旅行券を支給した際の給与課税

会社によっては、長く働いている役員や従業員に感謝の気持ちを込めて、旅行券や記念品を贈ることがあります。
これらは「お金を渡す」のとは異なるため、一定の条件を満たせば「給料」とはみなされず、課税されないことになっています。

 

■国税庁
No.2591 創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2591_qa.htm

 


給料扱いとは

所得税法では、会社から受け取る給料や賞与などの「金銭」だけでなく、「経済的に得をしたこと」も原則は給料として課税されます。
例えば、会社から無償で物品をもらったり、サービスを受けたりした場合も、経済的利益を得たこととなり、課税対象になるという考え方です。

 

一方で、以下の 2つの条件を満たす場合は課税されません。

 

①もらえる旅行や観劇、記念品の価値が、その人の勤続年数などに照らし、「社会的に見て妥当な範囲」であること
②おおむね10年以上勤続した人が対象で、2回目以降の表彰はおおむね 5年以上空けて行われること

 


旅行券を支給する場合の注意点

単なる旅行券だと「有効期限がない」「現金と同じように扱える(=換金性がある)」ため、実質的に金銭支給と同様になり、基本的には給料扱いになり課税されます。

 

しかし、上記の①②に加え、以下の追加条件を満たせば、旅行券でも課税されない特例があります。

 

A.旅行は旅行券をもらってから1年以内に実際に行うこと

B.旅行の内容や金額が常識的な範囲であること

C.旅行後に、日程・行き先・旅行会社への支払額などを会社に報告すること

D.1年以内に使い切れなかった場合は、未使用分の旅行券を会社に返すこと

 

 

また、旅行券によって課税・非課税が異なるものもあるので注意が必要です。

 

■旅行専用カタログギフトや旅行専用券の場合
宿泊や観光プランだけが選べるカタログギフトや旅行専用の金券の場合、条件①②とA~Dを全部満たせば課税されません

■グルメや日用品など旅行以外のものも選べるカタログギフトの場合
そのカタログは「旅行専用」とは言えないので、現金をもらったのと同じ扱いになり課税対象となります。
例えカタログから旅行を選んだとしても、選択肢の豊富な「旅行以外も選べるカタログ」であれば課税対象になってしまいます。

100億宣言が可能な売上高要件

中小企業庁の100億企業成長ポータルでは、「100億宣言」の宣言を行った企業等が公表されています。
6月9日時点で1,500件を超える申請があり、このうち事務局の確認が完了した各社の宣言が順次掲載されています。今後も随時公表される予定です。


100億企業成長ポータルでは、「100億宣言」を行った企業の宣言内容を紹介するほか、「中小企業成長加速化補助金」「経営者ネットワーク」など、100億企業への飛躍的成長をサポートする施策情報や事例が掲載されています。


・100億企業成長ポータル
https://growth-100-oku.smrj.go.jp/


 


100億宣言とは

「100億宣言」とは、中小企業庁と独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)が共同で推進する、「売上高100億円」を目指す中小企業に向けた成長支援プロジェクトです。
経営者にとって「売上高100億円」という野心的な目標を掲げ、実現に向けた取組を行っていくことを宣言するものです。

令和7年度改正で創設された中小企業経営強化税制の経営規模拡大設備等(E類型)の適用を受ける場合や、中小企業成長加速化補助金の申請を行う場合に、宣言を行うことが必要になります。


■宣言に盛り込む内容

①企業概要
企業名や業種、本社所在地、事業内容、従業員数など企業の基本情報を記載


②企業理念・経営者の意気込み(100億宣言に向けた経営者メッセージ)
企業理念・ミッションや、100億円への成長を通じて実現したい内容を記載


③売上高100億円実現の目標と課題
100億円を実現する達成年度や成長率を示す実現目標と、実現に向けた課題を記載


④売上高100億円に向けた具体的措置(取組)
具体的な成長手段や事業の成長性・先進性と、実施するための社内外の協力体制を記載


■宣言できる企業

売上高10億円~100億円未満の中小企業
※中小企業とは、原則として、中小企業基本法に基づく中小企業者又は法人税法に基づく中小法人
 

・「100億宣言」とは
https://growth-100-oku.smrj.go.jp/documents/about.pdf


 


100億宣言のメリット

宣言を行うことで、以下のような支援を受けられます。


・成長加速化補助金の活用
・経営者ネットワークへの参加
・宣言の公式ロゴマーク活用による自社PR


宣言に盛り込まれた実現のための課題や具体的措置などの経営戦略が明確になることで、組織や経営の成長を促すと共に、企業ブランディングの強化にもなり、人材確保や信頼構築にも繋がります。


 


既に売上高100億円を達成している中小企業は対象外となるのか?

2期前や3期前の売上高が10億円未満又は100億円以上であっても、直近の事業年度(前期)の売上高が10億円以上100億円未満であれば原則として申請可能です。
※直近3期分の決算書類を事務局に提出する必要があります。


■例
令和5年3月期:売上120億円
令和6年3月期:売上110億円
令和7年3月期:売上90億円 → 前期が10億円以上100億円未満なので申請OK


なお、直近3期分のうち、前期のみの売上高が10億円未満又は100億円以上の場合等は、申請前に電話にて相談してほしいとのことです。
専用ダイヤル:0570-00-0835


・100億宣⾔ よくあるご質問
https://growth-100-oku.smrj.go.jp/documents/faq_growth100oku.pdf

従業員持株制度の奨励金と給与課税

福利厚生の一環として、従業員が自社株を定期的に購入・保有する「従業員持株制度」は、多くの企業で導入されています。
東京証券取引所に上場する企業のうち、およそ8割が持株会制度を導入しており、加入者も増加傾向にあります。
また、この制度を導入する企業の多くは、従業員持株会に加入する従業員に対して「奨励金」を支給しています。
ただし、この「奨励金」は給与として課税対象となるため注意が必要です。

 


従業員持株制度とは

従業員持株制度とは、企業が自社の株式を従業員に保有させる制度です。
福利厚生の一環として導入されることが多く、従業員が会社のオーナーシップを一部共有する形になります。
従業員があらかじめ申し込んだ金額を、給与や賞与から天引きの方法により拠出し、その拠出金をもとに自社株式を取得します。


【メリット】
■インセンティブの強化
従業員が自社株を持つことで、「会社の成長=自分の利益」となるため、業績向上に対するモチベーションが高まります。

■人材の定着
中長期的な資産形成が期待できるため、社員の離職率低下にもつながります。
従業員持株制度が福利厚生としても魅力があり、従業員満足度が向上します。

■経営の安定
長期的な安定株主としての従業員が存在することで、敵対的買収への防御や株価の下支えになる側面もあります。


【注意点】
株価が低迷すると従業員の士気低下のリスクがあります。
また、投資のため、一定のリスクも伴います。
企業側にとっては、制度継続運用のためのコストが必要になります。

 


従業員持株制度の奨励金とは

従業員持株制度における奨励金とは、従業員が自社株を購入する際に企業が一定額を上乗せして支給する金銭的支援のことで、制度への加入を促進するために、多くの企業で設けられています。
従業員が給料や賞与から天引きした一定額の拠出に対し、企業が数%~数十%を上乗せして株購入に充てるのが一般的です。

奨励金を設けることで、従業員持株制度への魅力が増し、加入率の向上が期待できます。
また、 長期的に見て従業員の資産形成にも貢献できます。


【例】
毎月の給与から1万円を拠出し、10%の比率で奨励金が支給された場合、拠出金1万円と奨励金1,000円を合わせた1万1,000円分の自社株式を取得できます。


従業員持株制度に係る奨励金は、会社から従業員に対して金銭で支給されるため、会計上、福利厚生費などの科目で費用計上している場合であっても、税務上は原則として「給与等」に該当します。
よって、毎月支給される奨励金であれば、毎月の給与に加算して源泉徴収されます。

輸出物品販売場制度

免税対象物品を一定の方法で販売する際に、消費税が免除される制度である輸出物品販売場制度(輸販場制度)は、令和8年11月1日より「リファンド方式」に移行します。
この移行に先立ち廃止された「別送の取扱い」と、引き続き利用可能な「直送制度」についても、併せて解説していきます。

 


輸出物品販売場制度とは

輸出物品販売場制度とは、輸出物品販売場(いわゆる免税店)を経営する事業者が、外国人旅行者等の非居住者に対し、免税対象物品を一定の方法で販売する場合には、消費税が免除される制度です。


■制度の目的
外国人旅行者等が日本国内で購入する物品のうち、日本国内で消費せずに国外に持ち出されることが明らかな物品については、消費税を課さないという考え方に基づいています。


■対象商品
【一般物品】
家電、衣類、装飾品、民芸品、雑貨など
購入金額:5,000円以上(税抜)
【消耗品】
食品、飲料、化粧品、医薬品など
購入金額:5,000円以上50万円以下(税抜)
※密封された状態で提供する必要あり


■免税販売の対象者(非居住者)
外国為替及び外国貿易法で規定されている非居住者であって一定の要件を満たす者(外国人旅行者など日本国内に住所又は居所を有しない方等)


■ 免税販売の流れ(簡略)
①購入者がパスポートを提示
②店舗が非居住者であることを確認
③購入者に対して必要事項を説明
④一定金額以上の対象商品を販売
⑤購入記録情報の提供
⑥購入記録情報の保存(7年)


■国税庁
輸出物品販売場制度のポイント
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/menzei/201805/pdf/0021009-040_01.pdf

 

 


リファンド方式とは

従来の方法は、購入時に消費税が免除され、販売店が非課税で物品を販売していましたが、「リファンド方式」では、購入者が一旦消費税を含めた金額を支払い、出国時に税関などを通じて消費税の払い戻しを受ける方式です。


従来の方法は、転売目的の購入や、日本国内での消費が行われるなど、不正利用が問題視されてきました。
特に化粧品・医薬品・日用品などの消耗品の大量購入が不正販売ルートに流れるケースがありました。
リファンド方式では、出国時に持ち出しが確認された物品に対してのみ消費税を還付するため、不正の抑止力になります。

 


「別送の取扱い」の廃止と「直送制度」継続の理由

「別送の取扱い」の廃止と「直送制度」継続の理由には、以下のようなものが考えられます。


■別送の取扱い
免税店で免税購入した物品を、免税店とは別の場所で配送業者に依頼し(EMS郵便物等)、出国前に国外に免税品を発送して、税関で輸出を証明する「発送伝票の控え等」の書類を提示し、輸出の確認を受ける制度です。

【廃止の主な理由】
購入者が実際には商品を海外に送らず、国内で消費・転売するケースが後を絶たなかった。
送付先や内容の確認が困難で、制度の趣旨(国外持ち出しによる消費税免除)に反する事例が多かった。
また、たとえ不正が発覚した場合でも、税の徴収が困難となっていた。


■直送制度
免税物品購入時に小売店から直接、購入者の海外住所へ発送する制度です。本人が持ち帰らない点は別送と同じですが、「発送責任が店舗にある」点が異なります。

【継続の主な理由】
店舗が物品の発送手続を担うため、確実に国外に発送される。
送り先の住所や追跡情報が明確に残り、不正リスクが低い。
移動や帰国の際に免税購入物品を持ち運ぶことがないため、旅行者の利便性が向上する。
また、「手ぶら観光」の推進によって、購入消費額拡大も期待できる。


なお、3月31日までに購入した免税品であれば、4月1日以後に発送を行った場合も原則、「別送の取扱い」を適用できます。

残業時のタクシー利用とインボイス保存

繁忙期や人員不足等により、遅くまで残業をして、終電に乗れずにタクシーで帰宅することもあるのではないでしょうか。
この場合のタクシー代は、インボイス制度における「公共交通機関特例」や「出張旅費等特例」の対象とはなりません。
しかし、通常必要であると認められる通勤手当に該当すれば、一定の事項を帳簿記載することで、インボイスの保存は不要となります。

 


インボイス制度における公共交通機関特例・出張旅費等特例とは

■公共交通機関特例
従業員などが業務で使用する3万円未満の公共交通機関(船舶、バス、鉄道等)に対する3万円未満の支払について、インボイスの交付義務が免除されるという特例です。


■出張旅費等特例
従業員等に支給する出張旅費(交通費、宿泊費、日当など)のうち、通常必要と認められる部分について、インボイス(領収書等)の保存なしに仕入税額控除が認められる特例です。

 


残業時のタクシー利用がそれぞれの特例の対象外となる理由

残業時のタクシー利用が上記特例の対象外となる理由には、以下のようなものが考えられます。


■タクシーは公共交通機関に含まれない
公共交通機関とは、 電車、バス、モノレール、フェリー、航空機など、不特定多数の人が定期的に利用できる交通機関とされています。
タクシーの場合、個別に利用されることが多く、運行が不特定多数に開かれている「定期運行」ではないため、公共交通機関とは異なる側面を持っています。


■通常勤務している場所からの帰宅は出張ではない
出張とは、業務のために通常勤務している場所から別の土地へ旅行することを指します。
よって、通常勤務している場所から自宅へ帰宅した場合は旅行といえず、一般的に「通勤」と整理されます。

 


通勤手当としての支給ならば、タクシー代のインボイス保存は不要

 

上記のように、残業時のタクシー利用は、公共交通機関特例・出張旅費等特例の対象外となりますが、「通勤手当」として支給するものであれば、一定の事項を帳簿記載することで、インボイスの保存は不要となります。

一方で、「交通費」として処理する場合、原則はインボイスを保存する必要があります。


■通勤手当と交通費の違い

  通勤手当 交通費
目的 自宅から職場までの通勤 業務遂行のための移動(出張や営業活動)
会計上の扱い 給与 事業主の経費
所得税 一定の範囲は非課税
支給方法 現金・現物支給(定期券など) 立て替え精算