相続税法における家庭菜園の財産評価ついて

土地は、原則として宅地、田、畑、山林などの地目ごとに、登記簿に記載された地目ではなく、課税時期(相続の場合は被相続人の死亡の日)の現況によって評価します。では、住宅と同一敷地内の土地の一部に花や野菜を栽培している場合、この栽培されている土地部分はどのように評価すべきでしょうか?
上記の土地は一般的には「家庭菜園」と呼ばれています。通常は、住宅の敷地の一部で小規模に栽培が行われていて、収穫された花や野菜は外部に販売されることはなく、耕作人自身で消費されていると想像される方が多いのではないでしょうか。 正しくそのような「家庭菜園」は、宅地部分と耕作部分を分けて評価することは適切ではなく、住宅敷地全体を宅地として一体評価すべきと考えます。

ここで住宅敷地のうち、耕作敷地がどのくらいの割合、面積までであれば、住宅敷地全体を宅地として評価する事が適切なのでしょうか? 住宅敷地全体が500㎡を超える場合、財産評価基本通達24-4「広大地の評価」に定める「広大地」に該当するかどうかで評価額は大きく変わり、住宅敷地全体を宅地として一体評価した方が、納税者に有利となる場合が考えられることから、問題となります。

この点、税法は家庭菜園と農地(田、畑 以下同じ)の線引きについて、面積基準等の画一的な規定を設けておらず、納税猶予の特例の対象となる農地の意義について「家庭菜園」という言葉がでてくるに過ぎません(措置法通達70の4-1)。 すなわちその土地が「家庭菜園」であるか否かは、その土地の利用の現況に照らし、具体的かつ個別に判断されるべきものであり、その面積も小さく、それのみでは農地としての存在価値を認めることができず、むしろ住宅の敷地と一体としてみることが適当なときには、いわゆる「家庭菜園」であって、農地には該当しないものと考えられます。

冒頭で述べたとおり、土地の評価は課税時期の現況によって評価することになります。上記の「家庭菜園」はあくまでも一例ですが、相続発生後に相続税申告のご依頼をいただくよりも、相続発生前の対策(事前設計)の段階から関与させていただいた方が、事前に利用方法のアドバイスを行うなど、財産の評価額の減少のためのご提案をできることも多々あります。とりわけ農地税制は高度な専門性が必要であり、長期的な展望なく拙速に結論を出すことは非常にリスクを伴います。税理士をお探しの方は、相続業務に豊富な経験と実績のある箕面市の税理士法人村上事務所を是非ご活用下さい!!

 

(参考条文)
措置法通達70の4-1 (70の6-1)「農地又は採草放牧地の意義」

(参考裁判例)
農地とは、耕作の目的に供される土地をいう。そして耕作とは、土地に労資を加え、肥培管理を行って作物を栽培することであり、ある土地が耕作の目的に供されているかどうかは、その主観的使用目的や公簿上の地目により決するべきではなく、その土地の事実状態に基づいて客観的に判定すべきである。
(大阪地裁(行ク)24号、平成20・10・1)

税理士法人 村上事務所
河村 貴幸