例があります。

 

A.旅行は旅行券をもらってから1年以内に実際に行うこと

B.旅行の内容や金額が常識的な範囲であること

C.旅行後に、日程・行き先・旅行会社への支払額などを会社に報告すること

D.1年以内に使い切れなかった場合は、未使用分の旅行券を会社に返すこと

 

 

また、旅行券によって課税・非課税が異なるものもあるので注意が必要です。

 

■旅行専用カタログギフトや旅行専用券の場合
宿泊や観光プランだけが選べるカタログギフトや旅行専用の金券の場合、条件①②とA~Dを全部満たせば課税されません

■グルメや日用品など旅行以外のものも選べるカタログギフトの場合
そのカタログは「旅行専用」とは言えないので、現金をもらったのと同じ扱いになり課税対象となります。
例えカタログから旅行を選んだとしても、選択肢の豊富な「旅行以外も選べるカタログ」であれば課税対象になってしまいます。