特定支出控除とジョブ・カードの活用

給与所得者が、自らのキャリアアップのために行う学び直し(リスキリング)が注目されています。
この学び直しのための資格取得費や研修参加費などの一定の費用について、特定支出控除を受けることができます。

 


特定支出控除とは

給与所得者には、原則として必要経費が認められていませんが、業務上必要な資格取得費などの費用が多い場合、特定支出として控除できる制度です。
特定支出の合計額が、給与所得控除額の1/2相当額を超える場合、給与所得の計算上、超える部分の金額を給与所得控除後の金額から控除できます。

 


特定支出となる費用

①通勤費
電車やバス、マイカーなど通勤のために通常必要な費用
※会社が通勤費を支給している場合は特定費用にはなりません。

 

②職務上の旅費
出張など、勤務地を離れて業務を行う為に通常必要な費用
 

③転居費
転勤に伴う転居のために通常必要な費用
 

④研修費
仕事に直接必要な技術や知識習得の目的で受ける研修費用
 

⑤資格取得費
仕事に直接必要な資格取得のための費用
 

⑥帰宅旅費
単身赴任などで、勤務地や居所から自宅に帰宅するための旅費
 

⑦勤務必要経費
図書費:仕事に関連する書籍、定期刊行物等の購入費用
衣服費:勤務場所で着用する制服、事務服、作業服等の購入費用
交際費:得意先や仕入先などの取引先に対する接待、贈答費用
 

■国税庁
No.1415 給与所得者の特定支出控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1415.htm

 


研修費・資格取得費は、キャリアコンサルタントによる証明が可能に

今までは、特定支出が業務に必要なものであるという証明を行うのは給与支払者でした。
令和5年度改正により、令和5年分の所得税から、研修費・資格取得費については、給与支払者だけでなく、キャリアコンサルタントが証明できることになりました。
キャリアコンサルタントに発行してもらう「特定支出に関する証明書」を、確定申告書に添付することで特定支出控除が受けられます。
「特定支出に関する証明書」をキャリアコンサルタントに発行してもらうには給与所得者が事前にジョブ・カードを作成しておく必要があります。

 


ジョブ・カードとは

ジョブ・カードとは「生涯を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力証明」の機能を担う、厚生労働省が様式を定めたツールです。
給与所得者のキャリア・プランニングや、免許・資格・職務経験・知識や技能などを記入して作成します。


ジョブ・カードとして定められている3つの様式のうち、特定支出に関する証明書で必要なのは以下の2点となります。
①キャリア・プランシート(様式1-1又は様式1-2)
②職務経歴シート
 

特定支出に関する証明書の発行をキャリアコンサルタントに依頼する際は、上記のジョブ・カードと、現在の職務や、受講講座の職務との関連性の疎明について記載した「特定支出に関する証明依頼書」などを、コンサルタントに提出します。

 

詳しくは下記URLでご確認ください。
■厚生労働省
特定支出控除制度におけるキャリアコンサルタントによる証明制度について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/tokuteishishutsukojo.html